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討龍譚  作者: 二式山
   二章  峡谷都市 洛遼
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二八話 言語


 この世に宗教は幾つもある。


 そのうち、人間のほとんどに信仰されているのが、セントレージアの国教にもなっている聖上教である。

 唯一神エンラースを崇める一神教であり、教義は主に博愛や清廉など。


 四天騎士団は、その聖上教の神話に登場する、最上位に属する四体の天使の名が元になっていた。


 セントレージアに本営を置く聖メウロリード騎士団もその一つ。

 残る三つは、魔族領を超えた先の遥か西方、中央諸国という人間の国家群に点在している。


 これら騎士団は、領土を持たず、いずれかの国家の領地を、間借りしている状況である。

 ただし、国家には属しておらず、あくまで純宗教的な組織として存在している。


 その性格は、普段は貧民救済などの奉仕活動だが、ひとたび戦争になれば、矛をとり、協力な武装集団となる。


 しかし、その標的は人間以外の異種族のみであり、人間同士の戦争には不介入を貫いている。


 それは、聖上教が一切妥協のない人間至上主義であり、苛烈なほどに異種族排斥を謳っているからであった。

 その為か、聖上教を信奉する国々では、人間の奴隷は禁止されているものの、異種族の奴隷は認めている所が多い。


 四天騎士団の他にも、宗教的騎士団は存在するが、一番高名であるのは四天騎士団である。


 その理由として、最上位の天使の名を冠すること、そして「神式」という一部聖職者の他、四天騎士団員しか扱えない魔法の存在があった。


 この「神式」はエンラースから授けられるものといわれ、神授の儀式を受けることによって扱うことができるようになる。


 これら騎士団の存在により、西方にて中央諸国という、広大な人間の勢力圏を維持することができていた。


 一方、東方諸国では、魔族の侵攻に対し、聖メウロリード騎士団は諸国へ援軍を出したのだが、魔族の度重なる攻撃により消耗を強いられ、現在、東方諸国最南端にあるセントレージア一国が残るのみである。


 現状、聖メウロリード騎士団は、定員五千から九百にまで減っており、そのほとんどが本営のある王都から離れ、レッドモスに隣接するランレントという城塞都市に駐屯している。


 ルゥラの街にも、騎士団の小部隊が来たことがあり、実家の二階の窓からその姿を眺めていたことがある。


「結構ひどい状況らしいです」


 ルゥラは、少し不安そうにいった。


「聖メウロリード騎士団といえば、魔族に対しての希望といわれていたのですが……そこまで」


 ミシウも、かの騎士団がここまで被害を被っているとは思わなかったようだ。


 たとえ、一人一人が「神式」という強大な魔法を扱えようとも、物量には敵わない。


 魔族は十万二十万という大軍を次々と出してくるのだ。


「でも、去年は勝ったんですよッ」

 と、ルゥラは表情を明るくさせた。


 事実、昨年に魔族とセントレージアの間で大規模な会戦があり、セントレージアが魔族に大規模な損害を与えて勝利した。


 ただ、この会戦で騎士団の団長は戦死、国軍も相当な被害を受けた。


 騎士団員も、残存九百名のうち、半分以上はどこかしら負傷している。


「————、————ッ」


 サクラが何か言った。


 ミシウがそれに返答しているが、どうやら蚊帳の外に置かれたのが気に入らなかったらしい。


 ルゥラは、葦鳴の言葉で言い合う二人をみている。


 セントレージアの言葉とは違って、葦鳴の言葉は明確に発音するよう。

 

「あの……、僕にもその、アシナリの言葉を教えてくれませんか?」


 ルゥラは知りたいと思った。


 それに、ミシウを介さずともサクラや宋蒙とも話せるようになりたかった。


 ミシウは、唐突なルゥラの頼みに、笑顔で頷いてくれた。


「わかりました。あなたが帰るまで、できる限り教えましょう」


「ありがとうございます……ッ」


 ルゥラはぺこり、頭を下げた。


 葦鳴の言葉がわかれば、新しい世界が見えるような気がした。

 




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