①査問会
王国騎士団の本部には、騎士でありながら不正を行った者、騎士として相応しくない行為をした者等を弾劾し、裁く場所がある。
組織はそこにいる人間の数が多くなればなる程、不穏分子や不祥事は発生し、運悪く見つかってしまった騎士が年に数名程、その半分は綱紀粛正という名の見せしめとして、この部屋の中央に立たされる。
「まさか、自分がここに立つ日が来るとはねぇ」
タイサは小さくそう零しながら、物珍しそうに部屋を見渡した。
正面の階段状に並んでいる椅子の中央には金竜騎士団のイーチャウ団長が座っている。本来は進行役として騎士総長が座る位置だが、今回は遠征中の騎士総長の代理を務めていた。
今にも有罪と言ってきそうな、既に勝ち誇った顔である。
タイサの左右には、王都内で待機していた騎士団『牙』と『杖』の団長。さらに、顔は見た事がないが、王城から文官と武官が二名ずつ呼ばれていた。
現役の騎士団長が裁かれる可能性がある場にもかかわらず、そして過去に例を見ない大事件としては、参加した者の数も質もすこぶる良くない方だろう。タイサは静かに自嘲する。
「まず査問を始める上で、タイサ団長には騎士として『真の宣誓』をしてもらう」
司会を務めるイーチャウ団長の声によって開会が宣言された。速記を担当する事務騎士が羽ペンにインクを染み込ませ、慣れた手つきで彼の一言を書き込み始める。
タイサの目の前、部屋の中央には白銀の剣が四角い大理石の上に刺さっている。これは嘘偽りなく証言をする事を誓う為のもので、被告や証言者等が証言をする際には、この剣に触れて誓う事で初めて発言を許可される。
別段、呪いや契約の類ではなく、単なる儀式と言う方に近い。
タイサはゆっくりと証言台に上がると、目の前にある剣の柄を両手で触れた。
そして大きく息を吸い、ゆっくりと吐いてから声を出す。
「………私は騎士の名の下、全ての言葉に対して嘘偽りなく答える事を誓います」
「結構だ」
イーチャウの言葉に、タイサは剣の柄から手を離して直立の姿勢を保つ。
まず進行役のイーチャウから前置きがなされた。
「先に説明をしておくが、本査問会は裁判ではない。貴殿が先の任務について報告した内容を再度精査し、またその作戦行動中においての出来事を確認する事が目的だ」
そして『ただし』と本題が始まる。
「証言や報告の内容次第によっては、後日裁判となる可能性がある事は伝えておく。自身の発言に関しては、一層十分に考慮した上で行うように。よろしいか?」
「分かりました」
そうとしか答えようがなかった。




