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討龍譚  作者: 二式山
   二章  峡谷都市 洛遼
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四三話 解散

 

 結局のところ、叔珊の誘いにキツツキはのらなかった。

 ただ、始めの会談で言った通り、以前と同じく物資などの支援だけは行う。


 キツツキ一行は、洛遼へ帰り、不知火たち葦鳴組は広陽に留まる。

 ただ、本国への連絡の為、上桂敬二郎と他数名は霓の使節と共に葦鳴へと帰還する。


 ルゥラ達は、来た時と同じく、馬車に乗り、帰路につく。


 帰り際、不知火と叔珊が見送りをしてくれた。


 緑の葉が、辺りを流れ、花もきらめく中、

「一度、葦鳴へ帰ったらどうだ」

 と、不知火がいった。


「あの一件で鬼が恐れられたとはいえ、もう何十年も昔の話だ。それに鬼といえば立槻(たてつき)の防人もいる。都に入るなり槍を突きつけられることはないだろう」


 不知火は、もし帰るのであれば本国にいる知己に便宜をはかるよう一筆書こう、ともいった。


 だが、その誘いに、キツツキは軽く息を吐くように笑い、


「いいや、遠慮しておこう。今は憂うべきことが多い」


 と、遠い目をし、たしかに久方ぶりに葦鳴の風景を見たいとも思うが、とも呟いた。


「世の騒擾は魔族の他にも蟠っていやがるからな」

「……そうか」

「だが、こうして旧縁にめぐりあえた。それだけでも仕合せだろウて」


 キツツキは、カッと爆けるように笑った。


「ああ、そうだな」


 不知火も微笑った。


 ふと、二羽の鳥が頭上を通り過ぎた。

 戯れ合う声か、喧嘩の声か、二羽は交差するように飛び去っていく。


「ルゥラ、早く乗れ」

「え、あ、はい」


 鳥を眺めていたら章に注意された。


「それじゃあ、不知火、叔珊、しばしの別れよ」

「応ゥ、達者でな」

「ああ、また会えることを望む」


 鞭の音が鳴り、馬車がゆるりと進み始めた。


「少年、励めよッ」


 少し進んだのち、叔珊は声を張り上げ、ルゥラへゆっくり大手を振った。

 その時、風が吹き、彼の服がなびいて、その佇まいは大筆で描かれた一枚の絵画のように勇壮であった。


「みなさんもお元気でッ!」


 ルゥラも、馬車の後ろから身体を乗り出し、左右へ大きく手を振った。


 不知火も、声は発さなかったが、腕を組みつつもわずかに微笑した。

 


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