突然無口な幼馴染に押し倒された件(仮)
前からこんな百合が描きたかったんだ。
あと、もっと上手く書きたい。
悩みはない。人の愛に飢えている訳でもない。だからといって、昔の精神的な傷が癒えている訳でもない。友達との友好関係が悪化したわけでも、良好になったわけでもない。重責も背負わないし、大人からの圧力がかかるわけでもない。私はただ、この現代社会が生み出したモラトリアムの狭間でのうのうと、荒んだ精神世界を生きている。
……序盤から変にカッコつけようとしてごめんなさい。全然キまりませんでした。
どうも陰キャです。陰キャにして大人になりたくないとか社会の重責を背負いたくないとか”モラトリアム”って検索したら速攻でてきそうな典型的に思春期をある意味謳歌する生徒社会で突出しないように注意し生きる不甲斐ない女子高生(16)です。つまり陰キャ。模範的かつ典型的な陰キャ。つまりは図書館の隅で小説読みながら休み時間を過ごし、教室でも絶対に声を発したりもせず誰とも話さず、放課後は密々とを同志とトークを展開する陰キャ。
「長い。つまりが多い。そしてその陰キャ像は独断と偏見による空想の産物。私は違う」
…ひどい言われようじゃないですか。同志よオブラートに包んでいただきたい。あとこれは同士のせいなのだけど…
「…あなたは鈍感で、人の気持ちに疎い罪な女。私の気持ちにいい加減気が付くべき」
そして、私は同志では無い。と無い胸を張る同志。
…同志、人はそれをオブラートを剥がすと言うんだけど、知ってる?というかその狂気じみた…いや、気のせいじゃなければ恍惚として、少し頬を赤く染めたその顔はちょっと心臓に悪い。
「貴女が悪い。嫌なら普段から私の言う事を素直に聞くべき」
まあ、それは良いよ?同士の頼みだし。…その代わり、もう辞めない?これ…ちょっと、私も恥ずかしいんだけど…
「だめ」
「へ?」
「だめ♡」
気付いただろうか。いや、嫌でも気が付く。
何故、語尾に♡マークが付くのか。
…何故、図書館の隅で彼女ーー深山暦ーーに私、守野社はマウントポジションを取られているのか。しかも結構強引に。
さっきから、それは怒涛の勢いで言葉を紡いでる私だけど…いや、流石に持たない。同志もこのポジションを止める気配が無い。
手首も押さえつけられ、体の自由も効かない。
…何より、彼女の表情があまりに妖美で、抵抗する気になれない。
もう、このままでも…
…いや、いやいやいや。
……これ、結構拙くない?
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彼女…守野社は、私の幼馴染だった。
物理的、地理的な要素もあり、必然的に私と社は一緒だった。
家族愛…的な物は初めからあった。
彼女とは家族同然の関係だったし、お互いに認めて、受け入れてた。と、私は思っている。
…この感情が「恋心」に変わったのは、多分、私が虐められた時。
私と社は、幼稚園には行かず、そういう同年代の子が集まる場所は、小学校が初めてだった。
そこで虐められた時、私は理解に苦しんだ。
訳が分からなかった。
聞いたら「お前だけ喋り方が変だ」って、そう男子が言った。
私は自分の中じゃ、それこそ人一倍言葉を紡ぐけど、実際に、言葉にして考えや感情を紡ぐのは苦手だった。
唯一友達だった社も、それを気にしていなかったから、その時、初めて自分が「他の子と違う」と気が付いた。
私は無自覚な口下手で、無口で、コミュニケーションが苦手だった。
不安だったし、怖かった。
自分はそうは思わないのに、自分が理解できない「私」が怖かった。
だから、社と距離を取った。
クラスのみんなが私を除け者にした様に、いや、それ以上に。
私を大事にしてくれて、そして、私が最も心の支えにしていた社に嫌われるのが、怖かった。
そうなったら、私の縋る物がなくなってしまうから。
当然、私は唯一の友達だった社とも距離が出来、本格的にクラスから孤立した。
辛かった。
多分この時、「孤独」が想像以上に辛くて怖い物だと、私は知った。
そして、2次元にのめり込んだ。
誰も私を否定しない。
誰も私を拒否しない。
