不意に訪れた非日常 前
風邪をひいてるなか書いてるので少し変な文章になっているかもしれません。
気になるところがあればご指摘ください。
次の日も僕たちは学校に行っていた。普段と変わらない日だが、今日は朝礼の時に先生から注意事項を言われた。
「昨日からこの近くで不審者の目撃があったようなので皆さん気をつけてくださいね」
「不審者か…」 ポツリと呟いた。
最近はそのての話題が多いせいか嫌でも気をとられてしまう。
「はーい それでは5分後に最初の授業をします、ちゃんと準備しといてねー」
先生の言葉を耳に流しながらボーと考え事に耽っていた。
----------------- 昼休み --------------
「ボクのお母さんとお父さんがついてきてくれるらしいから皆で見に行けるね、彗星」
レイナのいるクラスにハルと3人で集まって昨日の話題を掘り返していた。
ハルの両親が一緒に来てくれるらしい。
「私もお母さんに許してもらえたから一緒に行けるね」
どうやら無事にみんなで見に行けるらしい、気分はすっかりそのことでいっぱいになっていた。
「ならきまりだな!すっごいキレイらしいから楽しみだな」
「そうだね、もしかしたらボクたちも覚醒者になれたりしてね」
「ハルくんならなれるよ!いつも人生ゲームの時になってるんだから」
「それなら僕もなったりしてね、昨日初めてマスに止まったし」
「リョウは厳しいんじゃない?」
「うーん リョウくんはちょっと」
どうやら二人からの僕のイメージは少し複雑らしい。
キーンコーンカーンコーン
おしゃべりをしていたらお昼休みの時間が終わったようだ。
「じゃぁまたな」
「うん」
「今日もハル君家でね」
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二人と別れて僕は自分のクラスに戻っていた、午後の授業も終わり夕礼の時間だ。
「最後に、朝も言ったけど不審者の目撃情報があるから気を付けてね。明日からはしばらく集団下校となります。 それじゃみんな、さようなら」
「「「せんせい、さようなら~!」」」
何度目になるかわからない注意の言葉を受け僕は家に帰った。
結局不審者になんて会うことはなく家に着いた。
鞄を置いて少しおやつを齧る、10分近くたったあとハルの家に向かって歩き出していった。
ピンポーン
「いらっしゃい 今日は涼君のほうが先ね、晴は部屋にいるからあがってて」
「おじゃましまーす」
いつも通りハルのお母さんが出てきた、今日は僕の方がレイナより早いらしい。
いつものように靴を脱ぎ2階へ上がる、ハルの部屋に入ると彼はマンガを読んでいた。
「こんちゃー ハルそれ何読んでるの?」
「リョウその挨拶は 」
「まぁまぁそれより何読んでるんだよ」
「マンガだよ、覚醒者がヒーローのやつ」
「あー最近でたっていってた新しいやつか、僕も読みたいな」
「ボクが読み終わったらね」
ヒーローなんてのは偶像だと悟ったが、かっこいいものはかっこいい。心のどこかではまだ憧れがあるのかもしれない。
ハルとマンガについて話していたらレイナがやってきた。
「おじゃまします、リョウくんの方が早いなんてめずらしいねー」
「いらっしゃい」
「おそいぞーレイナ」
いつもの3人が集まったことで今日もまたゲームをして遊びだした、昨日と違い今回はテレビゲームだ。
ハルの部屋にあるのは子供一人用のあまり大きくはないテレビだ、3人でやるにはあまり適さないそれで遊ぶには、体を寄せ合うようにかたまっていた。
こうなるとハルはいつも動きが少しぎこちなくなる。
部屋の主であるハルを真ん中に僕とレイナはいつもハルの横に座っている。
「僕はあれがやりたいな、ストックで戦うやつ」
「えーわたしは電車のやつがいい」
「それだとまた僕が借金になるだろー」
「リョウはどのゲームも借金ばっかりだよね」
「たまたまだよ、そのうち僕のほうがつよくなるからな」
「ならどっちもやろっか、リョウとレイナもそれでいいよね?」
「しょうがねーなー」
「うん、私はそれでいいよ」
キャラクターが画面を飛び、僕のストックがなくなる。このゲームをやるとなぜかいつも最初にやられるのは僕だった。
その次にやった鉄道のゲームでは、ゲームをはじめてすぐに貧乏神が僕につき、気が付けば借金地獄になっていた。レイナが笑いながら「やはり才能がある」と言っていた。複雑な気持ちだ。
