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貴族転生、チートなしで成り上がれ!  作者: 榛名のの
第2章 学園編
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プロローグ

「あぎゃあ~!おんぎゃー!」

寒いんだよ!早く暖めてくれ!

「男の子ですよ!マリス様!」

「……最後にあの人の願いを叶えてあげられたわね。ばあや、今日までありがとう」

俺を抱きしめてる女の体は徐々に冷たくなった。そして、動かなくなった。

「マリス様!!ああ、何という事でしょう!神様ウェルバー男爵家をどうぞお救いください!」


いきなり母親が死んだ。

 あの氷のような冷たさを忘れられない。

俺の兄弟姉妹は上に7人の姉がいる。

長男世襲制で、男子が生まれなかったらお取り潰しになるらしく、俺の生後14日目に帰宅した父親の大号泣と俺の体を抱っこしての泣き笑いは胸にズンときた。


「ロギ、お前がウェルバー男爵家の跡継ぎだ!強い男になれ」

頑張るから、お前も稼げよ!11人家族だぞ!

使用人にばあやのユリアンと代官兼家令のガスパールがいる。

 ばあやのユリアンは溢れる母性で8人兄弟姉妹をサポートしてくれている。

 代官兼家令のガスパールは山のように積まれた書類の前から動けないから真面目だというのはわかるが、話したことが無いからどんな性格かわからない。ただ、白髪頭のおじいさんだ。

 

 日中はばあやにオンブされてお腹が空いてるのをごまかす為、情報収集する。


「ユリアンさん、傷物ここに置いておくな!」


 売り物にならない野菜を領民がくれた。


「ありがとうございます!サウラさん」


それというのも、ばあやからのピクルスのお返しが欲しいからだ。

 ばあやは、男爵領1番のピクルス名人。

料理上手ではないが、一応食べられるものを作ることが出来るらしく、俺の姉達は文句を言わないでお替わりしている。

 しかし俺の鼻はごまかせない。すごく微妙な匂いがするのだ。多分、俺は食べない!

 味付けは塩とワインビネガー。ばあやの実家でダメになったワインを大量に寄越してくる。まともなワインは1~2本だけ。

 親父は酒は飲むけど、ほとんどガスパールに譲っている。

何と給金の支払いを6年も待たせているらしい。

 もっとガスパールを大切にしろ!

ガスパールがいないと男爵領はお終いだ。…というくらいデスクワークが出来ない父。

更に、ウェルバー男爵領はそこそこ広くて村が4つもある。

 開拓に成功したご先祖様の墓に足を向けて眠れまい!と思ってたら何ということでしょう!

何処ぞの戦に参戦して王様を守って撤退した功から男爵と土地を与えられ、ここ20年で4つの村を開拓したのは親父様でした!

 そう、親父はもう43才です。母ちゃんは30才の年の差婚でした。

 しかし、農業以外に特化してない4つの村から年貢をお金でもらえず、うちは貧乏なまま。かなりの量の野菜の年貢も大商会に買い叩かれてやっと寄親のダンテス伯爵に上納できるくらいにしかならず。自分の取り分無し!

 ばあやに頼んで今度はガスパールにオンブされてみた。

 書類の文字は見えるが読めねえし、とりあえず3ヵ月頑張って見たら、文字、数字が解るようになった!にぎにぎトレーニングでペンも握れるし、首も座ったから赤さん用の椅子に座らせてもらって簡易簿記のお手伝い。ん?文字がよれるし、大きな表になった。

ペンデカいからな!

「だぁう!」

「ん?上手に書いておられますよ。?!こ、これは!野菜の納品数と売り値!計算も間違いない!では、こちらの山をお願いします!」

……それでいいのか?ガスパール。

俺まだ生後3ヵ月だぞ?

面白いからやるけどな!

時々寝ながら書類整理して半年が経ち、ガスパールと俺は戦友になっていた。

 当然俺はまだしゃべれないが、そこは問題のある書類をガスパールに見せるだけで解決する。ガスパールは賢いのだ!

今は、隙間時間にガスパールの方の書類の決裁の仕方を習っている。

年貢の売買だけだったのが、公共事業の陳情から、村人の争いごとまでごった煮で押しつけられた。

 ガスパールは数年ぶりに出かけるようで、ばあやに俺の見張り役を頼んで行った。

 ばあやに頼んで書斎で書類決裁。

へぇ、街道作ろうとしてるんだ。宿屋まで公共事業で作るの?!

 誰だ!発案者は?!

すると汚い字でサインがしてある。

 オーキンス=ダン=ウェルバー、って親父じゃん!

