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素早い凡人、世界を統べる。  作者: 表面さくさく
第1章 リザルディア建国編
6/15

賢い少女、面接を受ける。


「おい姉ちゃん!そこにある最高報酬の3倍ってのは、金貨90枚だぞ!!用意できるわけねーだろ!」


部屋の中央で酒を飲んでいた男が罵声を飛ばした。

金貨90枚もあれば丸3年は良い生活が出来る。


「用意ならここにある。職員に確認させよう。」


ジャラリ


どこから出したのか、重そうな布袋をかかげる。


リオは小声で尋ねた。


「おい、そんな大金どこで手に入れたんだ?」


「ふふ、私は屋敷を生成出来るのだぞ。こんなコインなど朝飯前じゃ。」


「お、おぉ…本当に身も蓋もないな。」


おののくリオを無視して、エリーは冒険者達に向かって声を張り上げる。


「依頼するのは人探しだ!政治、法律、財務、税務、治水、農耕に関する専門家を片っ端からリストアップしてほしい!情報収集に自信がある者はいるか!」


それを聞いて9割が興味を失ったようだった。

冒険者への依頼は様々である。もちろん情報収集の依頼もない事はない。


だがほとんどは魔物の討伐や素材の回収だ。

情報を専門としている者は限られていた。



「あ、あの、情報収集なら、得意なんですけど。」


もじもじした12〜13歳くらいに見える美少女が、申し訳なさそうにしている。


「ふむ、一応面接はさせてもらおうか。お主は…」


「やめとけお姉ちゃん!そんなガキじゃ勤まんねぇよ!」


小汚いおっさんがエリーを遮った。


「人探しなら俺様に任せな!長年冒険者やってたからつてもあるぜ!ガキとは経験と人脈がちげえ!」


「一人称が俺様なのがキモくて嫌なのだが。」


「ひ、ひでぇなお姉ちゃん!」


「口も臭いし、なんか見た目がムカつく。」


「言い過ぎだろ!仕事にゃ関係ねぇ!国中のやつをリストアップしてやれるぜ!なんなら護衛もしてやってもいい!ぐひひ、俺はこう見えてB級冒険者だからな」


「うーん、お主はどうなのだ。自信はあるか?」


エリーは少女に尋ねる。


「あの、それはまだ、わからないですけど…」


「はぁっはっはっ!!わからねえだとよ!話にならねえな!」


「うーむ。」


エリーが嫌そうに首を傾げる。

リオは目線が合うよう膝をつき、穏やかな声で少女に声をかけた。


「情報収集が得意だと言ったね。リストアップは出来そうかい?」


「あの、できるけど…、お姉ちゃんは、それだと目的は達成できなくて…」



??



エリーが目を光らせた。


「少女よ。名は何という。」


「コーデリア。メイス・コーデリアですけど…」


「コーディよ。目的が達成できないとはどういう意味だ?」


エリーの凛とした眼差しがコーデリアを貫く。


「あの、ごめんなさい…。あの…」


「大丈夫だから話してごらん」


リオが微笑む。

コーデリアは意を決して話し始めた。


「あの、目的はリザルディアの建国に必要な人材探しだと思うんですけど…。」


「!?」


リオとエリーは目を丸くして、顔を見合わせた。


「なぜそう思うの?」


「あの… 各国に建国宣言が届いた直後に、

資金力があって、リザルディアにしか生えない草を靴につけた異常な魔力を持つ人が、あの内容の人材探しだったので…。」


リオの笑顔が引きつった。


なんだこの子!?建国宣言は今日の話だぞ!

てかリザルディアにしか生えないのかコレ。

しかもエリーの魔力偽装を見破ったのか!?



リオですら集中しなければ気付けないレベルの偽装を、平然と見破る少女。


つけていたかのような情報の早さ、見識の広さ。

どう考えても普通の少女ではない。



「す、すごいな。まぁ推測とはいえ大したもんだね」


「ただ、今ほぼ確信しました…。

リザルディアの話を知る人はいないので、無関係なら『なぜそう思う』じゃなくて、『何の話だ』とか言うはずで…すみません…。」


「うっ…。」


リオが絶句する。


エリーが興奮した笑みを浮かべ続きを促した。


「ふむ、それで?」


「あ、ごめんなさい…。依頼内容はジャンルが大き過ぎて。

だから多分何が必要かよく分かってないはずなんですけど…。

農耕ひとつ取っても品種、エリアによって専門家は変わるし、目的によって選ぶ品種も違って、そもそも協同組合を通せば必要がなくなるし。あと財務税務から見ればそれよりも、あの…あ…」


「いや、いいんだ、続けてくれないか?」


「あの、つまり、良い情報っていうのは希少な情報じゃなくて、適切な情報なんです…。

なので色々お伺いしないと、良い情報は出せなくて…。」



リオはエリーにうなづいてみせる。


「ふむ、よくわかった。コーディよ、お主に頼もう。」


「ほんと!?ありがとうお姉ちゃん!」

コーディは嬉しそうに目を輝かした。


「うむ、そのお姉ちゃんという響きも気に入った。これが萌えというものか。」


「おいおい!俺様だってお姉ちゃんと呼んでたろう!?」


「黙れ、殺すぞ。」


「そんなに!?」


小汚いおっさんは半泣きだ。


「俺たちの目的を詳しく話そう。力になってくれるかい?」


「はい!よろしくお願い致します!」


少女は天使のような笑顔を見せた。


「リオ!飲もう!こういう時は人間も酒を飲むのだろう?」


「人間について何で学んでるんだ」








一行は(おっさん以外)屋敷に戻り、酒盛りをしながらこれまでの経緯について共有した。


「ふっふっふー!可愛いのぉコーディ!」


「あ、ありがとうございます…。」


エリーはすっかり酔っ払っていた。


「女神なのに酒飲むんだな。」


「神々はみな酒好きじゃ!だから人間は酒を供えるのだろうが!」


「ちゃんとコーディの話聞いてたのか?」


「もちろんじゃ!要はあのトマス領の領主を口説けばいいのだろう!」




エリーが危惧していたのは、他国を支配した後の統治であった。得た国の平和を維持できなければ意味がないからだ。


この星と同等の魔力を扱えようと、無限の速さで無双しようと、あらゆる(まつりごと)に関する知識がない。


とはいえ1から学ぶのは無謀だ。

であれば、元より統治に長けた者を味方にするしかなかった。


逆に言えば、名君さえいれば人材をこちらで揃える必要もない。



情報屋というよりコンサルタントのようになったコーデリア。

彼女の知る中で大陸最高の統治スキルを持つ者は3人だ。




トマス領領主

エドワード・フレイル



マーナリフ王国 王室最高顧問

クレシェ・モルトン



そして、ルシエント王国現国王

ヒイロス・バルトロア



どれも味方にするのは不可能のように思える。

だが敢えて選ぶなら、最も可能性があるのはエドワードだった。


立場の大きさ。

国王バルトロアに反感を持っている事。

エリーと面識があり、実力を見せつけているので舐められない事。



リオが不思議そうに首を傾げた。


「バルトロア王は統治スキルが高いんだよな?なのにエドワードは何がイヤなんだ?」


「統治力があれば善王というわけではありませんからね。」


「ふむ、どういう奴なのだ?」


エリーもこれから攻め入る国の王に興味を持ったようだ。



「現国王は歴史上稀に見るほどの傑物です。

ですが…。」


少女はかすかに震えているように見えた。








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