「それじゃ きおつけて帰ってね」
「おじゃましましたー」
4日後に迫った彗星の鑑賞を二人に念押しし、僕は一人帰路についていた。レイナは最近の治安を心配した母親が迎えに来るからそれを待って帰るらしい。
一人になった僕は昨日の帰り道に感じた不安が募ってきて、今日も速足で歩きだした。
ハルの家を出てすぐ右にまがる、そのまままっすぐ歩き出そうとしたときに怪しい男を見た。
男の所在は僕からみて左手、レイナがいつも帰る道の方向だ。
とくにどう怪しいってことはあまりない、少し大柄な体を上下黒い服で覆っていた。
僕が目についたのはその左手だ、彼は自身の左手に包帯のようなものを巻いており、その包帯には模様 いや、紋章のようなものが書いてあった。
片翼の翼を生やした蛇のようなものが自身の尾を咥えている。
もう少し少年が歳をとっていたならその紋章をかっこいいと感じたかもしれないが、今の少年にはそれがひどく不気味に感じられた。
「っ…」
僕は何もみていない、あれが最近よく聞かされている不審者などではないだろう。そう激しく脈打つ自身の心臓に言い聞かせるよう考え、急いで帰る。
「ただいま」
玄関の扉を開け帰宅した旨を告げる言葉を吐いた。
想像以上に小さかったその声は、先ほどまでの自身の臆病心のせいだろう。
返事がこないままリビングに向かった、こちらを振り向いた母親は少し驚いた顔をして声をかけてきた。
「おかえりー どうしたの?怖い顔してるわよ、なにかあった?」
「ううんなんでもないよ、それよりも今日のご飯はなに?」
「なににしようか迷っているのよね、涼は何が食べたい?」
「うーん じゃぁオムライス!薄焼き?のほうで!」
オムライスといえば若者には黄金に輝くような半熟焼きが人気だが、少年の舌には少し硬めに焼いた薄焼きの方が好みだった。
「ならそうしましょっか、お母さん買い物に行ってくるからまっててね」
「はーい」
買い物に行った母親を僕はテレビを眺めながら待つ。午後のニュースを報じていたがどうやら今日は覚醒者による事件はないようだった。
先ほどの男が脳裏によぎったが頭をふって忘れるようにした。
母親が帰ってきたのは30分後だった。
「ただいまー すぐ作るからまっててねー」
「はーい」
しばらくの間再びテレビを眺める、トントントンと小気味良い包丁捌きの音が聞こえてくる。
そんなときだった。少し遠くで、それでいて確かに近く感じる距離からサイレンの音が聞こえてきた。
齢7歳の少年にはそれが何のサイレンなのかわからなかった。
「おかーさーんこれなんの音ー?」
「警察のパトカーの音ね、何かあったのかしら?」
再び脳裏をよぎるのはあの不気味な男のことだった、あの男を見たのはハルの家の近くだ。
「涼。できたわよ 温かいうちにたべちゃってね」
モノ言えぬ焦燥感に駆られながらも出来上がったオムライスを僕はほおばった。
半分以上オムライスを食べ進めた時だった。
ご飯が出来たのは母親が買い物から帰ってきて15分後、その少し前のパトカーのサイレンが聞こえてから5分後のことだ。
不意に家にある固定電話が鳴った。
「はい、篠川です。」
電話をとった母親はしばらく相槌をうちながら話していた。
どこかその横顔が陰っていくのを見ていた僕は、電話が終わったタイミングで聞いてみることにした。
「おかーさん、なんの電話だったの?」
少しの逡巡をみせた後、どこか後悔したような顔のまま母親はしゃべりだした。
きっと僕に話していいのかすごく迷っているのだろう。
「えっと、楠さんからだったんだけどね…」
なかなか続きを話そうとしない母親をせかすように言葉をかける。
「ハルになにかあったの?」
「いい涼ちゃん、落ち着いて聞いてね。 怜奈ちゃんが行方不明になったって…
ううん、亡くなったらしいの」
瞬間、世界から音が消えた。
言葉の意味がよくわからない、このざわめく気持ちを確認するために、母親に聞きたい言葉が山ほど出てくるのに、それを言葉にすることが叶わない。
ただ茫然と固まっていた僕を動かしたのは、先ほどまで手に握っていたスプーンだった。
”カチャン” と、音を立てて落ちたそれは、まだ食べかけのオムライスが付いたままだった。
少年の好みになるように、ケチャップを多めに入れたチキンライスは床に落ち、痕をつける。
それはまるで真っ赤な血のような傷跡に見えた。
誤字脱字や誤表記、物語の乖離や違和感などあれば指摘していただけるとありがたいです。