③一つずつ
「何かあったのですか?」
心配をしてくれているのか、それとも単なる興味か。バイオレットが二人に顔を向ける。エコーはタイサの代わりに、ゴブリン達の異常な行動に対して、理解が追い付いていない事を簡単に伝えた。
それに乗りかかるようにタイサが話を戻す。
「とにかく異常としか言いようがない。奴らに騎馬を倒すだけの技能が見られたと思ったら、一方で無防備な北門には一切気が付こうとしない。障害物の攻撃方法も稚拙だ」
十分な知恵者があれば、騎馬を封じた後に北門から侵入して街の中で存分に暴れる策を取る。
この際誰でもいいと、腕を組むタイサは、なりふり構わず考えている事を吐き出していく。バイオレットもその言葉を一つ一つ聞き取り、確かにと顎に手を当てて思考する。
そして、単純に思いついたことを口にした。
「まるで、敵は騎馬を倒す事しか計画してこなかったみたいですね」
彼女の言葉に、タイサはピタリと動きを止める。
「………騎馬だけ? 倒すだけの計画?」
タイサの目が次第に大きく開かれていく。
「隊長、何か分かりましたか?」
エコーがタイサの表情に気付いた。彼は大きくさせた目を左右に泳がせたりしながら頭の中で思考を反芻させ、必要な情報を精査していくと、ついに持っていた手拭いをテーブルの端に投げ捨てた。
「畜生………そういう事かっ」
一人、苦虫を噛む顔になったタイサに、エコーとバイオレットが息を飲む。
「奴らの考えが………何となくだが分かった気がした」
大きく呼吸をして、感情の起伏を抑え込むと、タイサは地図に置く白や黒の丸石をテーブルの隅からかき集め、二人をテーブルの周りに呼び集めた。
「バイオレット。騎士団の訓練学校で最初に学んだ実技は何だ?」
「………? 確か乗馬だったと思いますが」
「その通りだ」
質問の意図が読めないバイオレットは困惑したままタイサの質問に答える。すると、タイサは手元に集めた白い石を一つ、テーブルの中央に置いた。




