壱/闇の中で君の手を取る①
脳髄を殴り付けられたような衝撃に襲われる。圧倒的な暴力の前に、少年は為す術もなく地に崩れ落ちた。
身体中のいたる所に穴が開いているのが見える。それは自分の体ながら、ひどく醜い光景だった。ああ、死ぬのだ、と頭のどこかで思う。声帯が苦悶の叫びを上げているのを、煩いな、と他人事のように考えた。
走馬灯というものか。大した事もなかったこの人生が頭の中にこだまする。田舎の村に生まれて、学校に通って、友達と一緒に馬鹿騒ぎをして、親の仕事を継いで魔獣狩りになった。そしてヘマをしてここで魔獣に殺される。特筆すべき事もない、ただの平凡な人生。
心残りがあるとすれば、と考える。心残りなんて沢山ある。とうとう結婚出来なかった事、友人が誘ってくれた夕食会に行けなかった事。読みかけの本があった事。親から継いだこの仕事を完遂できなかった事。明日の朝食は美味しいパンの予定だったのに。
言葉が溢れる。
もうすこし生きたかった。だって、たったの十七年じゃあ余りにも勿体ない。これからもっと時間があるのだと、そう思っていたのに。
ぐしゃり、と嫌な音を立て、少年の頭は潰された。
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