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第11話 意外な人物と再会

前回のあらすじ

ソロモンが正式にダビデの弟子になった

 

「あの……ダビデさん。ちょっといいですか?」


 アビーが声をひそめ、カウンター越しに顔を寄せてくる。

 ソロモンには聞かせられない内容だと瞬時に判断し、僕は耳を寄せる。


「何?」

「先の件でダビデさんに会いたいと言ってる人がいるんですけど、どうしますか? 断ることも出来ますけど……」


 先の件と言うのは、人さらいの集団を壊滅させた件のことだろう。

 その件で、僕に会いたい人? ……全く見当が付かない。


 僕はチラリと横にいるソロモンに目を向ける。

 ソロモンを一人にしておけないしなぁ……。

 かと言って、ソロモンを連れていくのもなんとなく憚れる。


「ダビデさん。娘さんの面倒は私達が見てましょうか?」


 すると、そんな僕の様子を見かねたのか、カウンターに一番近い席に座っていた、女性冒険者だけで構成されたパーティーのリーダーがそう声を掛けてくる。


「いいの?」


 そう聞き返すと、リーダーの女性だけでなくパーティーメンバーも頷く。


「はい。私達は今日は休養しようと思っていたところなので」

「……それじゃあ、お願いしようかな」


 少し悩んだ末、僕は彼女達の厚意に甘えることにした。


「ソロモン。僕はちょっと用事があるから、僕が戻ってくるまであの冒険者のお姉さん達と一緒にいてくれる?」

「うん、分かった!」


 ソロモンは元気よく返事をして、トテテとそのパーティーの方へと向かう。

 僕もそちらに向かい、リーダーの女性にそっと耳打ちする。


「……これで好きな物でも食べて」

「……ありがとうございます」


 リーダーの女性にそっと人数分よりやや多めのお金を握らせると、ソロモンには聞こえないくらいの声音でお礼を言ってくる。

 その後アビーの方へと戻ると、彼女に案内されて僕に会いたいと言う人の下へと向かった―――。




 ◇◇◇◇◇




 アビーに連れて来られたのは、ギルドの地下だった。

 地下は捕らえた犯罪者を入れるための牢屋がずらりと並んでおり、その内の一つへと案内された。

 そしてそこにいたのは……。


「……バルトか?」

「はいっす」


 僕が名前を呼ぶと、鉄格子越しにバルトは軽く頷く。

 そして僕の横にいたアビーが説明を始める。


「ダビデさんが捕らえた人さらいの集団の中で生存していたのは、彼ただ一人だけなんですよ。彼は捕まった後も各地に点在していたアジトの情報を提供してくれたので、即刻処刑などにはせずにこうして囚われているのです。ちなみに各地のアジトの殲滅には、他の冒険者の方達が向かっています」

「ああ。だから今朝いつもより混雑してたのか……」


 そう呟き、僕は再びバルトの方を向く。


「それで……僕に何か用?」

「用というほどでもないんすけど……」

「そっか。それじゃあこれで」

「ああああ、待って! 待ってください!」


 僕が踵を返そうとすると、バルトが慌てた様子で僕を呼び止める。


「……何?」

「用があるのはホントなんすよ」

「それで? その用っていったい何?」

「はいっす。俺を……ダビデのアニキの舎弟にしてください!」

「…………………………うん?」


 聞き間違いかなぁ?

 今、舎弟って聞こえた気がするんだけど……。


「あ〜……ごめん。上手く聞き取れなかった。もう一度言ってくれる?」

「俺をダビデのアニキの舎弟にしてください!」


 聞き間違いなどではなかったようだ。

 でもしかし、元犯罪者を舎弟かぁ……。


 すると意外なところから援軍(?)が来た。


「あのぉ〜……ギルドからも、ダビデさんにこの人の身元を引き受けてもらいたいなぁ……なんて……」


 アビーが指先をくっつけたり離したりしながら、そう言ってくる。

 だけど視線だけは、僕から逸らされていた。


「……何で?」

「仮にこのまま釈放されたとしても、また今回のようなことを起こさないという保障がありませんから。いやまあ、聴取で友人に騙される形でやっていたっていうのはもう判明しているんですけどね? でも、ギルドとしても安心出来る材料が欲しいんですよ。その点、ダビデさんにならこちらも安心出来るんです。もし変なことを起こしても、ダビデさんなら抑えられるでしょう?」


 ギルドからの信頼が厚いのは良いことだけど、まさか厄介事を背負い込まされるとは思いもしなかった。

 引き受ける引き受けないは別として、確認出来ることはしておく。


「……ちなみに。もし僕が引き受けるとして、バルトの住居は?」

「ダビデさんの家に住まわせられたり……」

「出来ないね。ウチには年頃の娘がいるから。娘に手出しされたら困る」

「そうですか……。その場合は、ダビデさんの家の近所に住んでもらう形になりますかね……」

「それと、もし僕がバルトの身元を引き受けなかった場合は?」

「良くて、このまま一生牢屋生活ですかね」

「ああ、そう」


 その辺りは完全にバルトの自業自得だから、僕が介入する余地はない。

 このままバルトには牢屋で一生を過ごしてもらってもいいけど……。


「バルト。キミは今回のことちゃんと反省してる?」

「してます! ダチの口車に乗せられたことを、海よりも深く反省してるっす!」

「もう今回みたいなことはしないと誓える?」

「誓います!」


 僕の質問に答えるバルトの目は、本当に心の底から反省しているようだった。


「……分かった。バルトの身元を引き受けるよ」

「……っ!? あ……ありがとうございます、アニキ!」


 バルトは喜びを露にし、僕に向かって深々と頭を下げてくる。


 こうして、何故か僕に舎弟が出来ました―――。






バルトがまさかの再登場。




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