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Lost19 底辺の隊長と呼ばれた男  作者: JHST
第二章 貴族の娘
25/119

①兄妹の朝食

―――翌朝。


 着替えを済ませたタイサが大きな欠伸と共に居間(リビング)に入ると、既にテーブルの上に朝食が並んでいた。

 隣の家から毎日譲って貰ってくる鶏卵の目玉焼き、焼いて柔らかくした干し肉、それとパンと牛乳。騎士の食事としては非常に質素だが、この家にとっては目玉焼きがついている分、豪勢な部類に入る。


「お。兄貴、おはよう」

「おう、おはようさん」

 使い古されたフライパンと木のフライ返しを持ちながらカエデが台所から現れると、自分の皿にタイサと同じものを乗せていく。自分の分は出来立て、という所が妹のあざとい部分だが、作ってもらっている身としてタイサは何も言わない事にしている。

 タイサはパンの上に目玉焼きを乗せ、完全に目が覚めない表情のまま口を開けた。齧る時にパンの上に乗せた黄身が潰れ、思わず口元から外れて垂れそうなところを慌てて指ですくう。


「もう………妹が座るまで待てないの?」

 台所の片付けを終えたカエデが呆れながらタイサの隣に座る。


「で、兄貴。今日の予定は?」

 パンを千切って潰した半熟の黄身に付けながら話しかけた。

 タイサはすぐに答えようとしたが、口の中に肉が入っている所を妹に睨まれると咳払いで誤魔化し、全てを飲み込んでから口を開ける。

「そうだな………ジャックの新しい騎士団の入隊姿を見て、それから入ってくる新人を迎えに行く事になっているな。その後はたぶん、新人の慣らしと交流も兼ねての王都巡回といった流れだな」

 そういえば新人用の荷物を準備していなかったとタイサは鼻で笑いながら呟いたが、後でボーマ達にやらせておこうと決め、残った食事に手を付ける。


「あれ? 新人って昨日入った人じゃないの?」

「違う違う、もう一人入って来るんだ。確か………特別推薦で入った奴だとか、何とか」

 当たり前だが、王国騎士団は誰でも簡単に入れる組織ではない。

 一般的には、希望者は座学と実技の選抜試験を通過し、数年の訓練学校を経てようやく騎士見習いとして配属されて雑務を行う。その中で実績と信頼、実力を積み上げ、晴れてなれるのが王国騎士である。

 だが、何事にも例外が存在し、それが特別推薦と呼ばれる制度である。

 名のある貴族など、騎士団に入る事を家訓としている家柄や、試験を受けるまでもなく十分な実力や実績がある事を騎士団長やその上の騎士総長などが判断すれば、彼らの推薦をもって即時入隊する事ができる。


 タイサの説明を聞いたカエデは天井を睨むように考え、一つのある疑問に辿り着いた。

「特別に推薦を貰える様な人が、兄貴の騎士団に入るの? 何か変じゃない?」

「まぁ、変だな」

 少し考えれば、誰でも気づく。タイサは何事もなかった様に、冷め始めた干し肉を頬張った。

 騎士団『盾』は、様々な事情から他の騎士団に居られなくなった者、実力がない者等が集まる吹き溜まりである。そんな井戸の底の下の泥のような場所に、貴族やら実力者やらが来る訳がない。

 数日前に人事部から聞かされた時点で、タイサにはいくつもの疑問が生じていたが、一団長に過ぎない以上、それらを拒否どころか、解決するだけの地位も権限もない。

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