①帰路にて
「隊長、何か気になることでも?」
蛮族を退治したタイサ達が王国に馬を向けて二時間程。行きに馬を酷使した分、帰りの足を緩やかに進めていた中で、エコーが言葉が少なくなっていたタイサの顔を伺い、細やかな言葉を投げかける。
タイサは自分の名を呼ばれてから彼女の方に顔を向けると、肯定とも否定ともいえないような声を出して視線をまた前に戻し、そのまま黙ってしまった。
そこにボーマが馬の速度を僅かに上げて、タイサとエコーに並走する。
「あぁ、これはたぶん………腹痛だな。隊長はトイレに行きたくて仕方がないんだ」
「何言ってるんですか。ボーマさんじゃあるまいし」
先導していた副長のジャックが首だけ振り返り、隊長に代わってボーマの冗談を受け返した。
「きっと、僕との別れが近付いてきたので、寂しがっているんです」
「………それもどうかと思いますが」
エコーも流れに乗って、ジャックの冗談に付き合い返す。ルーキーはそのままタイサ達の後ろで馬を進めながらボーマ達の言い合いを聞き、苦そうに笑っている。
「ちなみにルーキーはどう思うんだ?」
ボーマが蚊帳の外だったルーキーをいきなり巻き込んだ。名指しされた彼は肩を上げて驚き、必死になって考えた末に、何とか言葉にまとめようとした。
「そ、そうですね………。普通に疲れたんじゃないですか?」
「面白くない。0点」「そ、そんなぁ」
即答するボーマの辛口に、ルーキーが肩を落とす。
「ルーキーもうちの騎士団に慣れて、冗談で返せるようにならないとね」
「は、はい………精進します」
間もなく去るであろうジャックの励ましに、ルーキーが眉の間にしわを作りながら曖昧に笑ってみせた。




