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第5話 『魔王』 その5

前回のあらすじ

アジトに向かった

 

 縄で縛り付けたバルトに先を歩かせ、僕は仮契約をした魔物達を引き連れてアジトの方へと向かう。

 戦闘の邪魔になるから、バルトを縛っている縄の端は持っていない。


 その代わり、右手に剣を、左手に杖を持った我流でしかない変則二刀流スタイルで臨戦体勢を整える。


 ほとんどの魔物使いは近接戦闘が弱点で、魔法という中〜遠距離攻撃で戦うことが多い。

 その弱点を無くすために、僕は近接戦闘も出来るように鍛えていた。

 そして、近接戦闘も魔法戦闘も両方こなせるように試行錯誤して行き着いたのが、この変則二刀流というスタイルだった。


 閑話休題。

 森の中を進んでいくと、前方に人影が見えた。数は二人。

 ソイツらはバルトに気付くと、警戒心を露にせずに不用意に近付いてくる。


「おい、バルト。お前いったいどうし……」


 それが最後の言葉だった。

 二匹のワイルドウルフが疾風の如き速さでその二人に接近し、その喉元に噛み付く。

 二人はジタバタともがいていたけど、ワイルドウルフ達がおもいっきり喉元を噛み千切ったのがトドメとなったようで、そのまま力尽きた。


「さあ。とっととアジトまで案内しろ」


 杖で軽く小突くと、バルトは顔を恐怖に染めながら、借りてきたネコのような大人しさで案内を再開した―――。




 ◇◇◇◇◇




 アジトは一見すると、ただの一軒家のようだった。

 だけど、アジトの周囲には見張りらしき人影がある。


 このまま突入してもいいけど、念には念を入れたい。


「答えろ。アジトの構造は?」


 剣を向けながらそう尋ねると、バルトはおっかなびっくりに答える。


「へ……へへへへい! 俺達のアジトは見た目は一軒家ですが、地下室があります! そこに外国に売り払う子供達を――」

「そうか。案内ご苦労」


 そう言って、剣の横っ腹でバルトの頭をおもいっきり叩き、杖の先端で鳩尾を殴る。

 その攻撃を受けてバルトは意識を失い、地面へと倒れ伏す。


「さて……」


 僕は気を取り直してアジトの方を向く。

 そして――身体強化魔法で脚力を強化して、一気に森から出る。


 見張りが僕の接近に気付いたけど、もう遅い。

 僕の命令を受けた魔物達が一斉に見張り達に襲い掛かる。


 その間に僕はアジトの入口にたどり着き、その勢いのまま扉を蹴破って中に入る。

 中にも人はいて、突然現れた僕に浮き足立つ。


「だ……誰だキサマは!?」

「《フリーズバースト》!」


 答える代わりに、今は僕だけしか使い手のいない氷属性超級魔法を放つ。

 このまま全身氷漬けにして殺しても良かったけど、生け捕りなら追加報酬が得られるから呼吸だけは出来るようにして身動きを封じた。


「こ、の魔法は……まさかお前は……『魔王』!?」

「あ……僕の肩書きを知ってる人いたんだ」


 たまたま頭だけ氷漬けにされなかった、この中で一際厳つい顔の男がそう言う。

 まあ……その肩書きを知っていたからって、手加減とかするつもりは毛頭ないけど。


「答えろ。お前達が誘拐した子供達は何処にいる?」

「……テーブルの下にある隠し扉から行ける地下室にいる」


 辺りを見回すと、確かに男の言った通りテーブルの下に扉っぽいモノがあった。

 僕がさっき放った魔法の影響はそんなに受けていないらしく、氷漬いてなどはいなかった。


 そちらに近付き、テーブルをどかして扉を開ける。

 石造りの階段が地下へと伸びているけど、中が暗くて途中までしか見えなかった。


 仕方ないので、左手の杖をベルトに挟んで、暖炉の傍にあった薪に魔法で火を灯して松明たいまつ代わりにする。

 そうしてから、地下室へと足を踏み入れる。


 地下は薄暗く、僕の持つ松明以外の光源はない。

 松明で辺りを照らすと、檻に入った子供達を発見した。

 子供達は粗雑な服を着せられていて、僕を見るなり怯えた表情をする。

 よくよく見ると、捕らえられている子供達は全員女の子のようだった。


 彼女達を安心させるように口を開こうとしたその時、バタン! と地下室の扉が閉められる。

 そしてズルズルという音もして、おそらくソファーか何かで扉に蓋をしたのだろう。


 これで僕を閉じ込めることが出来たと思ったら――大間違いだ。


 僕は松明の火を消すと、右手の剣も鞘に納める。

 そして身体を屈めて、両手を地面に着ける。


「《フリーズバースト》!!」


 僕の目の前に巨大な氷柱が出現し、そのまま地下室の天井を突き破る。

 そして氷柱から氷の枝が伸び、地上にいた人間の心臓を穿つ。


 生け捕りにすることは失敗したけど、脅威の排除という点では成功だろう。

 そう思う僕の視線の先には、一軒家の床を貫いて聳え立つ、真っ赤な花を幾輪も咲かせた氷の大樹があった―――。






変則二刀流スタイルはダビデ発祥です。

今回はこのスタイルで戦うことなく片が付いてしまいましたが……。




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