⑨看板娘
「ですが、攻撃はからっきしですけどね」
ジャックが隊長の弱点は攻撃の遅さと命中率の悪さだと新入りに暴露する。
「そうそう。雑魚相手なら問題ないが、強い敵には攻撃が殆ど当たらないし、そもそも二撃目が遅いんだ」
「今日はオーク相手に外していましたしね」
ジャックの言葉にボーマとエコーが悪乗りしてきた。ルーキーがどんな表情をしていいか分からない中、三人はケラケラと自分の隊長を酒の肴にして笑い始めた。
流石のタイサも沈黙を続けられず、ついに口を開く。
「うるせぇなぁ。その分当たれば強いんだよ」
「「「当たれば」」」「当たれば」
四人の言葉が重なり、タイサやジャック達が一気に笑い出した。
「まぁ、こんな騎士団だが仲良くやろうぜ、ルーキー!」「は………はい」
陽気な流れが出来てきたボーマは、顔を赤くしながらルーキーの肩を何度も叩き、大きな口で笑う。
「今日はまた随分と笑い声が煩いわね。何かあったの?」
看板娘のウェイトレスが締めの麺料理と人数分の小皿をテーブルに置きに来ると、大笑いしていたボーマを横目にタイサに声をかけた。
「ジャックが明日から騎士団『剣』の小隊長に抜擢されな。それと新入りの初陣祝いを兼ねての会だ。あいつにとっては、嬉しさと寂しさが半分ずつってとこさ」
「小隊長? あらジャック、それはおめでとう」
ウェイトレスがにこりと笑うと、テーブルに乗っていたボーマの空ジョッキを持って、ジャックが持つジョッキとを合わせる。
「ありがとうございます。落ち着いたら小隊の皆を連れて食べに来ますよ」
「………俺は今日君を持って帰りたいな」
ウェイトレスの横に座っていたボーマが、真面目な顔をしながら右手を彼女の背後に回す。




