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召喚聖女は愛を知らない  作者: 板東
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使用人

設定が出来たので書き殴りました。駄文ですが読んでくださると嬉しいです。


現代日本、東京、佐倉家。旧華族の家系で、現在も政治に影響を及ぼすほどの権力を持っており、その名を聞かぬ日はない。

当主の佐倉総司は財政界の重鎮の椅子を持ち、息子の洋介は有名大学で政界への基礎を学び、娘の美央はモデルとして活躍。まさに煌びやかな理想の家系。

そんな佐倉家で、私、佐倉 花は使用人として生きている。



***

「花、今日も相変わらず最悪の顔ね。よく私に見せられた物だわ」

「……申し訳ございません。未央様」


深々と腰を折って謝罪する。美央様は私の醜い顔がお嫌いだから、決して顔を上げてはならない。私の生きるための術。


「その醜い顔の火傷、いい加減治ったかしら?毎日毎日ご苦労なことねぇ、病院に行けば良いのに」

「……」


手に力が入り、服に皺が寄る。妾の子として生まれ、認知されなかった私には戸籍がない。それどころか佐倉の家から出してもらったこともないのに、どうやって医者に行けというのだろう。


私は顔に大きな火傷を負って生まれてきた。母は深く悲しみ、責任から首を吊った。そして父の総司は醜い娘を佐倉の正しい血として認めず、世間に知れ渡らないように屋敷に閉じ込めた。それが使用人としての花の始まり。

もし私が美しい顔だったら、母は首を吊らずに今も一緒に暮らせて、総司様も娘と認めて下さったのだろうか。写真入れに収められた母の写真は、眩暈がするほど美しいのに、どうして私はこんなに醜く産まれてしまったのだろうか……


「そういえば、お父様が貴女のこと呼んでるわよ」

「……旦那様が、ですか?」

「ええ、珍しいこともあるものね」

「……かしこまりました。失礼致します」


***


「旦那様、花です。失礼致します」

「ああ、そこに座れ」


言われた通りに襖を開け、総司様と向かい合わせに座る。

いつも仏頂面な皺の目立つ顔が、今日はにこやかに笑っていて酷く恐ろしかった。


「花、お前に戸籍をやろうと思っている」

「……!本当ですか!?」


総司様の信じられないお言葉に思わず声が大きくなってしまった。しまった、と慌てて口を塞ぐと「構わない」とお許しの言葉を頂く。


「今まで苦労しただろう。今からでも役所に行くから、まともな服に着替えて来なさい」

「……っ、はい!」


嬉しくて涙が出そうだった。総司様の前だから我慢していたけれど、部屋に帰ったら溢れてしまうかもしれない。

やっと、やっと子供と認めてもらえる……!病院だって、学校だって行けるようになる。そう思うと居ても立っても居られなかった。すぐに自分の部屋に行き、唯一持っていた新品のワンピースに袖を通す。今まで美央様のご気分を損ねるからと着られなかったワンピースを、今日は堂々と着ても良い、その喜びで一杯だった。今までにない晴れやかな気分で屋敷を出ると、そこには総司様ではなく、息子の洋介様が立っていた。

今さっきまで浮き立っていた気持ちが一瞬で地獄のように冷める。

洋介様はテレビでこそ次世代の政治家候補として取り上げられているが、屋敷では使用人への暴言が目立つ粗暴な方で、特に私が気に入らないのか、暴言は勿論、殴る蹴るの暴行が会うたびに行われていたから。


「……チッ、遅いぞ出来損ない」

「…洋介様、おはようございます。失礼ですが、総司様をお見かけにはなりませんでしたか?」

「戸籍の件だろ?お前如きにお父様の手を煩わせるわけには行かないからな。俺が代理で手続きに行く」

「そ、そうなのですね……失礼いたしました」


信じられないことに、洋介様は殴るどころか近寄ってすら来なかった。いつもとは違う……本当に家族になれるんだ。そう思ったらまた泣きそうになってしまい、慌てて鼻を啜る。


「わかったならさっさと行くぞ愚図が」

「は、はい!」


…初めての屋敷の外、ついていくのに必死であんまり景色を楽しむことは出来なかったけれど。広い道路、赤の信号機。走ってくる大きい車はトラック。どれもテレビで見ただけで、実際に見るのは初めてだった。これからの人生、こんな素敵な体験が何度もできるなんて本当に幸せだ。

どんどん車の音が大きくなってくる。信号が青になり、一歩踏み出す。


「…本当に馬鹿なんだな」


 ドンッ!


「……え?」

「お前なんかが家族になるわけないだろ?残念だったな」

体が押されて浮く感覚。絶望と混乱で埋まる中、最後に見えたのは間近に迫るトラックと、心底楽しそうに笑う洋介様の顔だった。

不定期更新です。やる気が出れば続きます。

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