⑦不器用な二人
「そんな物分かりの良い副長に、先着ボーナスだ」
「はぁ」
タイサの言葉の意味が分からずエコーが首を傾げた。彼はトレーの上に置かれた硬めのパンを口にしながら、倉庫の隅に置かれた小瓶を指さし、それを取るように声をかける。
「毒消しが一本だけ残っていた。そいつを湯を張った桶の中に入れ、明日着る下着や服に染み込ませて一晩干しておくんだ。万が一、毒が塗られた武器や爪が刺されても、服の上からなら毒が回りにくくなる」
エコーが指示された先にあった小瓶を手に取ると、中には透き通った緑色の液体が入っていた。
「しかし………隊長は持っていなくて宜しいのですか?」
毒を受けた場合、解毒の魔法か薬を使うしかない。だがどちらにせよ、戦闘中にいつでも行えるとは限らない。どこにでもある話だが、治療ができる場所に辿り着く前に毒が回り、動きが鈍った所を狙われる事は少なくない。
タイサが鼻で笑った。
「何を今更。知っているだろうが、俺に毒は効かん。ルーキーにはそこまで無茶はさせないつもりだし、バイオレットには………あの鎧があるから大丈夫だろう。だからエコー、それはお前に使って欲しい」
「隊長………」
エコーは小瓶を大事そうに握り、タイサの言葉の意味を受け止める。
「もしも俺の身に何かあれば、お前が隊長代理だ。当然お前は死ぬ訳にはいかない」
「そう………ですね」
望んでいた意味とは違った。だが、エコーは芋が入ったスープを飲み干し、少しむせ返るタイサを見ながら小さく微笑む。無論、相手に分からない程にだ。
「分かりました。ありがとうございます」
彼女の望む答えではなかったが、彼なりの気遣いを受け取ったエコーは、それ以上何も言わずに毒消しの小瓶を腰のポーチにしまい込んだ。
―――数十分後。
バイオレット、ルーキー、ボーマの順で倉庫に集まり、使える武具を取り出しては具合を確認し、必要があれば調整を行った。
地方の屯所故、装備が十分に揃っているとは言えないが、規定通りの予備が存在していた為、剣や小盾、弓等を住民や冒険者にある程度配れる算段が付く。
「今日は、ここまでにしよう」
倉庫での武具の確認を大方終え、やれる事はやったと、タイサはエコー達に解散を命じた。そして、一時間おきの見張りを再度確認し、それ以外は各自に割り当てられた屯所の仮眠室に向かい、随時休息をとる事を指示する。見張りを挟むが、それでもこの状況で五時間程度の睡眠を取れる事は非常に大きい。




