四五話 帰還
大地の切れ目に築かれた街、洛遼。
日が暮れれば、いたる所に吊るされた提灯や、道端の灯籠がほのかな明かりを揺らめかせる。
「久しぶりだね。何年振りかな〜」
「そんなに経ってないだろ。まだ二年も経っていない」
「そんなに経ったら結構じゃないかな!?」
「そんなものか?」
「もうッ、年寄りみたいなこと言って!」
「あっははは、それは大人びいてるってことか?」
「ませてるっていうのよ」
久しぶりに洛遼に戻って来たジローとスズは、故郷への懐かしさと、幻想の如き洛遼の美しさに目を見はった。
彼等が並んで街に入ると、そこここから二人を懐かしんで人が集まってきた。
——お前らいつ戻ったんだ?
——久しぶりだな、棟梁から任された仕事は終わったのか
——とにかく無事で何よりッ
ジローとスズは、キツツキの屋敷に戻ろうと思ったのだが、懐かしむ人々にもまれて立ち往生してしまった。
「おうッ、でも話は後だ。まずは兄貴のところに戻らないとなッ」
ジローは、カッと啖呵を切り、人の波を抜けようとしたが、なかなか進めない。
やがて、騒ぎを聞きつけたのか、キツツキ本人がやって来てしまった。
「おい、なんの騒ぎだァ?」
キツツキは懐手にして覗き込むように波の中心を見つめた。
「あ、兄貴ッ」
「すみません。先に挨拶に行こうと思ったのですが、この有様で……」
スズが申し訳なさそうに頭を下げた。
「おう、戻ったかッ」
二人に気づいたキツツキは、顔いっぱいに喜色を溢れさせた。
「ただいま兄貴ッ」
「ジロー、スズ、龍人の護衛を終えて戻りました」
「あっははは、まずは無事でなにより」
キツツキは、上機嫌。サァ今宵は宴だッ、と着物の裾を翻した。気が早い。
軒下に吊るされた提灯が、彼の着物を鮮やかに照らした。
「紹介する奴もいる。早く行くぞッ」
キツツキは、笑い声を上げつつ、大股でどんどんと屋敷の方へ歩き出した。
「兄貴ッ、新入りが入ったのか!?」
「ジローッ、ほら言葉遣いッ」
「あ痛たッ」
ジローは不平そうな目をしつつ、頭をおさえた。
「まァ、戻ればわかるさ」
キツツキは上機嫌な足取りのまま、振り向かずに言った。
「あ、棟梁待って」
二人は、キツツキが現れたことで、二つに割れた人の波の中を通って追いかけた。
今宵も洛遼は煌々。
霧の如き明かりは揺らめくようにきらめき、峡谷全体を包み込み、また、行き交う人々も照らされた地面を踏み、笑う声。
キツツキは懐手、ゆらりと歩く。
洛遼の、提灯の灯は、灯籠の灯は、キツツキを追いかけるようにして輝いた。




