⑩アリアス防衛戦 -接敵-
―――翌朝。
これから何が起きるのか知らされていない小鳥の群れが、南門の障害物の上に並び、目が覚めるような高い声で仲良く囀っていた。太陽も何事もなく東の丘の上から顔を出し、木々や家々の間から抜ける光が、冷えた朝の空気と南門で武器を構えている者達の背中を徐々に温めていく。
「見えました! ゴブリンです!」
教会の鐘塔から、鐘を叩く音と住民の声が大声を落としてきた。数は五十匹、ないし七十匹程と、タイサが予測した通りに数が増えている。
「奴ら、何かを持っています! 棒と………あれは盾だと思います!」
続いて南門の傍に立つ櫓からの報告で、ゴブリン達が粗末な剣だけでなく、動物の皮をなめした盾を持っている事が分かる。そして盾を持った奴らは両端で縦一列に並んでおり、側面攻撃に対抗するような陣形で向かって来ていた。
「隊長。先日の突撃への対抗策でしょうか?」
「まさか。あんな粗末な盾じゃぁ、馬の脚で踏んでくださいって言っているようなものだぜ」
南門と東門の間にある広場で待機していた馬上のエコーの言葉に、寝不足で欠伸をしていた隣のボーマが、タイサの代わりに、さもつまらなそうに答える。
新入りの気を紛らわそうとした二人なりの冗談の会話だったが、タイサは装備を増やしてきた相手の意図が読めず、無意識に沈黙で返していた。
そして騎槍を高く掲げ、味方を鼓舞するかの様に声を張る。
「作戦通り我々は西門から出発し、南門前の敵集団を側面から薙ぎ払う! 奴らが盾を持っている事は気になるが、ボーマの言うように速度さえつければ恐れることはない。全騎前進!」
タイサの馬の鳴き声をきっかけに、エコー達がそれに続いて西へと馬を駈け出していく。僅か五騎の騎馬隊は、脱出の準備を進めている住民達の横を通り過ぎて東門を抜けると、そのまま右へと旋回。南門に群がるゴブリンの側面を狙った。
策は昨日と同じく横形陣、横一文字。タイサの合図で全員が騎槍の先端を空へと向ける。一方のバイオレットも先日の教訓を生かし、横列のやや後方で剣を構えていた。




