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Lost19 底辺の隊長と呼ばれた男  作者: JHST
第二章 貴族の娘
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④詰所の朝

「おはようございます。隊長」「うおっす! 隊長!」

 タイサが騎士団本部の最端にある騎士団『盾』の詰所に入ると、既に騎士の鎧に身を纏っていたエコーとボーマが、長椅子に腰かけながら自分達の隊長の到着を待っていた。タイサは挨拶と一緒に軽く手を上げると周囲を見渡し、もうもう一人(ルーキー)の姿を探す。


「隊長、ルーキーなら新しい鎧を受領しに行かせています」

「………表向きは、今日来る奴の分ですがね」

 新入りが来る度のいつもの流れだと、二人が含んだ笑みを見せる。

「そうか。俺もその辺の準備をすっかり忘れていたからな。助かったよ」

 その様子ではルーキーに種明かしが済んでいるのだろう。タイサは二人にそのまま新入りの準備を頼むと小さく笑い返した。



「それと、隊長。本部から本日行われる団長会議の招集状が届いています」

 エコーが立ち上がり、今朝方尋ねてきた本部付の騎士から預かったと、金の線が混ざった赤い紐で結ばれて丸められた羊皮紙をタイサに手渡す。

 タイサは羊皮紙とエコーを交互に見ると、眉間にしわを寄せる。

「団長会議? しかも今日か? そりゃぁまぁ、何と言うか………随分といきなりだな」

 紐を解き、彼女の言葉が事実である事を確認すると、タイサが溜息をつく。

「どうやら前日に決まったそうで」


 これで午前中の予定は全て潰れる事になった。

 タイサはエコーから受け取った羊皮紙を丸めると自分の額に軽く当て、仕方がないとぼやきながら唇を尖らせ、奥の団長室へと向かう。


 中古市場ならば、どこにでも売っているであろう古びた茶色い木造の机と背もたれのついた椅子。団長室と呼ばれる部屋の隅の左右には王国の紋章が入った赤い国旗と騎士団の紋章が入った旗が共に飾られ、窓から入ってくる朝の日差しがそれぞれの旗を半分ほど照らしていた。

 タイサは上着を脱ぎ、それを椅子の背もたれに掛けると、部屋の角に飾られている自分の鎧を1つ1つ丁寧に取り外して机の上に置く。そして薄めの鎖帷子に手をかけた所で手を止め、会議には不要だろうと身に付けず、タイサはそのまま鎧だけを体に通し始めた。

 光に当てなくても分かる程に傷だらけの鎧だが、団長室の家具と同じく、しっかりと磨かれ大切に使い込まれている。


 だが、どことなくいつも以上に磨きがかかっていると、タイサは身に付けた鎧の角度を変えてあちこちに光に当てて確かめた。

 扉越しにボーマの声が入ってくる。

『あぁ、団長。そう言えば朝早くジャックの奴が来て、隊長の鎧を磨いていきましたよ』

「そうか。後で勝手に団長室に入った騎士がいると、全員で向こうに苦情を届けに行くとしよう」

 彼なりに新しい騎士団に行く前に、感謝の印を残していったのだろう。タイサは口元を緩ませながらボーマを笑わせると、最後に左腕の籠手をパチリとはめ込んだ。

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