二十五話 再会
廊下には縁甲板、周りを囲むものは襖か障子、部屋は畳。
ルゥラにとって、見るものすべてが新しい。
二階、三階と上がり、廊下を少し進むと、ある一つの部屋の襖を、章がバンッと勢いよく開け放った。
「棟梁ッ」
「おう、章、ミシウ。……ルゥラ、来たか!」
部屋の奥、一段高い上座。
キツツキは、あぐらをかき、そこに座っていた。
彼は、横に妙齢の女性を侍らせ、手に在る盃へ、酌をさせていた。
ルゥラの姿を認めると、盃を傾け一息、嬉しそうに、呵呵と笑った。
「久しいな、ルゥラッ」
「は、はいッ」
半年ぶりの再会に、ルゥラも嬉しそう。
「あっはははっ、今日は宴だなッ。英、準備をしておけッ」
「はーい、了解ですッ」
英は、わかったと手を上げると、ダダダッ、と宴の準備のため、部屋を出て行った。
英が出て行った後、キツツキはルゥラの方へ視線を戻し、
「待っていた。どうだ、俺の街は」
と、身を乗り出すように、身体を前へ傾けた。
「はい、この世のものじゃないみたいで……、すごいです」
「そうかそうか。そりゃ嬉しいな。……それで、お前の家ではどうだ、良く過ごせているか」
「はい」
ルゥラは頷いた。
遭難の後、母に隣街より遠くは行っていけない、と遠出させてもらえなかったが、災難はなかった。
隣街より遠くに来るのは、あの時以来、二度目。
ルゥラは、そのこともあり、若干はしゃいでいる。
「なによりだ」
キツツキは優しい笑みをした。
「どうする、日が暮れるまで、まだ時間はある。その間、街でも見てまわるか」
「うんッ!」
ルゥラの目はきらきら光った。
好奇心が湧き出て来て、こっくり、深々と頷いた。
わくわく、心は踊る。
「よしッ——」
と、ルゥラの様子を見たキツツキは、勢いよく立ち上がった。
「俺が案内しよう。ミシウ、章、後は頼む」
「「はい」」
キツツキは懐手に歩く。
「ルゥラ、行くぞッ」
そのまま、ルゥラを連れ部屋を出ようとしたところで、
「あなたッ」
ぴしゃりと打つような声が響いた。
声を上げたのは、キツツキのそばに侍っていた妙齢の女性。
彼女は念をおすように、
「相手は子供ですからね。あまり無茶はしないように」
「おうッ、わかってらァ」
キツツキは信頼のある目を向け、快闊に笑った。
彼は再び脚を動かし、ルゥラと共に部屋を出た。
先程も歩いた廊下を進み、共に階段を下りる。
ルゥラは、トントンと階段を下りつつ、
(あの人誰だろう)
と、キツツキのそばにいた女性のことを思い浮かべていた。
あの女性が誰なのか、気になった。
子供らしい、好奇心から出た疑問である。
しかし、誰なのかとキツツキに直接言うのは気が引けた。
「ルゥラ、あいつは俺の妻だ」
だが、キツツキから言ってきた。
「歳が離れているとおもうだろう」
「………」
ルゥラは、どう答えて良いかわからず無言。
「歳が離れているのは事実だが、俺の方が歳上なんだよなぁ」
「そうなんですか?」
正直、見た目だけでは、キツツキとあの女性は、母親と子供くらいの開きがあるように見える。
「ああ、俺が葦鳴から連れてきたからな」
キツツキは感慨深そう。
「あの時はまだ年端もいかない小娘だった」
彼の目は、遠くを見つめた。
「俺の感覚じゃあ、ここに来てほんの少し。でもあいつにとっては、長い時間なのだろうよ」
「はい」
ルゥラは、真面目に聞いている。
そんなルゥラに、キツツキは軽く笑みをこぼした。
「ルゥラ、お前は良い子だな」
と、不意にルゥラを抱き上げた。
「うわッ、あ、あの……ッ」
当然、ルゥラは驚き。
「あの、恥ずかしいです」
「呵呵ッ、お前はまだ抱えられる年齢だろうさ」
ルゥラは赤面、恥ずかしがって、降ろすようキツツキに言ったが、彼は聞く耳持たず。
そのまま、玄関を出て外へ。
キツツキはいつになく上機嫌。
「さあ、この街の隅から隅まで案内してやろう」




