瓦−礫
僕たちは、空には逃げ場がない。
翼がないから。
空襲の音が響く。
戦争をしているから。
空から爆弾が落ちてくる。
空。
空。
空。
空が、恐怖をもたらす。朝も夜も。
真っ赤に咲いた炎。鳴り響く音。騒ぎ。
ここは大きな実験場だ。
広い広い箱庭。
地下の迷路が僕たちが安心して過ごせる場所だ。
寝る時はいつも地下に行く。
地下は複雑で僕でも時々迷ってしまうほどだ。
地下星人……僕たちの生存戦略だ。地下は暗くて優しい。
天は破壊をもたらして、大地は優しさを与えてくれる。
僕たちの世界はとても狭くて、地球という生存圏のほんの片隅にいる。
僕たちは武器を取るけど、世界の秩序は岩盤のように固い。
武器はほんの少し敵を掠めるだけ。
無意味なことだ。高揚だけを与える貧相な劇。
地下を育てる。
地下を育てる。
僕たちは地下に進んでいく。
下に。
下に。
下に。
地獄に救いを求めるように。
蜘蛛の糸は嘘なんだ。
天は救ってくれない。
空は残酷なんだ。
魂は空には行かない。僕たちは土の中で生まれ、土に還る。
僕たちは、なんで、土地に縛られているのだろう。
空は自由らしい。
自由は僕らの境界を破って、ひしゃげる。
太陽は痛くて熱気は焦げ臭い。
僕は、掘った。
掘ることが生産的だった。
「君はどこから来たんだい」
僕がぶち壊した土塊の向こうに、地下都市があった。
「地底人?」
「ううん、ここは、地獄だよ。迷い込んだんだね」
「地獄は平和そうだね」
「うん、地上よりはね」