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Lost19 底辺の隊長と呼ばれた男  作者: JHST
第一章 色なし
11/119

③王都ウィンフォス

「皆さん、王都が見えてきましたよ!」

 まだ底辺の洗礼をさほど受けていないルーキーは、タイサ達の雰囲気を読んでか、それともその逆か、今まで蜃気楼の様にうっすらと見せていた輪郭が、気が付けば王城や白い外壁がはっきりと見て取れるようになっていた。


 大陸一を誇るウィンフォス王国の王都『ウィンフォス』。

 

 建国からおよそ八百年。まだ大陸一を謳えなかった数百年前は、幾度となく国家存亡の危機にも陥ったと言われているが、それでも当時の国民や王族が一丸となって困難を乗り切り、大小の戦争を生き残り、今や大陸で最も大きく、裕福な国として繁栄した。

 王都周辺は広大な平原に囲まれ、西部は豊富な森林帯、東部と南部には肥沃な農耕地区が広がっており、人が文明を築き、人や物が集まるには最適な環境であった。地域による差はあるが、基本的には1年を温暖な気候で過ごす事ができるが、二、三か月程度、作物を育てるには不向きな寒季が存在する。

 今の季節は主要な農作物の収穫が終わる頃、そして次に来る寒季に向けた加工品生産の準備の季節にあたり、国中の商人や加工業者達が良い原料を手に入れようと、各街をせわしなく移動している。



 一時間後、タイサ達はようやく西の大正門、そこへ向かう人の列の最後尾へと辿り着いた。

 初めてこの街を訪れた旅人や商人達は、まず巨人が出入りする門の様な大きさに目を奪われ、釣られる様に、誰もがその建造物を見上げていく。何度も出入りに慣れてきたタイサ達ですら、門が近付くにつれて、自然と首の角度が大きくなっていく程であった。


「今日もまた随分と並んでいますね」

 エコーが眉の上に手を置いて影をつくり、西の大正門前から続いている行商人の馬車や旅人達の列を見て溜息を零す。季節柄、ただでさえ混み合う上、昼前には王都に入ろうと考えた者達の思惑の結果が重なりやすい。

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