序章⑦
瞬間。
風を切り裂く音がタイサの右耳に飛び込んで来た。
「隊長!」エコーが叫ぶ。
「もう一体いるぞ! 森の中だ!」
同時により高い音が森の中に響き渡る。
「ひぃぃぃぃっ!」
ルーキーが自分の馬の足元に刺さった石槍に驚き叫ぶ。
タイサは咄嗟に右の籠手で顔を守り、飛んできた石槍を弾いていた。
「戦闘態勢! 半包囲!」
タイサが立ち上がって態勢を整える間、副長のジャックが代わりに命令を放つ。
手綱を引き、槍が投げられた方向の森からの距離を開けたボマーとエコーが、タイサを中心に、しかし離れた左右の側面で待機する。騎槍と盾を構えた二人の姿を見たルーキーも、慌てて後方のジャックの近くまで移動し、震える手で武器を構えた。
「全員、合図を待て」
タイサは地面に刺した騎槍を手に取ると右足を大きく一歩引き、前面に張った盾と共に森を前にして武器を構える。
森が軋む。
そしてゴブリンよりも、軽く三倍は大きい体をした二足歩行の猪の獣人が姿を現した。
「オ、オークです! ほ、本物のオークだぁ!」
「ぃやかましぃ、ルーキー! しっかりと騎槍を構えてろ!」
内股になり、既に半泣きのルーキーに対して、ボーマが顔に比例した大きい口で冷静に怒鳴る。
生まれつき体格に恵まれているオークは、丸太の様な腕だけで人間の首を簡単に捻じり切る。それだけでも厄介だが、彼らは手先も器用で、人間程ではなくともゴブリン達よりも遥かに良い道具を作る技能をもつ事でも知られていた。




