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第6話 『魔王』 その6

前回のあらすじ

アジトを壊滅させた

 

 パパの言い付けを守ってグリフの背中で待っていると、三十分くらいしてパパが森の中から戻ってきた。

 行きの時にいた、身体中縄でぐるぐる巻きにされた人は何故かいなかったけど……そんなことはどうでもいい。

 パパが無事に戻ってきてくれたことが、何よりも嬉しかった。


「パパ!」


 だから思わず、グリフの背中から降りてパパの方へと走っていく。

 その勢いのままパパに抱き着くと、パパはしっかりとぼくの身体を受け止めてくれた。


「こ〜ら。ちゃんとグリフの背中で待ってろって言ったろう?」

「えへへ……ごめんなさ〜い」


 パパの本気ではないお叱りの言葉に、ぼくはニコニコ笑顔を浮かべながら謝る。

 するとパパは小さく溜め息を吐いて、ぼくの頭を優しく撫でてくる。


「さて……帰ろうか」


 パパはそう言ってぼくの頭から手を離すと、ぼくの手を引いてグリフの方へと歩いていった―――。




 ◇◇◇◇◇




 グリフに再び馬車を牽引させて、竜人の里へと戻ってきた。

 そしてソロモンとヒルデちゃんの二人を連れたまま、冒険者ギルドへと赴く。


 ちなみに里の中へは魔物を連れてくることは基本的に出来ないけど、ちゃんと従えているという証の首輪を装着させていれば里の中に入れることが出来る。

 だからグリフはいつも、里の外にある林に放し飼いにしていた。

 今回は馬車を牽引してもらっているから、首輪を装着させてから里の中へと入ってもらった。


 閑話休題。

 ギルドの建物の前で馬車を停め、グリフの背中からソロモンとヒルデちゃんを順番に降ろす。


「グリフはここで少し待っててくれ。ソロモンとヒルデちゃんは……僕と一緒に中に入ろうか」

「「は〜い!」」


 幼女二人は元気良く返事をして、僕の従魔は了承の意を示すような鳴き声を上げる。

 そして二人を伴って建物の中に入り、受付カウンターへと向かう。

 そこでほぼ僕の専属受付嬢のアビーに声を掛ける。


「アビー、ちょっといい?」

「あ……ダビデさんですか。少々お待ちください」


 何らかの書類を処理していたらしいアビーは机の上を軽く片付けると、再び僕の方に顔を向ける。


「お待たせしました。どうかなさった……おや?」


 するとアビーがカウンター越しに、ソロモンとヒルデちゃんの姿を捉える。

 二人共見知らぬ人を警戒するように、僕の身体を盾にする。

 そんな二人の行動を暖かい目で見守りつつ、アビーが尋ねてくる。


「そちらのお子さんはどうなさったんですか? 迷子……には見えませんし……ハッ! もしや……あまりの可愛さに誘か――」

「人聞きの悪いことを言わないでくれ。この子達は僕の……娘と、その友達だよ」


 姪、と言いかけて、僕は慌てて娘と言い直す。


 ソロモンにはまだ、本当の両親のことは話していない。

 成人したら伝えるつもりでいるけど……ソロモンに嫌われないかが唯一の懸念事項だった。

 だって――ソロモンから両親を奪ったのは、ほぼほぼ僕のせいだからだ。


 そんな思いを抱いているとは露知らず、アビーは僕の言葉に納得したように頷く。


「そうですか、ダビデさんの娘さんとその友人ですか。……でも何で今日に限って子供二人を連れて?」

「それはまあ、話すと色々と長くなるから結論だけ言うけど……受けてたクエスト、終わったよ」

「えっ!? もうですか!?」


 僕がそう告げると、アビーは過剰なほどに驚きを露にする。

 そんな彼女に構わず、僕は続ける。


「それと、いるかどうかわからないけど、人さらいの集団の死体の一部は表に停めてある馬車の中に積んである。後で確認しておいて欲しい」

「あ……はい! 畏まりました! 今すぐにでも!」

「それと、奴等のアジトを壊滅させたはいいけど、死体とかさらわれた子供達の保護とかはまだなんだ。だからこっちは僕個人が緊急クエストとして依頼するよ。報酬は、そうだなあ……今日限りだけど、この建物内での飲食代は全て僕の奢り、ってことで」

「「「な……何だって!?」」」


 僕の言葉を聞いていた冒険者達が、一斉に色めき立つ。

 僕は背後にいる同業者達を一瞥し、頷く。


「二言はないよ。聞いたならとっとと行った行った! 場所はこの里の北東にある森だよ! 目印があるからたぶん分かりやすいとは思う! ……あ、そうそう。もし喧嘩とかしたら、逆にソイツに飲食代全て請求するから、そのつもりで」

「「「うっす!! 協力して事に当たります!!」」」


 そう言うと、我先にと建物内にいた冒険者全員が出て行ってしまった。

 一応釘を刺しておいたから、みんなで協力して事に当たってくれるだろう。


 再びアビーの方を向き、軽く謝罪する。


「ごめん、勝手なことして」

「いえ、別に気にすることはありませんよ。緊急クエストの方は、後で依頼用紙をこちらで作成しておきますね。あと、報酬のお支払いは後日でも構いませんか?」

「うん、構わないよ」

「では後はこちらにお任せください」

「ああ、頼むね」


 深々とお辞儀をするアビーにそう言い、僕はソロモンとヒルデちゃんを連れて建物の外へと出た―――。






随分と気前のいいダビデ。

それと竜人の里にいる冒険者達は全員、ダビデの実力を知っているので彼の言うことはたいてい素直に聞いています。




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