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記録1 クサハミムシのスパイスソテー その4

それでは完成いたしましたクサハミムシのスパイスソテーの試食と参りたいと思いまーす!


「「うおおおおおおおおお」」


すごいです!

歓声が鳴り止まないです!

流石料理研究家(自称)の私マイシィ・ストレプトです!


──って、だから自称ってつけるのやめてください。

私はちゃんとこうやってお料理の研究をしているのですからねっ!


さあ、気を取り直して頂きたいと思います。

まず実食してくださるのは、こちらの方です。

マイシィ親衛隊の一番隊隊長さんです!


「ご紹介にあずk」


はーいでは早速食べていただきましょうねー。

どうぞ、お召し上がれ☆


「いやあ、昔ミツスイムシのソテーと言いながら、まったくソテーされていない生の昆虫を食べさせられたことを思い出しますな。あの頃と比べて……ッこんなにもッ! 成長なさるなんて、私は感動のあまりッ……」


あのう、いいからとっとと食べやがれでございますよ。


「ハッ! 失礼いたしました、マイシィ様。では、いただきます。パリッもきゅっもきゅっぷちゅる、もしゃもしゃ……こ、これは! うまい、うまいですぞ! クサハミムシのほのかに香る草の風味と、この香辛料の香りが絶妙にミックスされて、何かワンランク上の物を食べているような気分になります。また、この付け合せのヤビルもいいですね。ネラのようなものかと思いきや、独特の風味というか後味みたいなのがあって、これもまた香辛料と合います。素晴らしいです!」


はい、ありがとうございます。

一番隊隊長のサ……えっと、隊長さんでした!

みんな拍手!


パチパチパチ


では、続いてはこの方。

私達4年生の担任教師であるムスイ先生です!

よろしくおねがいします!


「あ、あの……本当に食べなきゃダメ?」


当たり前じゃないですか、これは魔動車を出してくれたお礼なのですから。

どうぞ遠慮なさらずお召し上がりくださいね!


「いや、あの」


あれ?

先生ってば感動のあまり涙を流していらっしゃいますね。

そこまで想っていただけるなんて、研究家冥利に尽きるというものですよ。

ささ、どうぞお食べください、先生!


早く食べないと先生が語学教師の既婚者子持ち男性のアレをアレしているところや先生のソレに相手の方のアレをアレしているところがバッチリと写った写真を全世界に公開するように我が親友に頼んじゃいますよいいんですかいいんですねはーやーくーしーなーいーとー。


「分かった、分かったから! もう……ぐすっ……食べればいいんでじょだべればあぁぁ……ううっ」


そんなに泣くほど感動して……先生、私嬉しい。


「あの子と違って悪意なくそういうこと言うのが恐ろしいわ、マイシィちゃんは。さて、すーーーはーーーすーーーはーーい、いただきます」


さて、お味は?


「ぷちちッモキュモキュぷちゃるぷりゅっめちゃァァ……ごくん……ハァ……ハァ……」


美味しそうな咀嚼音が響いてましたね。もう音だけで美味しいのがビンビンに伝わってきますよ!

感想はどのようなものでしょうか。


「まず、思ったよりも美味しいわね。虫と言われて意識をすると確かにちょっとしたエグみとか、草の後味がわかるんだけど、気にしないとわからないレベルね。よくここまで臭みを昇華させたわね。お父様の香辛料のチョイスが良かったのかしら。あと、個人的なアドバイスなんだけど、臭みを消すのにお酒が有効な場合もあるから試してみて。あなたはまだ子供だからお酒を扱う事はできないけど、将来的な選択肢として持っておくといいわ。今回はどちらかというと臭みを消すというよりは香辛料で上書きするといった意味合いが強すぎると思うのね。だから、また別の方向性でクサハミムシ料理を展開してくれるのを期待しているわ。ごちそうさま」

「先生、意外とガチな感じですね」


私、私は感動しております。

まさかここまで丁寧に味わっていただいた上にアドバイスまで貰えるなんて思っても見ませんでしたよ。

先生、ぜひ次回以降も、私の料理を召し上がってくださいね。


「ええ、ぜひと──って次回以降!? 私、毎回呼ばれるってこと!? いやあああ、もうゲテモノはいやあああ。食レポでマジになっちゃう自分もいやあああ! ちょっと昆虫料理にハマりかけてる自分がいやあああ」


というわけで、ここからは全員での試食タイムです!


◇◇ 試食タイム ◇◇


「この味付けならばぁぁぁキノコを付け合わせても良さそうですねェ」

「ボクはからいのが苦手なので、トゥガラシを少なめで、からいのよりかおりの強いのを増やしたほうが好きだと思いました」

「今日は時間の関係で出来なかったが、糞抜きはしたほうがいいと思うな。どうしても頭の中で“糞も食べてる”と意識してしまい、味わえなかったからな」


というわけで色々な意見が出てまいりましたね。むしゃ

どれも素直で貴重な感想ですのでくちゃ、ひとつひとつを大切にもしゃもしゃ、しないとですね。ごくん


私の研究はこれからもどんどん続けていきたいと思いますパリッので、皆さま今後ともぐもぐよろひふおへはいひまふ!


「マイシィちゃん、本当に貴族のご令嬢かいい加減怪しくなってくるくらいお行儀が悪いからね」


んんっ!

ぷはっ!

だってだってエメ君。

クサハミムシが美味しすぎるのが良くないんだよ。

こんなに素敵な生き物を皆食べないなんてこの世の中がおかしすぎると思うの。


身の回りにもっと目を向けていけば、素敵な食材は色々なところに転がってるとみんな気が付くべきね。

そうすれば、きっと来たるべき食糧危機も乗り切る事ができるはずよ。


私はマイシィ。

国王派貴族の中核、ストレプト家の長女にして美食研究家、マイシィ・ストレプトよ。

私の夢は、食を通じてこの国の民を救う事。

誰も飢餓に苦しむことがないように、導く事。

これが私の使命なのよ!


「なるほど。……で、本音は?」

「虫も美味しいから喰いなさいよね。むしゃむしゃ」


おあとがよろしいようで。

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