十話 目的地への道中
いよいよ、フーウェードが近づいてきた。
ルゥラ達一行は、ファルファイドに一週間滞在したのち、リーリズという街を通過した。
リーリズの次が、目的地フーウェードである。
そして、リリーズを発ってすぐ、フーウェードへの道筋、冷たい朝日が差し込む中。
ルゥラは馭者台の上。
微風に髪が靡いている。
身体も髪につられて、揺ら揺ら。
フーウェードには、今日の夕方頃に着く予定だ。
ところで、ファルファイド、リーリズ、フーウェード、全て街をつくった冒険者の名が元になっている。
はるか昔、レッドモスが未開拓の頃、かの森は魔物の森とも恐れられ、人の手には負えない魔物が多く棲息する、人跡未踏の地であった。
しかし数百年前、ある冒険者パーティーが、僅か数年の内に、それら魔物をことごとく討伐してみせたのだ。
彼等は、魔物の討伐後、森の中に幾つか人の寄るべき拠点をつくった。
それが、ファルファイドにリーリズ、フーウェードであり、他にも彼等がつくったとされる拠点が、幾つか森の中に点在する。
その後、そのパーティーはレッドモスを離れ、さまざまな土地へ赴き、その土地々々で数多もの武功を挙げた。
挙句には、はるか西方の土地で、白蛇と呼ばれる、神と比肩されるほどの悪蛇を討ち取ったという。
そのパーティーの名は、世に喧伝されて久しい。
ルゥラも、その功績云々はともかく、名前だけは以前より知っていた。
「……勇者パーティー」
ルゥラは、ぽつりとその名前を呟いた。
史上、最も有名な冒険者パーティーである。
彼等の冒険譚は童話から叙事詩にいたるまで厖大である。
「うん、そして、ファルファイドもリーリズも、目的地であるフーウェードもそのパーティーにいた人の名前……が元になってるみたい」
と、答えたのはイレネでは無い。フードを被った彼女、ミリアである。
ルゥラは道中、彼女に頼み、レッドモスの詳しい歴史などを講釈してもらっていた。
もちろん、魔物が出れば講釈は中断となるが。
「と、レッドモスについて話せることは大体話したけど……他に聞きたいことはある?」
「……ねぇ」
ミリアはルゥラにきいたのだが、返事は意外にも背後からきた。
「イレネ?」
と、ミリアが振り返ると、膨れっ面をしたイレネが、そこに立っていた。
「私もルゥくんとおしゃべりしたいィ!」
イレネは腕をぶんぶん振って抗議の意を示した。
子供ではあるまいに。
ミリアもルゥラも苦笑するばかり。
「なら、話も一段落しましたから……、交代しますか?」
「する!」
イレネは嬉々と大声をあげた。
「……ですので、ごめんなさい。他の話はまた後で、になってしまうけど」
ミリアは頭を下げた。
彼女がレッドモスの話をしている時、ルゥラはすごく楽しそうに聴いていた。
まだ聞きたいこともあっただろう。
「うん、だいじょうぶです。いろいろ話してくれてありがとうございました」
ルゥラは、ぺこりと頭を下げた。
事実もっと話を聞いていたかったが、そう我を通すような性格はしていない。
ルゥラは、イレネのことを姉のように思っているようだが、どうにも彼のほうが、彼女よりはるかに大人だとおもう。




