表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/20

第2話 『魔王』 その2

前回のあらすじ

人さらいの集団の討伐へ

 

 ぼくはヒルデと一緒に、竜人の里の南側に広がる草原にやって来ていた。

 北大陸のほとんどは冬が長く夏が短いから、草木が生い茂る期間はとても短い。


 だけど、その短い期間に色とりどりの花が咲き誇るから、ぼくは夏が好きだった。


「それじゃあヒルデ。ちょっと手伝って」

「うん」


 ヒルデは笑顔で頷いて、彼女と一緒に花畑の中にしゃがみ込む。

 そして綺麗な色の花を集めて、花冠を作っていく。


 何で花冠を作っているかと言うと……今日がパパの誕生日だからだ。

 誕生日プレゼントを何にしたらいいかヒルデに聞いたところ、手作りの何かをプレゼントすれば? っていうアドバイスを受けて、それをやることにした。


 ヒルデと一緒花冠を作っていくけど……ぼくはちょっぴり不器用だから、なんか形が変になる。

 反対にヒルデは、綺麗な形の花冠になっていた。


「うぅ〜……ヒルデみたいに上手く出来ない〜」

「諦めないで、ソラちゃん。私が教えてあげるから、ね?」


 ヒルデはそう言うと、ぼくの作りかけの花冠を手に取って、形を整えていく。

 するとみるみる内に形が整っていって、まるで魔法でも見ているかのようだった。


「はい、ソラちゃん。私もアドバイスしてあげるから、最後まで作り上げよう?」

「うん……」


 ヒルデから花冠を受け取り、ぼくは頷く。

 すると……。


「お嬢ちゃん達。ちょっといいかい?」


 知らないオジサンが、笑顔でぼく達に声を掛けてきた。

 けれど、その表情が何でか気持ち悪かった。理由は分からない。


「……? はい、何ですか?」


 ヒルデは首を傾げ、立ち上がる。


「ああ。今からお嬢ちゃん達を――連れ去る」


 オジサンは気持ち悪い笑顔を引っ込めると、ヒルデのお腹をおもいっきり殴る。


「かはっ……!?」


 ヒルデはそう息を吐くと、ぐったりとする。

 その身体を、ヒルデを殴ったオジサンが受け止める。


「ヒルデっ!」


 ぼくがそう叫び立ち上がった瞬間、頭の後ろを誰かに殴られた。


「あ……」


 殴られた衝撃で、ぼくの意識はそこでプツンと途切れた―――。




 ◇◇◇◇◇




 冒険者ギルドの建物を出て、里の東側の出入口から里の外に出る。

 しばらく歩いて行き、ちょっとした林の前までやって来る。

 そしてピイイイィィィ……と、指笛を鳴らす。


 するとそれを合図にして、林の中から雪のように真っ白な体毛をしたグリフォンが飛び出してくる。

 グリフォンは遭遇したが最後、生きては帰れないほどに危険で強力な魔物だ。


 だけどその白いグリフォンは僕の前までやって来ると、その頭を僕の身体に擦り付けて甘えるような仕草をする。

 僕もお返しとばかりにグリフォンの頭を撫でると、グルグル……と気持ち良さそうに喉を鳴らす。


 この白いグリフォンは、僕が本契約している魔物だった。名前はグリフ。

 安直な名前だとは思うけど、命名したのは僕じゃなくてサーシャ姉さんだった。


 グリフは僕が十才、姉さんが十二才と幼かった頃、傷付いた幼体のグリフをたまたま見つけて拾って、そして育てた。

 グリフォンは普通金色の体毛だから、グリフが真っ白いことに当時はちょっとだけ疑問に思ったけど、すぐにどうでもよくなった。

 後で調べたことだけど、グリフはアルビノと呼ばれる個体らしかった。


 傷付いていたところを僕と姉さんに拾われ、怪我を治療したり餌を上げたりしている内に、グリフは僕達になついた。

 そして怪我が完全に治った後でも、グリフは野生には帰らずにそのまま僕達と一緒に暮らすことになった。


 さすがに拾ってから五年も経つとグリフも大きくなっていて、家の外でも飼うことが難しくなった。

 そこで、僕が成人して魔物使いとして冒険者登録したのをきっかけに、グリフと本契約を交わした。

 それからは、僕の頼れる相棒として世界中を一緒に旅してきた。


 グリフは助けられたことを覚えているようで、魔物使いではない姉さんにもなついていて、姉さんの命令もきちんと聞いていた。

 普通は本契約した魔物は、他の人の命令なんて聞くことはないけど……助けられた恩を忘れていないからか、それとも姉さんとの間にも絆が芽生えていたのか、はたまた両方か。

 とにかく、グリフは姉さんにもなついていた。


 そのせいなのかは分からないけど、姉さんの娘であるソロモンにも少しなついていた。

 たぶん匂いが似ているとか、そんな理由だろう。


 閑話休題。

 ひとしきり撫で回すと、僕はグリフの背中に跨がる。

 そして目的地の場所まで飛んでもらおうと指示を出そうとすると、グリフは南西の方角をジッ……と見つめている。


「……? どうした?」


 そう尋ねるけど、グリフは何の反応も示さない。

 グリフがこんなことをするのは、今回が初めてではなかった。

 だから……。


「……何かあるのか?」


 再びそう尋ねると、グリフは肯定するように低く唸り声を上げる。


 こういった場合、ほとんどグリフの野生の勘とも言うべきモノに従ってきた。

 それで何度か助かったこともあったから、僕はグリフのこの勘を無視することはとうに出来なかった。


 今回も何かあるに違いない。


「……グリフ、キミの勘に従おう。グリフの思うままに飛んでくれ」


 そう言うと、それに答えるようにグリフはいななく。

 そして翼を羽ばたかせ、グリフが見ていた方角へと飛翔して行った―――。






ちなみにダビデはちゃんとした(?)魔物使いです(本編のアルスやソラから目を逸らしながら)。




評価、ブックマークをしていただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