流れた星
なろうに感化された21歳クソガキの綴る未来にご期待ください。
「待ってよ~リョウ!」
「いやだよ、ハルに捕まったらまた俺が鬼になるじゃん」
今では数を減らし、あまり目にすることのなくなった公園で元気な幼子の声が反響する。
2040年、突如として観測されるようになった巨大な彗星は、弧を描くような小さな尾と大量のイオンをまき散らす大きな直線系の尾を持っていた。
予報にもなかったその星の出現に、世界は大きく驚愕し不安が積もる中、彗星の観測から丁度5年後、世界中に突然不思議な力を持った人類が現れた。
【覚醒者】俗にそう呼称される彼らは人類の約3割程度の人々が進化した先の形だ。彼らはその希少性と力の強大さ故、覚醒者になることが出来なかった人々から畏怖と羨望の眼差しを向けられている。
「おかーさーん ただいまー!」
日が沈みかけ、空に朱が差し始めたころ少年たちは帰路についていた。
「お帰りなさい涼 手を洗ってきてね、もうすぐごはんできるから」
「はーい」
少年の家庭は母と父との三人暮らしだ、今日も父は仕事が遅くなるようで食事は母と二人でとることになるだろう。
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「ねぇ涼 今日は何をしてきたの?」
食事をとっている中、母親が質問を投げてきた。
「今日は公園でハルとレイナと鬼ごっこしてたよ!」
少年こと篠川 涼と二人の幼馴染、楠 晴・畔上 怜奈はいつも一緒に遊んでいた。
「楽しかった?」
「うん!」
「よかった、楠さんと畔上さん家のふたりには感謝しないとね」
(続いてのニュースです、いよいよ来週の土曜日に迫った彗星の接近日ですが、今回で4回目の観測となります。街の人々はどのような心境をお持ちなのか聞いていきたいと思います。)
会話の途切れ目にふとニュースの言葉が耳に流れた。
2040年に初観測され、それ以来10年周期で訪れるようになったあの彗星はその尾の光を地球に振りまき、覚醒者を呼び起こしている。
今年は2070年、今回の観測で4回目の接近となるのだ。
「もうそんな時期なのね、涼も覚醒者になれるかしら」
「覚醒者になったらいいことがあるの?」
「特になにがあるってことでもないんだけどね、いざというときに守れるような力があったら便利でしょ?」
「ふーん よくわかんないや」
今年で7歳になったばかりの少年にはまだ理解ができない感覚だった。
しばらくの間二人の会話はとまり、食器の音が響いていた。
(最後のニュースです ○○県○○町で今日未明、覚醒者による犯行とみられる遺体が発見されました。遺体にはとても鋭利なもので切られたと思われる切断面があり、欠損した一部がまだ見つかっていません、警察は民間の治安維持組織と協力し…)
「いやだ、これって隣街じゃない?物騒ね」
先ほど母は覚醒者になることを”守れる力”と言っていたが、世間での評価はその逆だ。
他者よりも秀でた力を手にした人類はその力で奪い合うことをしはじめた、結局は自分が一番なのだろう。
「涼も気を付けてね、変な人に会ったらすぐに大きな声で助けを呼ぶのよ」
「うん 大丈夫だよ」
テレビでみる芸能人になんて会ったことはないし、ニュースでみる事件なんて身の回りで起きた試がない、少し前までは信じていたがアニメにでてくるヒーローは偶像であることを知った。
だから、きっとこの時の自分は油断していたんだ。
明日は幼馴染たちと何をしようか、そんなことばかり考えていた自分の愚かさを自覚することになるなんてまだわからなかった。
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不定期ですが完結までは頑張る所存なのでよろしくお願いします。