2次元は文字通り虚像で、それが私の支えだった。
社がいた穴を、空いてしまった空洞を、2次元で塞ごうとした。
学校でも、ひっそりとラノベを読むようになったし、図書館に籠ったり、教室の隅でじっとして過ごしていた。
全部が、灰色に見えた。
そして、自習中、私はいつもの様に虐められている。
机の中に、ぐっしょりと濡れた雑巾が詰められ、教科書も水浸し。
助けは、求めなかった。
本当は求めたかったのかもしれない。でも、社を拒絶したのは私で、今更頼るのは、何か違う気がした。
社以外に、助けを求められる程の知り合いがいるわけでも、無かった。
教室に、嘲笑い声が響く。小さな声の筈なのに、それが私に重く響いた。
疲れていた。
精神的にも肉体的にも、他の事ができないくらいには、限界だった。
覚束ない足で、図書室に向かう。
目を、見開いた。
「…暦、ちゃん」
社が、何故か、普段私が座る席の、その隣に居た。
嬉しかった。
同時に、恐怖が湧き上がる。
社にまで虐められたら。
見捨てられたら。
拒否されたら。
全てが混ざって、恐怖になった。
そんな私を、社は抱き締めた。
何をされたのか。分からなかった。
そんな私を見て、何を思ったのか。
社は、こう呟いた。
「ごめんね。私、暦ちゃんの事、今まで助けられなかった。暦ちゃんに嫌われたんじゃないかって、怖かった。…でもね、暦ちゃん、泣いてて……えっと…助けなきゃって」
「嫌ってなんて…」
震えた声で、社が続けた。
「ねえ、暦ちゃん。私、暦ちゃんの事、すごい大事で、えっと、だから…力になりたいし…」
「…でも、私、社を突き放して」
くすりと、社が笑う。
可笑しい事を言ってしまったのか、と怖くなるが、その優しい笑顔で、社が言った。
「でもね、私は暦ちゃんの側に居たいの。それに、私は今、此処に居るんだよ?だったらもう、それで良いじゃん!」
社が、私を抱きしめる力を強める。
お互い、泣いてたんじゃ無いだろうか。
…あの時の社の笑顔が、私の感情の始まりだと思う。
「社」
「ん?何何?」
「名前、暦で良い」
「へ?」
「暦って、言って」
「…わかった!じゃあ、これからもよろしくね?暦」
「っ…うん、よろしく。社」
いじめは、その後自然消滅的に形を顰めた。
そこから、私の感情が増すのは時間の問題だった。
…だって、社が優しすぎる。私の事も理解しすぎて、こんなの、ずるいと思う。
暦の事、もっと理解したい!とか言って、私のオタ活に参加して、私の趣味に付き合ってくれた。あの時は、すごく嬉しかった。
私の趣味を理解してもらえるのか、すごく不安だったから。
杞憂だったけど。
問題があるとしたら、社が今まで「暦」って呼んでくれてたのに、何故か「同志」って言う様になった事くらい。
あの時の証が一つ消えた様で、すごく嫌だったけど、何度言っても直してくれない。
そして、高校。
私は鈍感な社にめげずに愛を伝えようとしていた。
どんな感じか?
朝は、私がお弁当を作って、寝室で寝ている社を起こす。
一緒に朝ごはんも食べてる。
毎日手を繋いだり腕を組んで登校。
授業中は社と解らない所を補い合って、昼休みは二人で弁当を食べ、私は社に食べさせたりもしている。
…何度か告白もしたけど、likeだと思われてる。まあ、同性だし、思い違いはしょうがない。
と言うわけで、私はまず行動で示そうと思っているのである。
そして、今日も私は所用を終え、社の所に戻る。
そこには、私じゃない人と楽しげに話す社がいた。
私は、そこに割り込む。
「社、弁当。行こう」
「えっ?ああ、うん、そうだね!ごめんね、また後で」
早い話、嫉妬。
私だけの社が。
私への微笑みが、笑顔が、言葉が、想いが、時間が。全てが誰かに盗られていく。そう思うだけで私の心は痛んだ。純粋に嫌だった。羨ましいし、もっとその時間を私に割いて欲しかった。
最近は、こればかり。
嫉妬して、愛が重くなる。
それなのに、口下手な私の口は、碌な言葉も吐き出さない。
そして、数日前。
社が私に相談を持ち掛けてきた。
頼られた。
それだけで、私の心は天に登りそうだった。が、話を聞いて寒気がした。
