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記録X ハドロス領の食糧事情について

 魔法国の東にハドロス領という小領がある。北に盆地、西に塩湖、東に火山、南は海に面している豊かな場所である。

 その中心から少し西に外れた場所にマイア地区という集落がある。温暖な気候ゆえに農業が盛んであるが、かつてはこれといった特産品はなかった。また、ひとたび天候が乱れれば食糧不足に悩まされることも多い場所であった。


 あった、と過去形で表現されるのは、現在は状況が異なるからである。現在のハドロス領マイア地区は薬草栽培で成功を収めており、これを他地区へ販売することによって利を得ているため、飢饉の際には食料を輸入することが十分に可能になった。

 それだけではない。食糧不足に陥った時、このマイア地区の人々の食性の広さが力を発揮する。

 彼らは野草からカエル、ネズミなどの小動物、果てには昆虫なども採集し、食べてしまうという異色の文化がある。「生物であれば全てが食べ物だ」と言わんばかりの彼らの奇特な行動には、長年風土史を研究しているこの私でも目を見張るものがある。


 ところが、興味深いことにこれらの文化が生まれたのはごく最近のことだという。

 たった一人の少女が始めた取り組みが、この地区の人々の食習慣を変え、飢餓に極端に強いという地域性を獲得したのだそうだ。


 その少女の名前は、マイシィ・ストレプト。


 そう、我が国においてかつて四大貴族と呼ばれていたストレプト家の令嬢である。彼女は幼少の頃、当時激化しつつあった派閥抗争から疎開する目的でマイア地区で生活しており、その際に食糧事情の厳しさに気が付いた彼女はとある取り組みを開始した。

 その取り組みというのが、様々な生物を食材として研究し、新聞の記事に投稿するという活動だ。

 彼女のレポートは少し、いや、かなり風変りであり、おおよそ貴族令嬢の書いたものとは思えないくらいのハチャメチャっぷりで人気を博したそうだ。


 今、私の手元には当時の資料がある。

 “貴族令嬢の最強美食研究レポ”──何をもって最強なのだか分からないが、とにかく私はこの資料を読むことにしよう。

 果たして何が飛び出してくるのやら。

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