終章 懲りない僕ら
◆○◆○◆sideティム
婚礼式から5年が経ち、僕とチェンバーはマーヤを拠点にして、いろんな施設を作っている。
ロギの目が覚めたら、驚かしてやるんだ!
病院も冒険者ギルドも出来たよ!って。
商業ギルドも作ろうかと思ったけど、周りの反発がすごくて設立計画が頓挫している。
つまり、シット?僕とチェンバーしか使わない施設を建てるのか?!ってね。
儲けたいならもっと考えて実行しろよ。
熱くなるとチェンバーがキンキンに冷えたタオルを渡してくれる。
チェンバーは、5年前からあまり笑わなくなった。仕事以外の話もしないし、エルフの里にも行かない。
カルロッテさん達のこと、自分のせいみたいに思ってる。
チェンバーのせいじゃなかったのに。
エルフのルールを守れなかったセティーネさんとカルロッテさんは、チェンバーの実家の茶園で謹慎中で子育て中だ。
ロギ、君がいないと皆さみしいよ。
今日は、料理を教えている生徒たちが何か作ってくれたらしい。
やたらと良い匂いがする。本格的な日中になったら、僕らは休むのだ。倒れたら元も子もない。
「チェンバー、昼飯行こうぜ!」
「……このソースの匂い、知ってる!」
チェンバーが駆けて行く。
僕も慌てて後を追う。
もしも、そうなら、遅れてなる物か!!
ロギに会うのは僕が最初だ。
◆○◆○◆side穗高
来た来た!ハハハ、あんなにはしゃいで、後が保つのかよ。
「ロギ、奴らに襲われる準備はしておけよ?」
「うん。でも、揶揄われないかな?」
「誰かが言ってただろ?生きてるだけで丸もうけって。これから、2人との距離は会話で縮めればいい」
「あ~!?発見!逃げるなよ!ロギ」
騒々しいティムを置いて、チェンバーは泣きながらロギに突っ込んで行った。
17才のチェンバーに抱き潰される10才のロギ。
「ロギ、私は貴方が何才で何者でもいい……愛してますロギ」
おお、言ったな!チェンバー。ロギはというと小さな体でチェンバーを抱きしめ返し、チェンバーにちゃんと答えた。
「俺も2人は特別な存在だよ。愛してる」
……ロギよ。違う。そうじゃない。お前の言う愛してる、は友情だろ?!
チェンバー!!嬉しそうにすんじゃねぇ!ますます、お前の気持ちが曲解されるだろうが!
ティム!癒やされてないで何とか言え!
「ホダカ様、ロギどうなってるの?」
「あ~、うん。精霊になった。まだ、力が安定してないから、今の姿だけど、その内お前らに合わせた年齢になれる。ホントは今はエルフの里から出ない方が良いんだけど、2人に会わせろってダダこねてたから、連れて来た。お前らも久しぶりに里に来いよ」
「チェンバー!!聞いてた!エルフの里行くよ!」
「いえ、私はここで、」
「行くんだよ!」
固辞したチェンバーを叱って無理矢理連れて行くロギ。俺もティムを連れて追いかける。
里ではチェンバー達2人をもてなそうと稔司がご馳走を作っている。
泣きながら謝罪を口にするチェンバーにエルフ達は胸を締め付けるのだった。
「チェンバーは悪くない!謝らなくていいの!むしろ、里のルールを丸っきり無視してた俺に問題があって、今まで罰を受けてたわけ。俺、人間辞めちゃったから無事とは言い難いけど2人の元に戻って来た!……もう、泣くなよチェンバー。一緒に世界を回る旅に出ようよ!」
「ロギ、ロギ!ロギ!!」
チェンバーはロギにひっつき虫してる。ティムは、それを見てニコニコ笑っていてコイツらこんなチームだったのかと感慨深くなってしまった。
「もう、チェンバーは甘えん坊だから、この5年間心配しない日はなかったよ。大丈夫。大好きだ。チェンバー」
思わず噴き出すと、あちこちで同じ現象が起きている。
甘えん坊!あのチェンバーを甘えん坊!!そんな勘違いしてるのはロギだけだから!激ニブ!!
◆○◆○◆sideチェンバー
良いさらし者だ。でも、仕方ないこの感情は私にしか解らない物。
それに毎日私の事を考えてくれたらしいロギ。久しぶりに心に火が灯る。
例え触れ合え無くても私は貴方の心の一欠片。それだけで十分です。
◆○◆○◆sideロギ
聖なる泉に審査されて、穢れを自らの徳で支払ってしまった俺が人としての形を持つには、「精霊化」することが必要で、人間だった自分に未練があった俺が精霊になるには5年間の月日が流れた。
時々無くなりそうになる意識をティムとチェンバーが引き戻してくれた。
チェンバーの祈りがずっと届いてた。ティムも力強く励ましてくれた。ありがとう2人とも。泉の底に沈む時にはレニヴァル様の叱咤激励があった。
「いつまで待たせているんですか!早くあの2人に会いたくないのですか?!」
会いたい。
その思いだけで、精霊化した私は2人が死んだら無くなってしまうかもしれないと稔司様から、泉から出るときに言われた。
本来ならセティーネを心の拠り所にして欲しかったらしいが、泉にいた私にセティーネとカルロッテの声はハッキリと届いてない。
つまり、それだけの思いなのだ。
稔司様は歯を食いしばって私を泉から上げた。
ティムとチェンバーに会いに行くまでに俺は自分の感情のコントロールを徹底的に学んだ。これに1年掛かった。
会いに行けたとき結局コントロール出来なくて2つ焼きそばを作るはずが気が付いたら、鉄板に小山になっていた。
そのおかげでチェンバーとティムに会えた!
明日から旅に出ようよ!俺達がワクワクするために。
一旦、話をこれで終わらせていただきます。
お読みいただきありがとうございました!
また、書きたくなったら彼らの旅を書きます!
ブクマ、応援ありがとうございます!
また、お目にかかれる日を楽しみにしています!(>_<)ゞ