②戦友
「隊長、少し真面目な話をしてもいいですかね」
藪から棒にボーマの顔が険しくなった。
「あまりルーキーの死を背負い過ぎないでください」
「………そう見えるか?」
ボーマの言葉にタイサは自嘲まじりに目を閉じる。
「何年一緒にやってきたと思ってるんです。あいつの盾を使っておいて、背負っていないとでも思ってるんですか?」
ボーマは声を少し強めながら続ける。
「あいつの死は隊長だけの責任じゃぁありません。蛮族が相手だろうが同じ人間が相手だろうが、戦えばいつかは誰かが死ぬんですよ。初陣であっさり死ぬ奴もいれば、僅かな油断で騎士団長が死ぬ事だってあるんです」
そして声が柔らかくなる。
「ルーキーの身の上は、自分もある程度知っています。そしてあいつが死ぬ前の夜に、隊長と何か話していた所も屯所から見えました。気にするなと言える立場じゃありやせんが、せめて背負い過ぎないようお願いします………自分もエコーも、皆で等しく背負いましょうや」
水臭いじゃないですか、とボーマは最後に照れくさそうに笑い、鼻をすすった。
「………そうだな。お前の言う通りだ」
一番付き合いの長い彼の言葉に言い返す事が出来ず、タイサは正面から受け止める。
「良くも悪くも、これまで死者を出してこなかった反動か」
「それが普通っすよ。仲間の死に慣れても困りますが、どこかで割り切っていくしかないと思いますぜ………まぁ、冒険者上がりの隊長に偉そうに言うのも何ですがね」
ボーマの言葉に、タイサは『全くだ』と肩の力を抜く。
「しかし、お前がこうも真面目な話をするとはな。まさかそれがお前の遺言になるんじゃないだろうな」
「そうなったら、後で隊長に死神の女の子を紹介しますよ」
「言ってろ」
やはり叶わない。タイサは肩を揺らして笑うと、大きな音を立てて戦友の手を強く握りしめた。
「街の人達を頼む」
「任せてくだせぇ! 隊長の騎士団『盾』の古参として恥じない働きをさせていただきやす。隊長の強さは十分に分かっているつもりですが、必ず生きて戻ってきてくださいよ」
手を放し、ボーマは段差のある顎をいじりながら照れるように鼻で笑った。
「俺みたいに軽口ばかりで、女たらしの変態を使ってくれる人は隊長以外にいませんからね。ぜひ明日も使っていただきたいですね」
「勿論だ。これからもこき使って、その腹が体の中に納まるようにしてやるから覚悟しておけ」
二人の手が拳となって弾き合う。
「では、ご武運を」「ああ」
ボーマは手綱を弾き、住民達が集まっている学校の裏庭へと馬を走らせていった。




