表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

87/103

整地します!

「っ、はいっ!」


 サミューちゃんが私の言葉を聞いて、体をそっと離す。

 私はサミューちゃんに親指を立ててみせると、そのまま水の消えた貯水池の底へと降りて行った。


「ちゃくちよし」


 ゆっくりふわふわと降りると、水のなくなった貯水池は、水の枯れてしまった【涼雨の湖】と同じ感じだ。

 違うのは、山側の底から水が沸き出ていることだろうか。ここに水脈があったのだろう。

 水脈はまだ枯れておらず、水量も十分だ。


「せいち、する!」


 私はよし! と気合を入れ、アイテムボックスを開いた。

 取り出すものは――


「つち」


 土!


「つち、つち、つち!」


 私が、そこ! と指差した場所に四角く切り取られた土がボコッと置かれる。私は横へ移動しながら、まずは貯水池の底、横一列に土を並べていった。

 ゲームでおなじみのあれである。1ブロックずつ置いていけるやつだ。ホーム設定している土地に家を建てたり、畑を作ったりいろいろできる要素があった。

 現実で1ブロック単位として考えると、こうして突然、四角い土が出てきて、すこし不思議だが、端からしっかりと埋めていけば大丈夫だろう。

 そして、そうして作業をしていると声がかかり――


「なんじゃこれは……! 幼いエルフよ、今、なにをしておるのじゃ!?」

「つち、うめてる」

「それは見ればわかる! そうじゃないぞ! どうして、なにもない空間からものを取り出せているんじゃ!? しかもその土は、『まるで地面から切り出したまま』ではないか!」

「うん。そのままだよ」


 ムートちゃんが底まで降りてきて、私が出した土を触り、ふぉぉぉおお! と驚いている。

 続いて降りてきたサミューちゃんも土のブロックを触り、ごくり、と喉を鳴らした。


「レニ様……これは、シュルテムの屋敷に行く際、地下道を作ったことと関係がありますか?」

「うん。このつち、つるはしでほったあと」

「……あのとき、おかしいと思ったのです。地下への道を掘っていれば、確実に残土が出るはず。なのにそれが一切出なかった」

「れに、もってた」

「っそう、そうなのですね。……さすがレニ様です。私の考えの遥か高みをあっという間に飛んでいくのですね」


 シュルテムの屋敷の地下に行くために、地下道を作ったのは3歳のときだったなぁ。懐かしい!

 今、私が出した土はゲームで貯めていたものだから、あのときの土ではないかもしれないが、まあ、基本は一緒だ。1ブロックずつ削った土はそのままアイテムボックスへ仕舞われる。そして、こうやっていつでも出せる。


「この説明で納得できるのか!? 土魔法で周りの土を崩し、埋めているわけじゃないんじゃぞ! こんな……まるでなにもなかったかのように元に戻せるなぞ……」

「はい。普通ならば、掘られた池を埋めるには、どこかから持ってきた土で埋めるしかありません。しかし、一度掘ってしまった土で同じような土地とするのは不可能です。どれだけ踏み固めても、そこはやわらかくなってしまい、雨で土が流れ出してしまったり、水が浸透し、そこだけ他より地面が下がってしまい、結局、池に戻ってしまう可能性が高い」

「じゃが、幼いエルフが出した土はどうじゃ……。この固さ、この質。すでに周りの土と馴染み、始めからこういう形に彫り込まれたようではないか……」

「これならば……掘られてしまったこの土地は元通りになりますね」


 二人が戦慄いたあと、私を見る。

 だから、私は、自信たっぷりに頷いた。


「れに、できるっていった」


 そう! 貯水池を最初からなかったかのように。そして、水脈を枯らしたり、場所を変えることなく、そのまま湖に戻すのだ。


「ここは、つちやめる」


 私が指差した場所。そこは水が沸き出ている場所だ。ここに土を置いてしまうと、水脈の流れを塞いでしまう形になってしまう。なので、ここは……。


「まるいし」


 アイテムボックスを選んで指差せば、そこにポコンと丸石を敷き詰めたブロックが出現した。


「は!? 土だけじゃないのか!?」

「そざい、いっぱいある」

「な、なるほど……。土だと水は流れない。けれど、丸石であれば隙間があるためそこを水が通るというわけですね」

「うん。もっときれいにできればいいんだけど……」


 本来なら、土のちょっとした割れ目とか、大岩と大岩の隙間などだった可能性もある。しかし、最初と同じという再現は難しい。

 ので、ここは湖までの水脈が復活すればいいと考えて、丸石で道を作ることにする。


「のこり、ぜんぶやる」


 サミューちゃんとムートちゃんに声をかけて、どんどん作業を続けていく。

 土をポコポコ出し、丸石を湖への水脈へ繋げて……。ときどき失敗するので、そんなときは【つるはし(特上)】を装備して、土を壊した。

 水脈を繋げたあとは、地面の高さまで、四角に切り取られた土を置いていけば――


「できた!」


 ――貯水池はきれいさっぱりなくなりました!


 ゲームだと1マスずつ置いていく単純作業になるのだが、こうして実際にやってみると割と体力も必要だった。

 土のブロックを一つ置いたら隣、一つ置いたら隣と移動し、さらに段が上がるときは、よいしょと登らないといけないしね。

 達成感に額の汗を拭う。


「なんじゃその、規格外の能力は……」

「さすがレニ様です……! すばらしい力です……!」


 元の地面と私が置いた土との境目を触ったあと、二人はそれぞれの表情をした。

 ムートちゃんは呆れかえったという顔。サミューちゃんは胸の前で両手を組み、私を崇拝するような感じ。

 私はそれに「うん」と頷いた。


「これで、なーが、たたかえるね」


 ――さあ、【水蛇】と対決です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】プロローグの3行目で、すぐ死ぬ王女に転生してしまいました

【2/22】MFコミックス様よりコミックス4巻発売
【5/25】MFブックス様より小説3巻発売

ほのぼの異世界転生デイズコミックス ほのぼの異世界転生デイズ
― 新着の感想 ―
[一言] それなんてマイクラ?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