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Lost19 底辺の隊長と呼ばれた男  作者: JHST
第五章 力ある者の責務
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⑤蛮族の奇襲

 タイサ達が屯所を出ると、既にゴブリン達は街の中に侵入していた。

「くそ、そうくるかっ!」タイサが叫ぶ。


 ゴブリン達が障害物(バリケード)には目もくれずに、枝と棒を蔓で結った粗末な梯子をそこら中の石壁にかけて塀を突破。次々と街へ入り込んでいく。

 タイサの視界に入るだけでも、五十匹を越える蛮族が一度に入り込み、街は大混乱と化していた。指示もなく、どうしていいか分からないまま武器を振るう住民達が、複数のゴブリンに取り囲まれ、断末魔の叫び声をあげたまま服の上から解体されていく。

 ここまで来ると、冒険者も例外にならない。

 迫り来る数匹のゴブリンを打ち倒しても、次々と現れるゴブリン達の波状攻撃によって、最初に足を切られ、次に腕を切られて、徐々に動きが鈍っていく。冒険者は、切られていく度に体の動きが遅くなり、ついに毒が回って膝をついた。

 最後は、砂糖に群がる蟻のように囲まれ、毒にまみれた短刀を防具の隙間から体中に押し込まれて絶命する。

 男も女も、子どもも大人も老人も関係ない。ゴブリンに群がられた人間は、成す術なく等しく死んでいく。街は悲鳴に包まれていた。



「おい! どうして敵の接近に気が付かなかったんだ!」

 五十を越えるゴブリンに、誰も気が付かない訳がない。タイサが南門から逃げてきた住民()の肩を掴んで寄せると、語気を強めて事情を尋ねた。

 青ざめている男は、細く怯えた声で、ゴブリン達がいきなり背の高い草原から姿を現したと言葉を漏らす。奴らは体に草や葉を巻き付け、近くでは目立つ格好でも、高台からはその姿が見えなくなる手を用いてきた。加えて、午前の戦いの疲労から注意力が散漫になっていた為、住民達は南門と東門付近の壁に梯子が掛けられるまで、全く気が付かなかったのである。


「………そこまで考えられるようになったのか、奴らはっ」

 有り得ない予想を、さらに一歩踏み越えた行動をとるゴブリン達。タイサは肩を震わせながら拳を握ると、可能な限り感情を抑え込みながら、後ろで動揺する二人に声をかけた。

「エコー! お前はバイオレットと一緒に、逃げて来る住民達を丘の避難所(学校)へ誘導しろ! あそこは南北の大通りを抜けなければ辿り着けない。あそこを拠点にすれば、まだしばらく持ち堪えられるはずだ!」

「た、隊長は、どうされるおつもりですかっ!?」

 エコーが叫ぶ姿を背中に受け、タイサは握っていた盾を腕に通し、革のベルトで固く締め付けた。

「俺は、逃げ遅れた人達を助けに南門へ行く! いいからお前達は先に行け!」

 そして走り出す。



 南と東の門付近では、逃げ遅れた者やまだ戦っている住民や冒険者達がいる。タイサは目的地に向かいながら、ゴブリンに追われている住民が視界に入れると、ゴブリンの頭を盾で払って吹き飛ばし、倒れた所を、騎槍(ランス)で突き刺して胸に大きな穴を開けていく。


「南門と東門は放棄する! 動ける者は怪我人を連れて丘の学校へ向かえ!」

 転倒した住民に手を差し伸べ、刃を交えて膠着する冒険者の横から加勢して蛮族を討つ。一人ずつ確実に救出していくタイサは、それでも救えなかった者達を跨ぎながら体を震わせて大声を上げ、なお盾と槍を振るってゴブリン達に自らの位置を喧伝し続けた。 

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