表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
討龍譚  作者: 二式山
  一章  旅
6/47

六話 昔話


 最近、各地で揉め事が多い。大きいものだと戦争になってしまったところもあり、幾つか国も滅んだ。


 元々、各国がそれぞれ割拠し、平和とは到底いえない時世だが、それでもここまで血なまぐさいことはなかった。


 キツツキの脳裏に、あの彼女の話が浮かぶ。


 (……龍薙)


 彼女のいうようでは、おそらく、龍薙が裏で糸を引いているという。


 (古の伝説が、なぜ今頃……)


 この大陸には、数千年前、虹龍と地龍、二体の龍王がいたという伝説がある。


 この世界では誰もが知っている話である。


 ルゥラも、寝物語として、ヨークや母によく聞かされた。



 

 それは遥か昔のこと。


 世界には八大龍王と呼ばれる、神に比肩されるほどの龍が八体存在したという。


 その八体の龍はそれぞれ領域を持ち、あるいは眷属や信徒を従え、あるいは単独で、己の縄張りを守護していた。


 八体のうち、地龍と虹龍は、ルゥラのいる大陸を住処とし、それぞれ眷属をつくり、地龍は東、虹龍は西に盤踞した。


 二つの龍は、大陸の端と端。


 両者の認識はあったものの、特に諍いはなく、協力して共通の敵を倒したこともあった。


 しかし、地龍は戦禍を招き乱を欲した為、平和を望む虹龍と敵対し、両龍が激突した天地戦役が勃発。


 魔族など諸種族も世界各地で地龍・虹龍、両陣営に分かれ、幾度となく大戦を演じ戦った。


 結果、虹龍が勝ち、地龍は虹龍の根城——今は虹龍国とよばれる——そこにある縦穴の底深く封印されたが、あくまで神と比肩されるもの。


 簡単に封印されたわけではない。


 虹龍自ら穴に入り、封印の要となることで、地龍はようやく封印されたのだ。


 虹龍が楔になることでの、地龍の封印。


 これで天地戦役は終わりかとおもわれたのだが、地龍陣営の残党が未だ生きていた。


 彼等は、地龍復活を目的として「龍薙」を組織し、戦乱で荒れた地を方々駆け廻り暗躍、巨大な勢力となりつつあったが、龍薙の存在を認知した虹龍陣営と、再び戦争を起こし大敗、あえなく壊滅した。


 その後千年以上、龍薙の話は聞かない。


 しかし、最近になって再び現れたらしい。


 目的は当然、地龍の復活であろう。


 地龍は今なお、虹龍とその眷属が住まう虹龍国、虹龍の真下に封印されている、といわれている。


 遠い昔のことで、虹龍も地龍も直に見たものはいないが、虹龍国には龍の巫女と呼ばれる者が居り、虹龍と意思疎通が出来、虹龍の権能の一部を使えるという。


 まあ、現状、キツツキには関係がない。


 今は彼女——虹龍国の使者メーチェの言ったことだろう。


 (確か……地龍の力を封じた封龍石が、あるとか何とか)


 地龍を封印した際、地龍の持つ力が十二の丸い石にわかたれたという。


 そして、その石——封龍石を十二の場所に分散させ封じた、と。


 当時の虹龍国は今よりはるかに勢力が弱く、一ツ所に安置すれば、もしもの時、どうしようもない、との判断のようだ。


 (それを、勢力が強くなったから今度は一ツ所に集めよう、か)


 過去はともかく、今の虹龍国は世界一、二を争うほどの強国だ。


 ちょっかいをかけた国が一晩にして滅んだという話もある。


 ただ、基本的に自分達の領内に引きこもっており、手を出さない限り他の国へ攻撃することはない。


 メーチェの言葉では、今は十分に強いから封龍石を手許に置いた方が安全だ、とのことらしい。


 実際、幾つか龍薙に封龍石を持ち去られたと聞く。


 (しかし、埋めた場所がわからないたぁ、困ったモンだな)


 キツツキは周りを見渡した。


 レッドモス奥地、一面の樹海である。


 切羽詰まっていたのか、それともうっかり忘れていたか、当の虹龍国でも封龍石のおおよその場所しかわからないらしい。


「さて、」


 キツツキは大きく背伸びした。


 裾がひらひら踊った。


 彼は、前合わせ、袴姿。

 その着物は華美、紅に藍など様々、桜が舞い鬼は金棒持ち。


 片肌脱ぎ、一点赤の襦袢が鮮やかに。


 メーチェの話だと、このレッドモスの中にも、一つ封龍石を安置した遺跡があるらしい。

 遺跡はことごとく埋没しており、目視ではわからない。


「探すとするかね」


 キツツキは歩き出した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