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第7話 『魔王』 その7

前回のあらすじ

里に戻った

 

 その日の夜。


「ふう〜……」


 僕はお湯に浸かり、今日の疲れを取っていた。


 あの後、ヒルデちゃんとはギルドの前で別れた。

 あんなことがあったから家まで送って行こうと思ったけど、本人が大丈夫と言っていたからたぶん大丈夫だろう。

 里の中は治安も良いしね。


 グリフともその場で別れ、林の方へと飛び去って行った。

 そこまでは別に問題じゃない。

 問題は――ソロモンだった。


 家へと帰る途中、ソロモンに話し掛けても彼女は何処か上の空だった。

 何か気になることでもあるのかと尋ねても、なんでもないと返すだけだった。

 いったいなんだったのだろう?


「……まあ、ソロモンもお年頃だしね。親に隠しておきたい秘密もあるか……」


 そう呟き、風呂から上がる。

 そして寝間着に着替え、リビングへと向かう。

 するとパジャマ姿のソロモンが、まだ寝ずにリビングのソファーに座っていた。

 いつもならもう寝ている時間だからか、うつらうつらと船を漕いでいた。


「ソロモン」


 肩を軽く叩いて起こすと、ソロモンは目を覚ます。


「うみゅ……パパ……」


 目をこすり、僕の顔を見上げる。


「眠いんなら、もう寝ればいいのに」

「うん……でもまだ、パパに言ってないことがあったから……」

「言ってないこと?」

「うん……パパ。お誕生日、おめでとう」


 聞き返すと、ソロモンがそう言ってくる。

 その言葉でようやく、今日が僕の誕生日だということを思い出した。


「それと……ごめんなさい」

「……? 何が?」


 謝られた理由が分からず、僕は首を傾げる。

 するとソロモンが、ぽつりぽつりと謝った理由を言う。


「その……パパへのプレゼントを用意してたんだけど……ぼくがあんなことになっちゃったから、プレゼントを失くしちゃって……」

「ああ、そんなこと……いいよ、気にしなくて」


 しょんぼりと項垂れるソロモンを慰めるように、僕はソロモンの頭を優しく撫でる。

 するとソロモンは、恐る恐るといった感じで見上げてくる。


「ホント?」

「ホントだよ。僕はね、ソロモン。ソロモンが元気でいてくれるだけで、たったそれだけで満足なんだ。だからプレゼントとかは気にしなくていいんだよ」

「でも……」


 それでもまだぐずるソロモンを、僕は抱き上げる。

 ソロモンも成長しているから、今はもう横抱きでしか持ち上げられない。


 そしてソロモンの顔を、間近で見つめる。

 目元や顔付きが、だんだんと姉さんに似てきていた。

 あと数年もすれば、姉さんと瓜二つレベルで似てくるだろう。


 その成長を間近で見守ることが出来るのを嬉しく思うと同時に、その成長を見守る機会を姉夫婦から奪ってしまったことが哀しくもある。


 そんな感情が顔に出てしまっていたのか、ソロモンが心配そうな眼差しを向けてくる。


「パパ?」

「……なんでもないよ。それより……ソロモンの成長をこうして見ていられることが、僕にとっての一番のプレゼントだから。ソロモンはずっと元気でいてくれ」


 そう言って、ソロモンの小さな身体を抱き締める。

 ソロモンも僕の首に両腕を回し、抱き着く。


「パパ……大好き」

「僕もだよ、ソロモン」


 そう返すと、すぅ……すぅ……と小さな寝息が聞こえてきた。

 どうやら、ソロモンは抱き着いたまま眠ってしまったらしい。


 僕は苦笑し、そのままソロモンを彼女の部屋まで運んでいく。

 そしてソロモンをベッドの上にそっと下ろして、毛布を掛けてあげる。

 頭を一撫でしてから、静かにソロモンの部屋から出ていく。


 ……どうか今夜ソロモンが見る夢が、良い夢でありますように。


 廊下の窓から見える星達に、そう願った―――。






次回辺りからちゃんとソロモン視点で物語が展開していきます。




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