⑥アリアスに向けて
―――翌朝。
タイサ達は日の出と共に西門を抜け、先日よりもやや速い速度で馬を走らせる。
街を抜けると行商人や旅人の数は随分と減り、速度を上げてもぶつかる心配はなくなっていた。このままの速さで行けば昼頃にはアリアスの街に辿り着くことができるだろう。タイサは頭の上に地図を思い浮かべながら、余裕をもって計画を立てる。
何事もなければ半日かけて街の周辺を巡回して一泊。アリアスの屯所と情報を交換して帰路につけば、二、三日以内には王都に戻る事ができる。妹への連絡は王都の出発前、ギュードを探したついでにギルド兼酒場のマスターに頼んでおいたが、それでも早めに帰るに越した事はない。
「………何を考えているのやら」
タイサが後ろを振り向くと、馬との間隔を維持したままバイオレットがついて来ている。
彼女の表情は相変わらず石のように無表情だった。昨夜の事を根に持っているのか、それとも全く気にしていないのかすら分からない。一緒に銭湯に入ったエコーから密かに報告を受けているが、結局彼女の感情も不満の声も拾う事ができなかった。
気が付けば次第に木々の数が増え始めている。草原が切り替わり、林を抜ける回数が増えてきた。タイサは頭の中を切り替え、任務の事に意識を向けようと首を小さく左右に振る。
先日、タイサは奇妙な情報を冒険者ギルドから得ていた。
それはアリアスの街に駐屯していた騎士達がここ数日帰ってきていないという信じがたい内容だった。
そんな情報は王都では聞かされていない。
タイサは早朝出発前にグーリンスの屯所を訪れて夜勤明けの担当騎士を叩き起こしたが、彼が眠い目を擦りながら発した言葉は、タイサを驚かせるには十分だった。
―――その調査にあなた方は来たのではないのですか?
既にタイサ達が知っているという前提で、相手は特に報告すべき事は無いと判断し、何も伝えようとしなかったのだという。
何故騎士団本部にこの情報が伝わっていなかったのか。出発前、タイサがエコー達にこの情報を話すと、やはりタイサと同じ疑問に辿り着いた。
人づての情報において、細かな部分での差異や言葉尻の読み間違いは、日常の任務でも少なからず存在する。だがここまで大きな情報が伝わっていなかった事は、騎士を長年続けていたタイサ自身ですら記憶にない。
十分に気を付ける必要がある。それは間違いない。
改めて気を張り直すと、タイサ達は最後の森を抜けた。




