第6章 エルフの里~修行編~②
座学ばかりじゃ体に悪いからと子供エルフのブートキャンプに放り込まれた。
リーダーのグレンメルが型から教えてくれた。俺の頭を蹴らない為の措置らしい。
ティムとチェンバーはキレッキレで型を復習っている。俺は直ぐに息を上げて情けない!
悔しくて泣いているとセトさんが来た。慌てて涙を拭く。
「体が付いて行かないだろうが、今までケガ人だったんだから、まずは体を温めるつもりくらいで体を動かせ。焦るな?」
「ハイ!」
「型を復習ってみなさい。見てあげます」
頑張ってさらったら、足腰の鍛練メニューに放り込まれた。つまり、型以前の問題なのだろう。落ち込みながら、頑張って一日を終えた。
エルフのお母さん達が夕飯を作ってくれてる。ありがたくいただきその後お風呂屋さんで一日の疲れを落とす。俺達3人で暴れまわってると、ロクシターナさんがお風呂に入って来てゲンコツされた。
だって、いろんな種類のお風呂があって楽しいし、ウォータースライダーがあるのだ!暴れまわらずにいられようか!
「他の子供達にも譲って遊べ。お前らに遠慮して遊んでないだろう?」
飽きたのかと思ってた。慌てて場所を譲る。おれは気分転換にハーブのお風呂に入っているとロクシターナさんが入って来た。
「随分足腰が弱ってるみたいだな?」
「……悔しいけどそうみたいです」
「どれ、髪を洗ってやる。来い」
洗い場まで移動してお互いの体を洗っているとロクシターナさんにも、聖痕がありその周りにとても深い傷跡がある。
「ふふ、それすごいだろう?500年前くらいにダンジョンの深層で死にかけた時の傷だ。皆が守ってくれなかったら死んでただろうし、聖痕がここになければ即死だった。私もひと月程寝込んで起きたら体が鈍っててな、悔しかった事を今でも思い出す。勘を取り戻すのにふた月かかった。焦るな。ロギ。お前はおそらくあの2人より強い。セティーネと組み手が出来る若い奴などいないぞ」
いつもボコられます。娘さんにはお世話になっています。
「お前に足りないのは自信だな」
ないだろう!当たり前だ!
「まあ、変なプライドを持たれるよりマシか」
「はあ」
俺の体をお湯で流すとロクシターナさんはお風呂を出て行った。
それからという物、お風呂に行くとロクシターナさんに捕獲されて体を洗われグチを聞いてくれるお風呂屋さんで相談会が始まった。
「今日はどうだった?」
「グレンメルと組み討ちしたんだけど、何度も首を叩かれました」
「ほう、アイツが首をねえ。随分本気でやってるみたいだから、踏み込みを早くしてみたらどうだ?」
お風呂でちょっとだけ、型を見てもらっているとエルフの子供達が十重二十重に観ている。直ぐに風呂場の床に押し倒される俺。
「うん、昨日より良くなってる。励めよ!」
そう言って俺を起こすとロクシターナさんにかかってくる子供エルフ達をロクシターナさんは風呂の中にドボンドボン片手で投げ飛ばし落として行く。
子供エルフ達はそれも楽しいらしくて、大はしゃぎしている。漫画みたいな光景にパカッと口が開く。Noエルフの遊び!YES温泉浴!
お風呂事情はそんな感じで、言語学では、チェンバーが多国籍語を話せるようになった!
ティムは単語カードを作ってブートキャンプの休み時間に観ている。
俺は発音がおかしい多国籍語を披露出来るようになった。筆記試験は一抜けした。
リスニングはほとんど出来ない。
多国籍語で頰を赤らめて何か言われたのだが、サッパリ解らずチェンバーに聞いたら「知らない!」と耳まで真っ赤になって言った。ケチ!
