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後悔してももう遅いのは俺! ループした悪役かませ炎使いが真面目に生きたら勇者覚醒イベント潰してしまって世界はピンチ?  作者: アニッキーブラッザー
第一部 今度こそ真面目に

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第9話 お前ならできる!

 魔法学園入学試験日。

 ようするに後輩が入学してくるわけだが、この日は結構憂鬱だな。

 俺にとってはトラウマ物の恥をかいた日でもあるしな。


「お、おお、これはこれはハビリ様、おはようございます」

「ハビリ様も新入生の様子を伺いに?」


 今日は入学試験日なので授業は休み。


「まーな」


 だから生徒で学園内に居るのは試験のサポート生徒、部活動の関係、そしてそれ以外は俺のようにこれから入ってくる後輩たちの品定め。

 特に新入生の中には俺と同じように貴族の中でも上の階級だったり、中には他国の王族関係者だっているから、入学する前に様子を見て、後々のコネクション作りとか色々な目的がある。

 で、俺は前回は「イイ女いねーかなー?」みたいなノリだったが、今回はちゃんと「勇者の様子を見る」という目的で来ている。


「うわ……スポイルド家の彼よ……」

「しっ、目を合わせて目を付けられると犯されるわよ?」

「ほんと嫌よね……あんな綺麗なお姉さんも奴隷として引き連れて……最低……」

「ちょっと、声……」


 聞こえてるよ。

 俺の評判は二回目の人生でも相変わらず。

 顔色窺うようにおべんちゃら言ってくる奴らや、なるべく目を付けられないようにと距離を取る連中。

 まぁ、俺がループしてきたころには、既に学園内での評価が色々と手遅れ状態だったからな。

 とはいえ、勇者たちやこれから入ってくる後輩たちは別。

 せーぜい、前回のようなことにならないようにしないとな……


(ふむ……何だかんだで今日を迎えてしまったな……未だに小生も処女のまま……だが、いかに坊ちゃまが真人間になられたとはいえ、既に学園での評判は低い様子。そして……今日ここから最低になるわけだが……果たしてどうなるのだ? ただ、どうなったとしても、坊ちゃまには小生がおります。小生の乳と尻で存分に甘えて差し上げますぞ? ……と、言いたいところだが……真人間になられた坊ちゃまは果たして今日はどのような行動に……?)


 これから出会う奴が俺の人生やら、ソードやマギナの人生を大きく変える。

 

(今日、あやつらが……『ネメス』たちが……気を付けるべきは、あやつらの口車に乗らぬこと。小生は生涯奴隷。なんだったらマギナは差し出していい)


 脅威の新入生。

 奴らは『奇跡の黄金世代』と呼ばれて、学生の身ながらこれから多くの伝説やらを作り、帝国の、そして世界の希望となる。

 いずれはソードもマギナもそこに加わる。

 俺は最初そのことを何も知らずにあいつに喧嘩売り、で、結構痛めつけたんだがその後であいつは眠れる力を覚醒させて……


 ま、今だからこそ分かる。俺がどれだけみっともねえ奴だったかってことをな。


 だけどこのループした世界ではもうそんなことはしねえ。


 俺は心を入れ替え、努力し、そして……



「では、入学試験……と言いたいところだが、まずは試験前に受付でのチェックを行う。これが通らねばその時点で失格となることを心得よ!」


 

 いずれにせよ、学園の校門前で早速試験……というか、恒例の足切りが始まった。

 

「受付でのチェックは至極簡単。こちらに『マナの剣』というものがある。見ての通り、この状態では刀身のないただの剣の柄だけだ。だが、ある一定の魔力量の者がこれに魔力を込めると……!」


 試験官の教師が早速デモンストレーション。刀身のない柄に魔力を込めて魔力の剣を生み出すこと。

 これは一定の魔力量と魔力のコントロールができなければならない。

 ここは大陸全土より選りすぐられたエリートのみが在籍できる最高峰の魔法学園。

 つまりこの程度のことを事前にできない奴らは門前払いということだ。

 前回、この時点で俺は平民だった『あいつ』に難癖付けて喧嘩売って決闘して、あいつはそれで試験を受けられなくなったんだが、その時の戦いぶりが認められて特別合格という超法規的措置だった。

 だが、今回は俺は余計なことをしないので、自力で――――



「受験番号303番、ネメス・コワイカー……失格!」


「……ん?」



 そのとき、聞き覚えのある名前……


(うぇ!? ちょ、ネメス殿!? え?! な、何をやって……)


 ん? よく見ると誰かが試験官の前で蹲って……


「そんな……うぅ……僕の夢が……うう……! お願いです、もう一回やらせてください!」

「ダメです。規則ですので、どうぞお帰り下さい」

「そんな、僕は……僕はどうしても勇者にならないと、勇者になりたいんです! どうかチャンスを!」

「やかましいですね、誰か連れ出しなさい」

「そ、そんな、やだ、僕は勇者になるんだーーーー!」


 何か落ちた奴が揉めてるみたいだけど……アレ? うそ!


「はっ!? え? なに?」


 アレ……勇者だよな! 

