⑥暗雲
「………ギュードさんは、その武器の事を知っているのですか?」
今度はギュードの方がその言葉に反応した。そして二人の顔が近いまま、真面目な顔つきのタイサを小声で問い詰める。
「お前………まさかあれを使ったのか?」
「………それしか方法がなかった。お前とデルには後で話すさ」
タイサは正直に答えると、ギュードは大袈裟に顔を手で覆い『本当に何もしていないから』と、先程までの話を続け直すと、仲を取り戻すようにタイサの肩を掴み、笑顔とは異なる声色で呟き始めた。
「王都に着いたら気を付けろ。断片的な情報しかまだないが、今回の件は色々ときな臭い事が多い」
「………分かった。済まないがこのまま妹をよろしく頼む」
二人は雑踏の中に響く、多数の金属音に気が付いた。
タイサがギュードの襟首を掴み、捕まえた猫の様に釣り上げる。
「悪いが、カエデ。俺は仕事の報告があるから………先にこいつと一緒に家で待っていてくれ」
「え、家でって。ここから一緒に帰るんじゃ駄目なの?」
タイサの腕から脱出したギュードが、カエデの正面で両手を後ろに組み、笑顔で首を傾げた。
「こいつは帰るまでがお仕事なんだよ。カエデちゃん、俺が送っていくからねぇ、安心していいよぉ。大丈夫、何もしないよぉ? お願いだからそんな顔しないでぇ………じゃぁ先に行こうねぇ」
ギュードはカエデをタイサから半ば強引に引き離し、民衆の中に消えていく。流石は一流の盗賊。数秒もしない内に気配が消え、カエデと共にその他大勢の中に紛れ込んでしまった。
金属音が大きくなり、タイサ達の前で音が止む。
「騎士団『盾』の皆さんで、よろしいですかな?」
馬に乗ったちょび髭で老け顔の騎士が、馬上から声を掛けてきた。タイサ達が数日前にこの街を訪れた時にはいなかった騎士。金色の騎士鎧を恥ずかしげもなく着ている人間がいれば必ず記憶に残っている。
タイサが左右に視線を運ぶと、他にも見た事のない十数人の黄金騎士が、槍を地面と空に繋ぐ様に掲げながら、終始無言でこちらを見ていた。
どう見ても慰労や歓迎の雰囲気ではない。タイサの周囲に何気なくいた旅人や商人達もそれに気付き、何事かと距離を開け始める。
タイサは相手の問いに小さく頷くと、尋ねてきた騎士に尋ねた。
「失礼ですが貴方は? 見た所、この街の騎士ではないようだが」
敢えて気が付いていない素振りを演じ、首を傾げる。その言葉に、ちょび髭の騎士は失礼した、と小さく機械的に詫びると、自分の胸に手を置いた。
「私は金竜騎士団に所属するカール・ブラッセル純二等騎士。あなた方の任務先で起きた出来事について直接話を伺いたいと、騎士団本部から至急の出頭命令が出ております。道中は我々が護衛する為、急ぎこの街を出発してもらいます」
タイサは、この一件が簡単に終わりそうもない事を悟る。