質問を箇条書きして書類を本人に差し戻す。

 街道は納得いくが宿屋まで公共事業で金が出せるか!

「ロギ、お金は大事だけど領民はもっと大事だぞ?村の人口が増えて来て新しく働く場所が必要なんだ!だから宿屋も建てよう?」

「ばぶぅ!」

甘えるな!

サラサラッと箇条書きを増やす。


【お金無い!お金無い!お金無い!】


「ロギ~、お願いします!」


【ガスパールが帰るまで待て!】


「ガスパールはこのお金を借りに行ってるんだ」


なぁにぃいい?!ガスパール何故ウキウキしてた!てっきり孫とでも会うのかと思ってた。

一言言ってくれても良かったのに。


 そのガスパールがあまり良くない顔色で帰って来たのは10日後だった。


「借入金の都合がつきましたが、2つばかり条件がありまして、いいのか、悪いのか考えあぐねてこれ程の時間が経ちました。ロギ様、旦那様、青の月末日を持ちまして私は退職させていただきます。まず、それが一つ目の条件です」


今は赤の月10日目だから後110日でガスパールが居なくなる?

 大変だ!給金払えるかな?!後釜に誰か雇うお金はあるかな?


「あうあ、だぁ~!」

ガスパール辞めないで!ずっといて!


ガスパールは涙を目尻に滲ませながら、俺を抱き上げると背中をポンポンした。


「2つ目の条件は、年貢をうちの商会で買い取りさせること、です。けしからん事にウェルバー男爵領産の野菜や小麦は質が高いと高値で売れるそうなんです!これでやっと資金繰りがなんとかなりそうです」


ガスパールがいないとそれも霞んでしまう。


「あー、イヤー!ヴァーン」


「それでですな、ロギ様が執務をする為にこれを必要とするのではないかと思って魔導具を実家の宝物庫から借りて参りました。【時の指輪】です。その前に魔力量を図らせていただきます。ロギ様私の目を見て下さい」


ガスパールの黒い目をジッと見つめるとガスパールはしばらく黙っていたが、うなり声を上げた。


「想定外です……では、もう一つの方を試して見るしかないですね」


「何だ?!魔導具が使えないのか?」


「ロギ様が使ったら、1トーンで死にます。この指輪は魔力食いなんです」


怖っ?!なんて物持って来るんだよ!

ガスパールは次の行動に移った。

おもむろに香草茶を入れて冷まし俺に問答無用で呑ませたのだ。ゲホッ!


「何しやがる!ガスパール」


親父とガスパールが驚いている。ガスパールはフフフと笑い親父と俺を見比べている。


「上手くいきましたな。旦那様が二十歳の頃にそっくりです。でも、少々お口が悪うございますよ。ロギ様」

「名前を考えないといけないな、ガスパール」

「ナナでいい」

夏目成密だったから女友達はナナと俺を呼んでいた。

ガスパールは、ニッコリ笑うと俺に親父の執務用の貴族服を着せ書斎でお仕事のレッスンを始めた。

 それ自体はどうにでもなったが、法律関係がサッパリ判らないので、その勉強もするハメになり、寝るのは朝のほんの僅かな時間だ。

 朝起きると親父に付き合い鍛練。ばあやが飯を作る前に俺が作る!

 美味いから皆がっつく。

親父に森から肉を取って来いと命令しても怒られない。ロールキャベツは皆がとろけたらしい。

 3日に1回、例の香草茶を飲む。これも魔力量で効果が切れる時間が違うらしいので魔力の鍛練も始めた。

 剣術は目に見えて成果が上がるのに、魔力はうんともすんとも言わない。

 ガスパール曰く、向いて無いとの事。

ハッキリ言い過ぎだから!

 でも諦めがついたら他にやりたいことがある。

トマトが美味しくないのは、多分水のやり過ぎ。雨除けの簡単な屋根を付けて水をあまりやらないよう指導してたら、領民たちに最近収穫量が減ったと相談されたので聞き取り調査をしてみたら、同じ場所に同じ野菜ばかり植えている。

 連作障害だ。

だとしたら、土から改良した方がいい。

腐葉土を森から親父たち自警団に運ばせて畑の土と混ぜて漉く。畝を作って水はけを良くするのも忘れない。

後は野菜の保存方法を10日かけて教えた。タマネギは一括りにして、風通しがいい影で竿にかけて干すと長持ちするとか、ジェノベーゼの作り方やケチャップ、ピクルス、ジャムやオイル漬けなどの加工食品もわかりやすく実演して好評の内に講習会は終わった。

 

ナナ様の前世名「夏目成密」に変更しました。

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