 奇跡の黄金世代の筆頭で、これからいくつもの伝説を作り出す、『神童勇者・ネメス』だよな?!

 なんであいつが失格してんの!?


(ばかな、何故ネメス殿が失格に……ん? いや、待て……そもそも前回は―――――あっ! そうか、前回は坊ちゃまが……)


 そういえば、あいつと決闘したとき、最初は俺の圧勝モードだった……だけどあいつは追い詰められ、追い詰められ、そこから眠れる力みたいのを覚醒させ……あっ!

 ちょっと待て、今回俺はそれをやらなかったから……じゃあ、あいつはこの時点、覚醒前の時点では試験どころか受付すらパスできないレベル? いや、確かに最初は弱かったけど、これほどダメだった?


「へ、へへ、みっともなく喚いてますねぇ、あいつ。格好も平民みたいですけど、ほんと嫌ですよねえ~、ハビリ様」


 ちょっと待て……じゃあ、このままあいつが学園に入学できないとなると……ちょっと待て!

 これから先、学園に襲い掛かる脅威とか、魔王軍のアレとかアレの襲来とか、あいつが居ないと……それはまずい!



「そこおおおおおおお! ちょっと待てえええええ! そいつは失格させるんじゃねぇええ、うおおおおおおお!」


「ふぁ!? 坊ちゃま!?」


「ハビリ様!?」



 ヤバい! もしこのまま勇者が居なくなったら、俺の所為で本来救われるはずの命とかも何もかもが全部分からなくなっちまう。

 その未来を再び守るためにも、何としてもあの勇者の失格を取り消さなければ!



「うおおおお、異議ありいいィ! その失格異議ありだあぁあああああ!」



 校門前には受験生たちが列を作り、失格になった奴らは無理やり追い出されている。

 その中に、涙を流してジタバタしている、未来の勇者であるネメスも居る中、俺はとにかく喚いて駆け込んだ。


「……ハビリ・スポイルド……何か用かね?」


 俺が駆け付けたことに一瞬眉を顰める教員。

 そして涙目のネメスは何やら俺を見て……


「あっ……この人は……昨日……」


 呆然としながらブツブツと何か言っている。

 だが、とにかく今重要なのはここでネメスを失格させないこと。

 何故ならネメスが居なくなると、魔王軍との戦い以前に、今後学園に押し寄せる色々なアレとかコレとかで生徒が大げさでなく生徒たちが死ぬかもしれない。

 それを避けるためにも前回のようにこいつを覚醒させなければ。

 つまり、前回と同じように……



「えっと……わはははははー、っと、そこのお前は平民かーここはお前みたいな平民のクズが入るような場所じゃないんだ、お前みたいな世間知らずの田舎者には試験を受ける資格もないんだー(棒読)」



 こんな感じだったはず。そして前回はこれに反論……


「うっ!? うぅ……そんな……」


 あれぇ? なんか前回と違ってネメスは心底ショックを受けたみたいな顔でガックリと項垂れて……あれ?


「あ~……だから彼はもう失格で今からお帰りいただくわけだが……」

「……え?」


 と、教員が呟いて……って、マジか!? 失格になった後と、失格前とではここまで流れが違う?


「僕では……資格すらない……う、そんな……」


 って、本当にこのまま失格で諦める流れに!? いやいや、それはまずいぞ!


「ば、バカ野郎、男なら落ち込んでねえで、むしろ何くそと思って足掻いてみろぉぉ! 資格も丸も三角も関係あるか!」

「……ふぇ?」


 気づけば、俺は項垂れるネメスの胸倉つかんで起き上がらせていた。


「……ん? お、おい、ハビリ……何を? え、どっちなんだ?」

 

 うん、俺の意味不明な言動にネメスも教員も、他の受験生や教員たちもキョトン顔だよ。


「いいか、それでももし資格が必要だっていうなら、勇者になりたいという心意気さえあれば、それでいいじゃねえか! なぁ、先生よぉ!」

「……いや……試験だからそうはならんが……」

「ぐぬぬぬぬ、この頭でっかちがぁ!」


 俺も何してるか分からねえけど……



「と、とにかくだ、う、受付失格がどうした! 勇者ってのはなぁ、そういう試験とかそういう枠組みに捉われない八方破りな奴がなるもんだろうが! 諦めるんじゃねえ! お前ならできる! お前の力を俺に見せてみろ!」


「……あ……」


「夢を諦めるな、捨てるな、立ち止まるんじゃねえッ! 人類はお前の目覚めを待ってんだぞ!」


「夢を……諦める……な……」


「お前は人の希望に、世界の希望に、人類の希望になるんだろうが! たとえ教師が否定しようとも、何度でも俺は言ってやる! お前ならできる!」


「ッ!? 僕、なら……」



 っていうか、何で俺が勇者を励ましてんだよ。俺を底辺に叩き落して、さらにはいずれはソードやマギナを寝取る……いや、幸せにしてもらうんだけども……



「さぁ、あ~~~もう、決闘だ! さぁ、俺に向かってこい! 俺にお前の力を見せてみろ!」


「え、あいや、で、でも……え? な、なんでいきなり決闘なんですか?!」

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