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素早い凡人、世界を統べる。  作者: 表面さくさく
第1章 リザルディア建国編
1/15

その男、契約を早まる。

リザルディア迷宮

地下72階層 最奥部





世界最高の魔法を使いこなし、極限まで武を極めた男。


人類のおよそ頂きに立つ戦闘力を持ち、男はひとり、星の祭壇を前にする。




リザルディア迷宮の歴史上の最下到達記録は地下65階。200年前、勇者アレス一行が魔王討伐直前に訪れたものだ。下に降りるほど魔物は強力になり、知性を持つ。

並の冒険者で地下5階、帝国の調査団を持ってしても20階が限界である。


そこから先は人の領域ではない。


レベルがカンストし、伝説の勇者と同等以上のステータスを持つその男ですら地下60階以降は全ての戦闘を避けていた。


魔王すら尻込みする魔物の群れをすり抜け、男はついにたどり着く。


「これが星の祭壇・・・本当に神話の世界だな」


壁はなく、地面もない。

どうやって立っているかもわからない。

満天の星空の中に入り込んでしまったようだ。煌めく星々に囲まれて、青く光る祭壇がただ静かに、薄い光を発している。



男が求めたのは、

『インフィニティ・マナ』。


無限の魔力であった。



神話の始まり、星の祭壇。

創造神ギアスが世の理を生み出した場所とも、この世界の全ての魔力の本流とも言われている。

その祭壇を管理する女神と契約すれば、無尽蔵の魔力を手にするというのだ。


魔力が強大である事と、無限である事は全く別の意味を持つ。

明かりを灯す下級魔法も、強大な魔力を込めれば、山をも焼き尽くす上級魔法と化す。


その魔力が、無限である。


世界を何度焼き尽くしても余りある力を得るだろう。




男は自らのステータスを確認した。



リオ・クライマー

レベル99

職業:ドラゴンスレイヤー


HP:39,425/250,000

MP:56,027/327,000

腕力:87,236

魔力:114,392

素早さ:76,915

防御力:92,176


《保有スキル》

魔導の極み、武神、チャンピオン、龍殺し、魔王の城、斬鉄剣、賢者の知恵、悪食、ドラゴニックオーラ、天空の覇者、デスノート、火魔法特級、水魔法上級、土魔法上級、風魔法上級、光魔法中級、闇魔法中級、剣技特級、格闘上級、界王拳




想像を絶する戦いと、修練の果てに手にした人智を超えたステータス。それも無限の魔力を手にすれば霞んでしまうだろう。



リオが祭壇に手をかざすと、膨大な魔力が頭上に渦を巻いた。


「なんという、凄まじい・・・」


感じたことのない極大のエネルギーが、際限なく膨れ上がる。


「これは、ヤバいな・・・!」


絶望的な魔力量。

宮廷魔導師すら即死させるであろう空前絶後の魔力に意識が飛びそうになる。


「くっ!死、ぬっ・・・!うおぉぉお!!」


次の瞬間、今までの暴風が嘘のように、辺りが静まり返った。


見上げると、とても静かで、美しく、まるで星そのもののような存在感を放つ女が祭壇と同じ光を放ち浮かんでいた。


『小さき者よ、何を求める』


心に直接語られるような、不思議な声だった


「力をっ、無限の魔力を与えてくれ!」


『ムリじゃ』


「えぇっ!?」


即答?ここまで来たのに!?


「何故だ!ここは星の祭壇ではないのか?」


女神は雪の結晶を思わせる白い手を、ようこそといった素振りで横に開く。


『星の祭壇じゃ。世の理の父であり、魔力の母となる場所。』


「では、あなたと契約すればその魔力を使えるのでは!」


『いや、ムリ。世界のための魔力をお主にやるわけなかろう。』


「そ、そんな・・・死ぬ思いをして来たのに。」


『それはお主の都合だ。しかし、そうだな。条件次第では契約自体はしてやらん事もないぞ。魔力はやらんが。』


「条件?いいだろう!この際だ、何でもやってやるさ!」


『ほう、何でもか。よかろう。契約は成った』


女神は、女神たらしめる怖ろしく整った顔をニコリと綻ばせる。


「あ、でも条件て・・・」


『力を求めし者よ、力を捨てよ』


男は光に包まれて意識を失った。




――――――――――――――――――――――――



目覚めると、晴れ渡る青空の下、生い茂る草原の上だった。


隣には先程の美女。


「気が付いたか。」


「うっ、ここは?迷宮の入り口か。いや、入り口がなくなっている?」


「私が外に出たからな。しばらく迷宮はお休みだ。」


この女神は迷宮そのものも管理していたのか。いつの間に外に。

いや、それよりも!確か最後は契約が成ったと言って光に包まれて。

契約できたのか!


男は隣に凛と立つ女に問いかける。


「女神よ、契約は成ったと言ったな?」


「あぁ、約束は守ってもらうぞ。」


ついに!

『インフィニティ・マナ』を手に入れたのか!

いや、しかし、この感じは?


男は己の体に起きた違和感に戦慄を覚える。


魔力を・・・感じない・・・?


無限どころではない。

ほとんど無だ。

自らの体から魔力を感じとることが出来ない。


目を閉じて意識を集中する。

隣の美少女からは神々しいほど高密度の力を感じる。遠くに佇む魔物の魔力も、迷宮に充てられた草木からも魔力は感じる。


だが、自分からは感じない。



慌ててステータスを確認する。


そして、息を呑んだ。

全身に鳥肌が立ち、血の気が引く。





リオ・クライマー

レベル1

職業:ニート


HP:32/32

MP:4/4

腕力:8

魔力:3

素早さ:♾

防御力:10


保有スキル:神把握、抵抗無視




これは素早さ以外の全てを捨てた男の、栄光の物語である。

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