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後悔してももう遅いのは俺! ループした悪役かませ炎使いが真面目に生きたら勇者覚醒イベント潰してしまって世界はピンチ?  作者: アニッキーブラッザー
第二章 ズレすぎた歴史

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第36話 事故で子供に

 結局チオは今日も来なかった。そして、なんやかんやでヴァブミィとも話すキッカケが見つからなかった。

 クラスどころか学年も違うし、ネメスがうるさいし、チオのこともあったから、なかなか一年のクラスには行きにくいからな。

 だが、あまりノンビリしている時間もない。

 多少強引でも何とか接点を――――


「御主人様。本日の夕食にございます」

「ん、おお……」

 

 と、そこで夕食が運ばれ……あれ?


「そういえば、トワレは?」

「はい、トワレ姫とイチクノはたまたま政務で宮殿に。そしてソードには色々と買い出しをお願い(脅迫)しておりまして、帰りは遅くなります」

「え? そ、そうなのか?」

「はい、ですので、御主人様だけで御先にどうぞ」


 これは珍しい。

 そういえば、ソードは帰宅直後にマギナと何か話して物凄い苦虫を潰したような顔をしていた理由はそれか。

 とはいえ、それに大人しく従い、俺から離れるというのも珍しいな。


「そっか、二人か」

「はい、二人です♥」


 なんだ? 今、マギナの言葉に物凄い寒気のような……気のせいだよな?


「どうぞ、御主人様。遠慮なさらずガブっといってください。今日は美味しいお肉が取れたので、ショータ焼きという東洋の料理風にしてみました」

「そ、そうか」


 いずれにせよ、腹も減ってるし、肉もメチャクチャうまそうだから……


「がぶっ、お、おお、うめえ!」

「っし!」

「……え?」

「あ、いえいえ、御主人様に喜んでいただけて恐悦至極にございます」

 

 マギナの料理は何でもウマい。本当に元お姫様かと思う。それに比べてトワレは……だが、なんだ?

 俺が肉に噛みついた瞬間、マギナが拳を握って「よっしゃ」って感じで……ッ!?



「ぐう!? うっ、ぐうう!? な、なんだ!?」


「あらー、ごしゅじんさまーどうしたのですかー?」


 

 か、身体が熱い!? なんだ!? 急に心臓がバクバクして、体中が溶けていくみたいに熱い!?



「ぐっ、う、うう? な、何だ? 何が……まさか、今の料理?」

「まぁ、ごしゅじんさまーどうしたというのですかー、あー、いったいどうすればー」


 そしてマギナが慌てているようで何も慌てている様子が無い。

 まさかマギナが一服盛ったのか? 毒? まさか、俺を殺そうと?

 

「お♥ おお♥ うふふふふふ♥」

「うがぁあああああああああ!?」

「あぁ、御主人様ぁ~しっかり~落ち着いてください~、たぶんもうそろそろ落ち着いてくるはずですから」


 ぐ、ダメだ……立ち上がれない……手足の感覚が……


「お、おおおおおおおおおおおおおおおお!!!! 御主人様ぁぁああ♥」


 いや、少しずつ激しい鼓動が収まってきた?

 何だか物凄い疲れたような、全身の汗が噴き出したかのようなグッタリ感というか……


「うふ♥ うふふふふふ♥ 大丈夫ですかァ~御主人様ぁ♥」

「う、ま、マギナ……え!?」

「あら~、たいへんです~御主人様の身体がぁ~」


 な、なんだ? 倒れ込んだ俺を起こしたマギナ……そのマギナの身体が……で、でかい!? 俺よりもでかい!? 嘘だろ!?

 なんで?

 マギナが巨大化……いや、テーブルも、椅子も……部屋の天井もデカく……え?



「あ~、しまったですー、わたしとしたことがー、本日の料理にウッカリ、幼児化薬を入れてしまいましたー」


「え?!」


「御主人様がぁ~ちいさくなってしまいましたー」


「ッ!?」


 

 よ、幼児化!? 幼児化の薬だと!?


「な、何を……ばか、な、……ッ!?」


 俺はゾッとして慌てて身体を起こし、近くにあった窓ガラスに自分を写した。

 そこには、まさに小さい頃の俺……服もブカブカで……ばかな……


「そ、そんな、な、何が……ッ!」


 というか、この薬! 俺が前回、エロい事に使えそうなものをマギナに色々と発明させて完成した薬?

 俺はこの薬をマギナとソードに飲ませて、小さくなったロリっ娘状態となった二人を……って、そうじゃなくて!


「マ、マギナ、どど、どうして俺にそんなものを!」


 なんてこった。前回俺がマギナに命じて作らせたものを、この色々と歴史が変わってしまった世界では、マギナが自発的に作った?

 しかも、俺が飲んでしまったっていうのかよ!


