現実化編 chapter1 始まりの目覚め
作者のネーミングセンスの無さが目立ちます。
視界が暗い、騒々しい。アクシアは唐突にその様な感覚に襲われた。
ここが何処なのか、自分は何をしているのか。それすらもわからないまま視界が急にクリアに広がって行く。
「ここは・・・」
見覚えがある風景がそこにはあった。
日本サーバー最大のプレイヤータウンにして、始まりの街「エド」のシンボル「天上主郭」と呼ばれた「ハッチョウボリ城」である。
「何でだよ!?」
思いがけない風景に思わず大声を上げる。ハッチョウボリ城を見て突っ込みを入れたのはチュートリアル終了後以来の事である。
このゲームのサービス開始当初日本のユーザーはこのネーミングを見て「運営ー!日本を勘違いしてるんじゃねぇー!」等と抗議の声を上げたが、アップデートの度に追加されていくダンジョンやアイテム等が日本の伝承を由来とした物が多く。
またユーザーから「え!?そんなものまで出すの!?」と言った感じで好感度を上げていった為運営への不満はいつしか鎮静化していき、ハッチョウボリ城はいつしかプレイヤー達にとって「突っ込み街」の愛称で親しまれる存在となっていった。
そしてそれはハッチョウボリ城の城主「ヨッシー」も同じだった。冒険を始める際に言われる「この世界を自由に見て回って欲しい、そして願わくば自分の物語を私達に見せて欲しい」この言葉を受けてプレイヤー達は「スピン・ストーリー・ワールド」の世界に旅立って行くのである。
アクシアは一人でそんな事を思い出し、笑みをこぼして居た。
「ちょっと、彼奴ヤバくないか?」
「ままーあのお兄ちゃん(?)何で一人で笑ってるの?」
「冒険者さん達は変わった方々がおおいのぅー」
「ってかいつまで突っ立ってるんだ?」
等と言うオーディエンス(NPC)の方々の声も気にしないでアクシアはそそくさとその場を離れた。
(しかし、何でエドに来てるんだ?俺は確かクロカでポータル登録して落ちてるからログインするならクロカになるはずなのに)
少しずつだが今に至る迄の状況を思い出していた。
所属していたクラン内のいざこざに始まり、当時の強力な生産武器のレシピを手に入れた事による無茶な生産依頼。
更に勝手に周囲が自分の事を攻略組のトップクラスだと思い込み、すり寄ってくる有象無象のプレイヤー達やそれに起因する身勝手な嫉妬の様なもの。
その全てに嫌気がさし、お馴染みやプレイ開始時からの仲間達とだけ遊んでいた。
そのアクシアの行動すらも「依怙贔屓」と言われ「何でこんな連中に煩わし思いをされなければいけねぇーんだよ」と怒りが爆発し一部の親しいプレイヤーを除き事情を伝えずSSWの世界を去った。
まぁ実際にはきっちりアプデを行いプレイヤーと関わらずにちょこちょことプレイはしていたが。
そして結婚後に奥さんが「一緒に遊びましょう。私もその世界を旅してみたいな」と言われたことで念願のマイホーム(ゲームにて)を無理して購入。
ヤマトサーバーでも風光明媚なスポットの一つ、アウトウイング地方のコダカ森にある湖畔を見下ろせる小高い丘に建築し、内装も北欧風の暖炉や石窯のコンロ等も揃えた。更に自分専用の鍛冶場も作り、完成したら親友達の装備品を作って一緒に冒険するつもりだった。
持てる財産の殆どを信頼できるプレイヤーの商人を通じてゴールドに替え、ようやく完成の目処がたったと連絡がきた。
(そうだ、ご隠居から連絡を受けてインしたらここだったんだ)
その瞬間に自分の移動時間が全て無駄に終わった事に気付きアクシアは打ちひしがれた。
「あの人急に落ち込んでどうしたの?」
「ぱぱーあのお兄さん、女の人にフラれたときのお兄ちゃんと同じ格好ー」
「まったく若いんだから、女なって星の数程いるだろうに。どれ婆が女の手解きを教えてやろうかね・・・」
「っていうーかー往来の邪魔なんですけどー」
等の女性オーディエンスの声に更に追い打ちを掛けられアクシアは逃げるようにその場を離れた。
リンリンと鈴の音が頭の中に直接聞こえる。
同時に眼前に半透明なパネルに発信者が表示された。
手慣れた様子で応答の画面をタップし通話状態にする。
『スミダ堀、一本木の側、橋のたもとで』
一方的に伝えられ通話が切れる。
アクシアは通話相手の事を考えると溜め息しか出なかったが、呼び出された場所へ向かうことにした。
当分の間は戦闘シーンには入れないかと思います。
次回幼馴染み達が登場します。軽快な会話にご期待下さい。