暗い部屋
この部屋に入ってどれくらいになるだろうか……
ここまでくるのに狭い箱に入れられ、せまいトラックに積み込まれ、
今、この部屋の中にいる。
時間もわからない。何秒何分もしくは何時間?
ずいぶん前にこの部屋の隣にいたやつが部屋から出されたそうだ。
しかし、部屋から出たやつは体の中のものを取り出され、そのまま捨てられてしまうという話だ。
誰かが外でそういっていた。
「誰か助けてくれ!」
そう叫びたくても声は出ない。
ただ、いつか来るであろうこの暗い部屋から出る時を待つだけ……また時が過ぎる。
どこかで誰かが部屋から出されたようだ。だが助けたくても私にはどうすることもできない。
ただ、待つだけ……。
その時を待つ間私はいろいろなことを考えていた。
いつまで待たなければいけないのか?
助かる見込みはないのか?この先私がどうなるのか?考えても考えても答えが出ない。
思い返せば私は何をしてきたのだろう。いや、私は本当に何もしていなかった。
だったらここにいることが私の存在意義なのではないだろうか?
ついに私にもその時が来たようだ。
もう恐れはしない。
……さようなら。
「やっと見つけたよー」
「本当?どこどこ?」
子供たちが楽しそうに話している。
「こっちだよー」
「あぁ、本当だ」
「ちょうど飲みたかったんだよねこのジュース」
子供は自動販売機からジュースを買い、中のものを飲み干し、あとに残った缶はゴミ箱に……。
いかがでしたでしょうか。
今回は「人の」ではなく
「物の」視点から書いてみました。
身近な日常にも物語はあるものです。
あなたも一度探してみてはいかがでしょうか。