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第13話 新しい家族 後編

前回のあらすじ

ヒルデを迎え入れた

 

 ベッド、机、椅子、クローゼットなどの生活に必要そうな物を買い込んで、露店が並んでいる通りを歩いていく。

 するとパパが、ふと足を止める。

 それに釣られて、ぼくとヒルデも足を止める。


 パパの視線の先には、串焼き屋さんがあった。

 そのお店の方から、なんだか美味しそうな匂いが漂ってくる。

 するとそれに釣られるように、ぼくとヒルデのお腹がくぅっと鳴る。


「うぅ……」

「あぅ……」


 ちょっと恥ずかしくなってヒルデと共にお腹を押さえながら俯くと、パパが笑い声を上げる。


「あはは……お昼を食べる前に、そこの露店で串焼きでも食べようか?」

「うん……」

「はい……」


 パパの言葉に、ぼくとヒルデは小さく返事をする。

 それを聞いて、パパはお店の方へと向かう。


「すみません。串焼きを三……いや、五本ください。二本は串から外してくれますか?」

「はいよ。ちょっと待っててくれ」


 お店の人はそう言って、品物を準備する。

 パパからお代を受け取って、串焼きを一本ずつ渡してくる。

 それをパパが受け取り、ヒルデ、ぼくの順に手渡してくる。


 パパも自分の分の串焼きを受け取って、串から外された物が入った紙袋も受け取る。

 何でそんなモノも頼んだのか首を傾げつつも、ぼくは串焼きに噛りつく。

 ジューシーな肉汁が溢れ、甘辛いタレが旨味を格段に引き立たせている。


 チラリとヒルデの方を見ると、彼女も美味しそうに串焼きを頬張っていた。


 パパの方に目を向けると、パパはとっとと自分の分を食べ終えており、空いた串に紙袋の中に入ったお肉を突き刺してグリフに食べさせていた。

 グリフはお肉を咥えると、何回か噛んだ後に飲み込む。

 グリフも美味しそうにお肉を食べていた。


 ……ぼくもグリフにお肉あげてみたいなぁ……。


「ソロモンとヒルデちゃんもグリフにお肉あげてみる?」


 するとぼくの視線に気付いたのか、パパがぼく達の方を振り向いてそう言ってくる。


「いいの?」

「うん。ほら、やってごらん」

「それじゃあ……」


 パパから串を受け取って、ソレに紙袋の中のお肉を突き刺す。

 ちなみに、ぼくの食べかけの串焼きは、パパが預かってくれていた。


 そしてお肉を突き刺した串をグリフの方に差し出すと、グリフはパクっとお肉を咥えた。

 そして何回か噛んでから飲み込むと、その頭をぼくの身体に擦り付けてきた。少しくすぐったい。


「あはは……グリフが『ありがとう』って言ってるよ。頭を撫でてやって」

「う、うん……」


 そう返事をして、串を持ってない方の手でグリフの頭を撫でる。

 するとグリフは、気持ち良さそうにクルクルと鳴いた。


「ソラちゃん! 私にもやらせて!」


 ウズウズとした様子で、ヒルデがそう言ってくる。

 そんな彼女に串を渡すと、彼女もグリフにお肉をあげる。

 それを食べ、グリフはぼくにしたようにヒルデの身体にも頭を擦り付ける。

 ヒルデはくすぐったそうにしながら、グリフの頭を撫でる。


 そしてぼくはヒルデと変わり番こに、グリフにお肉をあげていった―――。




 ◇◇◇◇◇




 その日の夜。

 浴室から、きゃっきゃと楽しげな声が微かにリビングやキッチンにまで届いてくる。

 今は、ソロモンとヒルデちゃんが仲良くお風呂に入っていた。

 そして僕は、キッチンで一人洗い物をしていた。


 孤児院から家に戻ってくるまでの間に、ヒルデちゃんの身の上話を聞かされた。

 ヒルデちゃんの両親は、彼女が三才の頃に事故で亡くなったらしい。

 それからイリスさんが院長を務めるあの孤児院に引き取られたようだけど、ヒルデちゃんは天涯孤独の身ではないらしい。


 なんでも、ヒルデちゃんには三つ上のお兄さんがいるようだった。

 そのお兄さんはと言うと、彼が十才の頃に孤児院を出て、クオーディナ連邦軍の幼年学校に入学したらしい。

 軍の幼年学校は全寮制でこの国の首都にあるから、里の中でその姿を見かけなかったことには納得出来る。


 それでも寂しいものは寂しいらしく、お兄さんとは手紙のやり取りをしているようだ。

 まあ……唯一の肉親が遠くに行ってしまったら、まだ幼いヒルデちゃんが寂しいと思うのも無理はない。


 ヒルデちゃんが寂しい思いをしなくて済むようにしなくちゃ、と思っていると、娘二人がお風呂から上がったようだった。

 ヒルデちゃんに必要な家具を買うついでに、二人に新しい服や寝間着も買ってあげた。


 ヒルデちゃんはフリフリのレースに彩られた、とても女の子らしい寝間着を着ていた。

 対してソロモンはホットパンツにタンクトップと、見ようによっては男の子っぽい寝間着だった。


 ボーイッシュと言えばそうだけど、なんだかなぁ……。

 ソロモンも女の子なんだから、もっと女の子らしい格好をしてもバチは当たらないと思う。

 と言うか、僕が見たい。切実に。


「ぼく達もう寝るね。おやすみなさい、パパ」

「おやすみなさい、ダビデさん」


 そんなことを思っていると、娘二人がそう言ってくる。


「ああ、おやすみ。ちゃんと歯を磨いてから寝るんだよ?」

「「は〜い!」」


 二人は元気よく返事をして、パタパタと洗面所の方へと向かって行った。


 それを見送って、僕は洗い物を済ませてエプロンをダイニングにある椅子の背もたれに掛ける。

 そして着替えを取ってくるために、自室へと向かった―――。






結構子煩悩な『魔王』様。




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