④到着
だが騎士団には専用の窓口が用意され、優先的に入る事ができる。タイサは行商人達の列からずれるように馬を進め、時折彼らの視線を受けながら大正門の下、そこで立つ騎士の前で足を止める。
『珍しく、あの騎士団に討伐任務があったそうじゃないか』
西の大正門の端。馬を騎士見習いに預け、騎士団専用の窓口で帰還の手続きを行っているタイサの耳に、詰所の中で待機している騎士達の会話が入ってきた。
『本当かよ。いつも王都の中で徘徊しているか、周辺で馬と遊んでいるだけの連中がか?』
『何でも、街道に出たゴブリンを退治してきたらしい』
『あぁ、それは大変だ。あの騎士団にはさぞかし荷が重たかっただろう』
タイサが目の粗い紙に到着のサインを書きながら僅かに手を止め、視線だけを詰所の中に向けると、詰所で話をしている騎士達がこちらを見ながら、暇潰しの雑談程度の笑いが起きている姿が見えた。
今日の大正門の警備担当は騎士団『牙』。タイサの騎士団と同じく『色なし』の下位だが、その中では最も序列が高い。
タイサの目の前で受付を担当している騎士も、中にいる隊長級の騎士も、淡々と事務を続けており、注意する素振りすらない。
いちいち他人の言葉に付き合っていてはきりがない。まだ直接言われないだけマシだと、タイサは彼らの会話を無視しつつ手続きを終える。そして、やや離れていた場所で待機していたジャック達に向かった。彼らも馬の引き渡しを既に終えており、互いの視線が合うや、ジャックは手を小さく振り始めた。
「お疲れ様です。何かありましたか?」
「いや、特に。いつも通りだ」
タイサは周囲を一瞥し、心の内で一息吐くと、彼らを連れて大正門を抜けた。




