宝探しです
「たからさがし……!」
したい、すごくしたい!
わくわくと【世界礎の黒竜】を見つめると、【世界礎の黒竜】は胸を張って頷いた。
「うむうむ。意欲があってよい。では説明するぞ。よく聞くのじゃ」
「うん」
「エルフの女王の術はあくまでも応急処置。魔力を使いすぎたり、無理をしたりすると、すぐにまた魔力路が太くなり、今日のようになる。さらに、おぬしの持っている魔力は強力じゃ。時間経過が長くなれば今度は中心が持たなくなるじゃろう」
「うん」
「そこでじゃ、余の秘宝を探すのじゃ」
「ふああぁ……!」
『【世界礎の黒竜】の秘宝』。なんて……!なんて魅力的な響き……!
思わず声を漏らせば、【世界礎の黒竜】は満足そうにイヒヒッと笑った。
「余は世界を支える宝玉を七つ創った。そして、さらに三つの秘宝を作ったのじゃ」
「うんうん!」
「三つの秘宝は、魔力に対して干渉するようになっておる。……本来ならば世界の危機に対して魔力の増幅をし、敵を殲滅することや、守護のために大がかりな結界を張るというようなことを想定して作ったのじゃが」
【世界礎の黒竜】はやれやれと肩をすくめる。
「まさか余の秘宝を、たった一人の幼いエルフを生かすために使うなど……。だが、おぬしが消えれば世界が終わるのじゃからしかたがない」
そして、ビシッ! と私を指差した。
「おぬしは三つの秘宝を用い、魔力を制御するのじゃ」
「まりょくのせいぎょ」
「そうじゃ。三つの秘宝を集め、それにより巨大すぎる魔力を抑える。さらに、【魔力操作】を磨き、魔力を使用する感覚を研ぎ澄ますのじゃ」
「うん!」
この胸のわくわくを……なんと言えばいいのだろう。
――私の命がかかっている。
――世界の終わりがかかっている。
でも、それよりもなによりも……。
――私の知らないアイテム!
大好きな世界で、まだ知らないことを体験できる。
それがうれしくて……。
「さみゅーちゃん!」
胸からあふれるわくわくをサミューちゃんに伝えたくて、ベッドのそばにいてくれるサミューちゃんを見上げる。
きっと、サミューちゃんならば、そんな私を優しい瞳で見つめてくれると思ったから。
でも……。
「……さみゅーちゃん?」
サミューちゃんは私を見ていなかった。
ただ空を見るサミューちゃんの目は、どこも映していなくて……。
私がエルフの森を燃やす炎を消すときまでは、普段のサミューちゃんだった。
でも、私がふたたび【魔力暴走】を起こして、目が覚めた今はどうだろう……?
いつものサミューちゃんじゃない。
自信をなくしてしまっているような……そういう感じがする。私と出会ったばかりのサミューちゃん。守護者の契約をする前のサミューちゃんに戻ってしまったかのよう。
様子をうかがうようにサミューちゃんを見上げる。それでも、目は合わなくて……。
【世界礎の黒竜】はそんな私たちの様子を気にすることなく、話を続けた。
「余の秘宝じゃから、余には場所が分かる。ゆえにおぬしを案内しよう」
「あんない?」
サミューちゃんのことは気になるが、まずは【世界礎の黒竜】の話を聞く。
どうやら、秘宝の場所はわかっているようだ。
「一つ目の秘宝。場所は【涼雨の湖】じゃ」
「ふああぁあ!」
【涼雨の湖】……!
それは私のお気に入りのマップの一つ。CGで表現された抜群にきれいな水面。あの水面は、実際に見ると、どんな色をしているんだろう……。
大好きなゲームの世界に転生したことに気づいたときに見たいと思っていた場所。それを本当に見に行くことができる……!
また胸にわくわくがあふれてくる。
――見たい。
――知りたい。
――感じたい。
このあふれる気持ちを私には止められない。
「秘宝はな、だれにでも手に入れられるわけではない。好き勝手に使われては困るんじゃ。ので、余は眷属に守らせることにした」
「けんぞく」
「うむ。【涼雨の湖】に棲む、【水蛇】が秘宝を守っておる」
「なーが!」
「余の眷属といっても、余の言うことを聞くわけではない。余は眠っておったし、この世界に住むものたちには好きに生きてもらいたいのじゃ」
【世界礎の黒竜】はイヒヒッと笑った。
「【水蛇】は強いぞ? 幼いエルフよ。それでもおぬしは行くか?」
そう言うと、試すように、紫色の瞳が私を射抜く。
私はその瞳をまっすぐに見返した。
「こたえはひとつ」
――決まっているよね?
「れににおまかせあれ!」
【涼雨の湖】に棲む【水蛇】が守る秘宝。
手に入れてみせましょう!






