⑬顔合わせ
エコー達が待機している詰所の前まで来ると、タイサが古びた木製の扉に手をかけた。
「とりあえず仲間を紹介しよう」
扉を開けるとエコー達が一斉に入口を向き、ゆっくりと立ち上がった。タイサが部屋に入ると、その後ろからバイオレットが続いて入り、エコー達と顔を合わせる。
「遅くなったが、新人を紹介する。バイオレット、自己紹介を」
「はい」
タイサの言葉で、バイオレットが一歩前に出る。
「本日より騎士団『盾』に配属されましたバイオレット・ウィック三等騎士です。よろしくお願いします」
バイオレットが小さく頭を下げる。タイサと初めて挨拶した時と同様に、型にはまった言葉を彼女はここでも用いた。
彼女の名前で動揺する前に、タイサは小さく咳き込む。
「その内にでも気付くだろうから先に言っておくが、彼女は貴族出身だ。だが、俺達の騎士団にそんなことは関係ない。みんなで仲良くしてやってくれ」
エコー達が小さく頷く。早速ボーマの目がいかがわしい目になっているが、タイサは変質者と彼女との視線を切るように体を壁にし、団員一人一人を紹介する。
「まず、副長のエコーだ。彼女は今日から騎士団の副長に任命されたが、腕も立つし、事務作業も十分にこなせる。同じ女性同士、何かあれば相談するといいだろう」
「よろしくお願いします。副長」
「こちらこそよろしく。副長と呼ばれるのにはまだ慣れないが、女同士一緒に頑張りましょう」
バイオレットとエコーが握手を交わす。
続いてタイサは、一番背の高いルーキーの前に案内する。
「ルーキーだ。バイオレットと同じく三等騎士の新入りだ。数日程度の先輩にあたるが、同期だと思って仲良くして欲しい」
彼の名前を聞いて、表情にこそ出してはいないが、バイオレットがタイサの方を向き、やや戸惑っている。
「ああ、うちでは新人をルーキーと呼んでいる………そう心配した顔で見るな。バイオレットも同じ名前で呼ぶとややこしいからな、先に名前が付いた方がそのままルーキーと呼ぶ事にした」
「………ルーキーです。よろしくバイオレット」
「よ、よろしくお願いします」
さすがのバイオレットも、彼をルーキーと呼ぶ事が出来なかった。
まだ彼女の実力を見た事がないが、立ち振る舞いからして彼よりも腕前は上だろう。初めの戦闘こそ経験の差でルーキーの方が落ち着いて戦えるかもしれないが、数か月もすれば立場は逆になる。身長差のある2人が握手を交わす姿を見ながら、タイサは確信に近い結論を心の内に出していた。




