⑥まずは一杯
「と、いう訳で。今日も1日ご苦労様っした!」
「「「「乾杯!!」」」」
ボーマの音頭で全員が麦酒を喉に落とす。互いにぶつけ合った樽形のジョッキが次々と空になり、飲み終えた順の顔に白い髭を生やしていく。
王都の中心、王城の根元にある騎士団本部に着いたタイサは、口頭で報告を終え、さらに『盾』の詰所の団長室に戻って報告書の作成と提出を済ませた頃にはすっかり日が落ちていた。
一方のジャック達は、今回の任務で余った物資を騎士団の倉庫に返還し、全員でルーキーにあれこれと教えながら武器防具の手入れを行いながら、律儀にもタイサの仕事が終わるまで詰所で待ち続けた。
こうして、やや遅くなったがジャックの昇進と送別会、そしてルーキーの初陣祝いを兼ねた飲み会が開催されたのである。
―――アルトの森と湖。
一階に酒場、二階と三階に宿を構え、王都でも東西南北が交差する大通りに面した超一等地に建てられた奥ゆかしき木造にして老舗の名店。店の名前にある『アルト』は、この店を立ち上げた初代店長の妻の名前を意味し、数百年たった今でも変わる事なく使われている。
一等地にありながら旅人に良心的な値段と、地元住民に評判のある味を両立させており、昼も夜も常に席が埋まっている。また、冒険者ギルドの窓口も兼ねている為、ここには地元住民や行商人だけでなく、一攫千金や名声を夢見る冒険者を含め、様々な人種が集まり、嘘も誠も情報を飛び交わせながら一夜の楽しみをここで共有していた。
「はい、お待ちどうさま!」
金色の髪を左右にまとめたツインテールのウェイトレス。滅多に姿を見せないが酒場の看板娘として評判の娘が珍しく出勤していた。彼女は四枚の皿を器用に左右の腕に乗せて運び、タイサ達のテーブルに慣れた手つきで並べていく。
猪のカットステーキ、半熟卵が乗った野菜サラダ、串焼きの盛り合わせ、蒸した芋の塩とバター和え。力仕事後の選択としては申し分ない味と濃さの組み合わせだった。