告白された、と社は言う。
理解したくなかった。
なぜ、いつ、誰に。
どうして。どうしてどうしてどうして。
告白?なんで。私の社に手を出すなんて。嫌だ。可笑しい。そんなはずない。私の社が。私の。私のなのに。
心が掻き乱される。
そして、名も知らぬ誰かへの憎悪が、悍ましいほど湧き出る。
…気持ちはわかる。社はどんどん可愛くなっているし、優しいし、魅力的。
ただ、私以外にも社を想う人がいる事を、初めて知った。
社は、告白は断ったらしい。
でも、その出来事は、私を突き動かすに十分足るものだった。
そして、告白してきた男が再び接触してきた今日。
私はもう、限界だった。
焦りと、想いが膨れ上がって、決壊した。
押し倒していた。
図書館の隅で、社の腰に跨って。
抵抗したから、手首も押さえつけた。
呆然としながらも、意味のない抵抗を続ける彼女は、本当に、本当に可愛かった。
バランスの取れた体、愛らしい瞳。柔らかく、茶髪の髪。綺麗な足。気が動転し、訳のわからない事を言い続ける彼女は、どうしようも無く可愛かった。
多分、無表情な私でも、今は言い表せない表情をしてると想う。
どうにかしたくなるような魅力的な彼女と、雰囲気と、どうにか出来てしまうこの状況。
こうならない方がおかしい。
だけど、話のキリが良さそうなところで、私も切り出す。
「長い。つまりが多い。そしてその陰キャ像は独断と偏見による空想の産物。私は違う」
「ムー、と、というか同志はオブラートに包む事を覚えるべきだよ!」
…また。
また、社は私を「同志」って呼んだ。
私は暦って呼んでほしいって、お願いしたのに。
暦って、呼んでほしいだけなのに。
そんな私の想いを言葉にした。
「…あなたは鈍感で、人の気持ちに疎い罪な女。私の気持ちにいい加減気が付くべき」
そして続ける。
「貴女が悪い。嫌なら普段から私の言う事を素直に聞くべき」
「んーと、暦って呼んで?っていうやつ?」
「そう」
「それくらい別に良いけど…その、とりあえずこれもうやめない?ちょっと私も恥ずかしいっていうか…ね?」
え?
なんでやめなきゃいけないの?
社をこんなに近くで感じられるのに。
思わず、拒否していた。
「だめ」
社が、驚く。
多分、私も社に言われて逆らったことはない。
逆らう必要なんて、どこにもなかったから。
でも、今は違う。
退く必要なんてない。
だから、今の私の想いを込めて、こう言った。
「だめ♡」
そして、こう続ける。
「決めた。今日から、社は私と暮らすべき。その方が確実、変な虫も付かない。私が好きだと言っているのに誑かす社が悪い。毎日、社に私の愛を伝える。毎日一緒に過ごして、風呂も、寝る時も、一緒。朝も、昼も、夜も。ご飯も私の作った物しか食べたらだめ。私が、社の体を作る。もう私以外と話さないで。私の想いだけ受ければ良い。大丈夫。幸せにする。私は、社を愛してるから」
「え、えーと?冗談?同士が冗談てちょっと珍しいね?」
「本気」
「え」
「…」
「で…でも、私たち、女で、それに、友達で」
ムッとする。
私は何回も、好きだって、言ったのに。
Likeじゃなくて、loveだって、社が気が付かないから。
「も…もしかして、あれって、恋愛的な『好き』だったの」
「そう、って言った」
「そ…でも、でも私も女で」
私は、その口を指で遮る。
「だって、好きになったから。しょうがない」
赤面した社は、それはもう、本当に可愛くて、色んな意味で抱きたくなる。何より、赤面した理由が私だと思うたび、それが私の想いを助長する。
本当に、この行動が正しかったのか。
私の想いは正しく社に伝わったのか。
やっぱり、私にはわからない。
でも、長年の付き合い。
困惑して、迷って、でも少し喜色を浮かべる社を見て、私も笑みを浮かべる。
『堕とせそう』そんな気がした。
覆いかぶさるように、私は社を抱きしめる。
耳元で、一言呟いた。
「社、愛してるからね」
お読み頂きありがとうございました。
初心者且つ稚拙な駄文製造機の作者ですが、もし宜しければ☆やコメントで評価とか、アドバイスください。
著者が怪奇的な踊りを披露します。