①不透明な出発
一体何が起きているのか、皆目見当がつかない。
タイサはエコー達と共に西の大正門を出発し、特に急ぐ事なく馬を進めながら二時間ほど考えたが、未だこれといった答えを見い出せずにいた。
宰相府を尋ねたタイサは、宰相のクライルとは会う事が叶わなかった。執務室前で立っていた衛兵の言葉を信じるならば、遠征の準備や交渉等で、ここ最近何度も不定期に出払っているとの事だった。
代わりにと、騎士総長からも事情を確認しようとしたが、既に遠征の準備で不在。その上、何故か騎士総長の執務室から出てきた金竜騎士団のイーチャウ団長と鉢合わせる形となった。
『命令書が正規なものである以上、それに従うように』
タイサの顔を見るなり、つまらなそうな顔を作った彼は、質問を受ける気もなく、早々に短く答えて去っていった。
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「しかし隊長。私達に外の巡回警備の命令が下るとは珍しい事もあるのですね。普通、新人が入った日は街の中での巡回が通例ですが」
「………そうだな」
隣で馬を進めるエコーの疑問に、考え事をしていたタイサがやや遅れて言葉を返す。
彼女が言うように、通常は新人に通常警備のルートや注意すべき場所などについて説明する為、街中の巡回を行う。ルーキーが入団した時は、数日に分けて街の巡回警備を行い、ゴブリン討伐の命が急遽下った時も、丸一日かけて戦闘訓練を実施してから出発した程である。
では命令が偽物かと言えば、否である。
バイオレットからもらった羊皮紙の命令書は、中央に王家の紋章が凹凸でうっすらと浮き出る細工が施されており、これは王国の公文書として正式な仕様である。さらに、騎士総長と宰相のサインも直筆で入っていた。
それ以上調べようとすると、文官達による専門的な鑑定が必要となるが、当然ついてくるであろう無用の誤解や各部署からの苦情や評価を考えると、タイサはそこまで強硬する妥当性を見い出せなかった。ならばと、タイサは王都を出る短い間でギュードと連絡を取ろうと試みたが、他の仕事をしているのか、結局ギルドで会う事が出来ず仕舞いであった。
奇妙だと思える疑問は多々多々あるが、それらを立証するだけの時間と情報をタイサは現状持ち得ていない。イーチャウ団長の言い方さえ無視すれば、正規の命令が出ている以上、王国騎士団として行動せざるを得ない。
「まぁ、考えても仕方がない。取り合えず命令通りに指定された地区で巡回を行おう」
「分かりました」
エコーもそれ以上何も言わなかった。
タイサは馬を進ませながら後ろを振り返る。
最後尾はボーマとルーキーの二人、中心にいるのが新人のバイオレット。荷物は食料と水を多めに用意し、遠征用の旅費が入った麻袋もタイサの荷袋に収められている。今までの節約が幸いし、今回の作戦では多少の無理を言って、会計担当から多めに入れてもらう事ができた。