夜寝る前に1時間ほど、ティムにマーヤ語の特訓をチェンバーと俺の2人掛かりでする。
外に出て星や月を指差しながら、単語をチェンバーの発音で教えてると、1ヵ月経った頃いきなり、流暢なマーヤ語を話し始めた。
チェンバーと俺はティムを抱きしめた。
ティムは自分が何語で話しているのかわかってなかったみたいで、俺達が教えてやっと自覚したみたいだった。
「やっと2人に追い付けた!」
そのままマーヤ語卒業試験に突入した。
ティムよ。マーヤ語を話せるのはスゴいが、読み書きも大切なのだぞ?
チェンバーと俺はがっかりしたのだった。
そんな感じで、チェンバー以外の2人は似たり寄ったりの成績を残しながら白の月を終えた。
元旦はパーティーで俺達3人で3日掛かりでパーティー料理を作って魔法カバンに出来立てを入れておいて元旦当日に放出。
冒険者達にありがたがられながら、食べられた。
俺達は、エルフ達と一緒に稔司様達が作った「ほんまもんのご馳走」を味わった。中華料理のフカヒレスープとか、フカヒレの肉まんとか、点心料理!ペキンダックとか、お口いっぱいに頬張ってもいくらでもでてくるバリエーション豊富なメニューの中華料理の数々に俺達3人は食い倒れした。
体を動かさないと1日で5キロとか太ってそうなので、エルフ達の分だけでもネクタール擬きを作ってデザートの〆に間に合わせた。
ベラスティアーナ神様とユーバリン神様、ハラハルニア神様にもお供え物にしたら、3つの木彫りの素朴なブレスレットをお返しにもらった。ロクシターナさんに診て貰ったら3人で付けたら良いと言われた。皆で左手首に付けたら付けた途端銀細工の精緻なブレスレットに変わって3人共に驚いた!
稔司様に大事にするよう言われてヘッドバンキングくらい頭を振った。
新しい年になって、だんだんやってる事が形になっていき、多国籍語も4つは覚え2つは話せるようにやっと、なった!チェンバーは6つの言語を覚え、話せるようになっている。
ティムはマーヤ語の読み書き話しが完璧になった。
年始めからやってる剣術と馬術も思ってたより簡単で拍子抜けした。
それにどうも俺は剣術が合うらしく、ロクシターナさん曰く、強くなるとのお墨付きだった。
不思議なことに対戦相手が少し身じろぎしただけで、どう攻撃して来るか解るのだ。
レベルが違う相手でも解るが体が付いていかずボコられる。
体術の基礎練に出戻りさせられたが、俺は強くなるチャンスを与えられたと感じてよりいっそう訓練にのめり込むのだった。
チェンバーは言語学を卒業し、剣術と馬術に磨きをかけている。
ティムは剣術と馬術と体術を卒業し、言語学の補習授業を日がな一日受けている。
時々、俺がそれに混じる。
こうして黄の月も過ぎていき緑の月に入った。チェンバーの腹はシックスパックに割れ、美麗なだけじゃない男らしさを手に入れた彼は立派な戦闘民族になりつつある。
「そう言えば、母さんと父さんがロギに一度会って話しがしたいって言ってたっけ?」
「「チェンバー、早く言おうな!」」
急いでエルフの里の挨拶する人達に挨拶を済ませてリチルのエルフの屋敷へ転移陣で転移させて貰い、手土産を仕入れて辻馬車でチェンバーの実家に3人で向かった。
チェンバーの実家は山の中腹にあるお茶畑に囲まれた大きな納屋と小さな母屋の古い屋敷だった。
チェンバーによく似た美麗なお母さんはチェンバーを引っ叩いた。
「なるべく早い内にって言ったでしょう!?このバカ息子!!」
「チェンバー、明後日大事なお客様が来るからおもてなしの準備をお願いね?お友達も手伝ってくれるかね?私はリーダロッテ、リーダと呼んどくれ」
「ロギ=クロワッサンです。よろしくお願いいたします」