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討龍譚  作者: 二式山
   二章  峡谷都市 洛遼
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四四話 御山


「そーいえば、キツツキさん」


 ルゥラは、馬車の後ろから顔を出し、馬車と並んで歩くキツツキへ声をかけた。


「どうした?」

「キツツキさんは、ミヤマ様がどの龍王様なのかってわかりますか?」


 ルゥラは、きょとんと小首を傾げた。


 葦鳴生まれで、こっちの大陸のことも知っているキツツキなら、ミヤマの正体がわかるかも、と思ったのだ。


 意外な質問に、キツツキは一瞬戸惑いを見せ、


「そうだな……、俺も詳しくはわからん」


 と、残念そうに首を振ったが、


「……ただ、おそらくは水龍だろうよ」

 とも付け加えた。


「雷龍とかではないのですか?」

「違うな。葦鳴にはその御山がすむとされる所があるが、雷など滅多に鳴らない。それに、そこには大きな池がある。もし、御山とするならば、憶測だが——水なるだろうよ」


「なるほど」


 ルゥラは感心するように頷いた。


 葦鳴と大陸の二つを見ているだけに、政左衛門よりも見識がある。


 しかし、キツツキは感心するルゥラを見て、カッと笑った。


「ただ、龍王じゃないかもしれないぜ?」

「それは?」


 どう言う意味です?とルゥラは首を傾げた。


「世の中にゃあ、龍王と呼ばれぬ龍もいるからサ」

「それは龍王の眷属ではないんですか?」

 

 龍王の中には眷属を持つものもいる。

 例えば、キツツキに接触した龍人も龍の眷属であり、他には中型の属龍、矮龍など。


 これら眷属には、それぞれ個体名が存在する場合があり、中には凄まじく強大な力を持つものもいる。

 

 それのことではないのですか、とルゥラはキツツキにきいてみたが、キツツキは彼の頭を撫でながら、違うといった。


「たとえば「シン」という龍がいるがな、これは(みずち)と呼ばれる」


 キツツキは咳払いを一つした。


「この龍は、霧に隠れ、幻を見せる。龍の眷属といえば、親玉の近くにあるものだが、こいつは魔族領の中にある霧の森に棲むという、単体で存在する龍とよく聞くわな」


「キツツキさんは、そのシンを見たことがあるんですか?」


「そもそもその霧の森すら行ったことがないな。ただ、まあ、少し前までは中央諸国いたようだから、わりかし噂は聞くぜ」


 ルゥラはキツツキの話に聞き入っている。

 

「確か……、勇者に棲む場所を追われた、だったな」


「勇者パーティーと戦ったんですか!?」

 

 勇者パーティーは、ルゥラの国でも知らぬ者はいないほどの英雄である。


「おう、お前も英雄豪傑が好きか」

 

 あれは英雄だろう、俺は好きだ、とキツツキは訊いた。

 その問いに、ルゥラはこっくりと頷いた。


 すると、キツツキは機嫌良くルゥラの背を叩き、

 

 「やはり男はパッと爆けなければナァ」


「はいッ。でも、勇者パーティーと「シン」という龍が戦っていたなんて初めて知りました」


「まァ、向こうの話だから、仕方ネーよ」


「ただ、もしかしたら、シンも同じようにミヤマさまも龍王さまじゃないかも、ということですよね」


「応ッ」


 ガタンッ、と馬車が小石に躓いた。


「まァ、当分は地龍と虹龍が世のお題目だろうがな」


 と、キツツキは大欠伸をした。


 世の動乱にはあまり興味がない様子。


 実際、あの女龍人に二人付けたり、封龍石を探したりしたのは、龍薙の動向への関心からではなく、単に彼の義侠の心からであった。


「単羲ッ、少し寝る」

「はい」


 キツツキは眠くなったのか、馬車に飛び乗ると、適当な空間を見つけて横になった。


 木の葉と共に風がそよぎ、依然馬車の後ろから顔を出していたルゥラの髪を靡かせた。


 そのうち木の葉の一枚が、ルゥラの髪に乗った。

 ルゥラは、馬車の中へ頭を引っ込めると、パッと頭を払って木の葉を落とした。


 洛遼までは、まだ距離がある。


 やがて、ルゥラも馬車の揺れに身を任せて、眠りについた。





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