「申し訳ありません、御主人様。ついうっかり。てへぺろ」

「なっっ!? んなわけあるかー! じぶんでいれたんだろー!」

「はうぅう!? こ、声変わりする前の御主人様ぁ、ぶほっ、た、たまりません……鼻血と涎が……」


 俺が怒ると、マギナはむしろ興奮したように笑みを浮かべて鼻を抑えやがった。


「大丈夫です、御主人様。この薬は数時間で元に戻るでしょう」


 それは知ってる。前回二人に飲ませて分かってたことだし。

 

「しかし、ああ~、事故とはいえ御主人様が小さくなってしまいました~きっと身体だけでなく心も子供になってしまったことでしょう~心細くて不安で仕方ありませんよね~?」


 それはない。小さくなるのは身体だけ。

 だというのに、な、なんか、マギナの目が血走り、獲物を求める肉食獣のように……



「御主人様、今日は、今日は! おねえちゃんといっしょにお風呂にはいってベッドで、えっちして、大人のいけないおべんきょうタイムウウウウ!」


「ぎゃああああああああああ!?」



 マギナが急にメイド服のリボンを解いて下着姿になって飛び掛かってきた。

 俺は咄嗟に回避。



「も、もう、しんぼうたまりませんんんん! はあはあはあはあ、御主人様ぁ、情操教育はメイドの仕事ぉおおおお!」


「や、やめろぉ、ふく、ぬがすなぁ!」


「サイズの合ってない服はいりませんよねぇ、はい、ぬぎぬぎ……はぅ!」


 

 だが、マギナが腕を伸ばして俺を捕まえる。

 やばい、リーチの差があり過ぎて、しかも俺もいつもの感じで動けない。

 そして興奮したマギナが俺のブカブカの服を剥いで、パンツまで……あっ……


「ぬぉおおおお! 御主人様の、つ、つ、つんつるりん!」


 こ、こ、ここも子供の頃に戻ってる……な、なんてこった……


「はあはあはあはあ♥♥♥ い、い、……いただきます」

「させるかぁあああああああああ!」


 でも、こんな屈辱受け入れられるかぁ!


「ふれいみんぐもーど!」

「あっ!」


 炎化してスルっとマギナの拘束から逃げる。


「逃がしませんよぉ、御主人様ぁ! この屋敷にはあらゆる魔法結界が――――」


 何とか逃げ――――



「ぬおおお、マギナぁぁああ、小生を買い物に行かせたかと思えば、屋敷に結界を張るとはどういうことだぁ! 一秒でも早く戻ってきた小生にこの仕打ちは!」


「も~。私たちまで入りにくかったよぉ~。せっかく仕事を早く終わらせたのに」


「破らせてもらったでござる、ニンニン」



 と、そこで救世主。


「な、は、早すぎます。これほど早くに戻ってくるとは想定外です!」

「みんな~」


 なんとあいつらが予定よりも早く帰ってきた。

 マギナもこれは想定外だったようだ。

 よし、これで助か―――



「「「ぶっぼッ!!!!!」」」



 三人が急に鼻血を噴き出し……


「ま、マギナ、こ、この、ぼ、坊ちゃまの面影というかアルバムで見たまんまの坊ちゃまは……」

「む、昔の小っちゃいころのハビリだ……」

「め、めんこいでござる」


 あれ? 何か三人も目を血走らせて……



「はぁ~、仕方ありませんねぇ。ええ、御主人様です。事故で幼児化薬を飲んでしまいまして」


「「「おおおおお!」」」



 あれ? しかも笑みを浮かべて……


「坊ちゃまぁ、体も小さくなられて甘えたいお年頃でしょう! 小生の乳房をおおお!」

「あ、ずるい! ねえ、ハビリ~、お姉ちゃんと一緒にお風呂入ろうよ~!」

「……めんこい……はあはあ」


 あ、これ、全員……



「やだあああああ!」


「「「「逃げる姿もかわいい! 待ってええええええええ!」」」」



 ぎゃあああ、なんか来たあああああ!?


「お待ちなさい、あの御主人様は私が面倒を見ます!」

「たわけぇ、小生が可愛がる!」

「だーめ、私の!」

「ドロン」


 あっ、でも、なんか四人が争い始めた……よし、今がチャンス!



「くそ、なんか、捕まったら食べられるかも! でも、どこに隠れ……そうだ、ソードたちが結界を破ったみたいだし、一旦屋敷の外に!」



 とりあえず、今は捕まる前に逃げよう。

 俺は安全を求めて屋敷の外へ飛び出した。


「はあ、はあ……とにかく体が戻るまでどこかに隠れ……って、しまったぁ! ふ、服がぁ!」


 慌ててて、服を脱がされたことにも気づいてなかった。

 まずい、こんな裸で……いくら子供でも騒ぎになるんじゃ……




「はぅぅうううううううううううううんッッッッッ!!!!!!!!」



「え?」




 だが、その時だった。



「ど……どうしたんでちゅか? かわいい、ボク。そ、そんな格好で……」



 街に飛び出して最初に遭遇したのは、奇跡の黄金世代で『一番まとも』なあの女だった。



「とにかく、そんな格好でウロウロしたらだめでちゅよ? 危ない人に連れていかれたり変ないたずらされちゃいまちゅよ? はあはあはあはあ、お姉ちゃんと、すぐ、そこの、教会に、入りまちょう! だいじょうぶ、おねえちゃん、ぜんぜん、ぜんぜん、ぜんぜん、あやしくもあぶなくもないひとでちゅよ?」


 

 おぉ、流石は聖母。

 よく分からん全裸の子供を放置するなんてことはしない様子。


「うん、ありがとう!」

「はうぅうううう!」


 とにかく、助かった。















 この時まではそう思っていた。


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